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第4話 人?助け1回目 後編

 行方不明だった妖精は見つかったけど、なんかやばそうなのも一緒に来た。見た目熊みたいだけど、体毛が紫だし、なんか頭にツノみたいなの生えてるし…。


「あれは魔獣ですね」


 アリシアさんがそう告げた。ま、魔獣…?強そう…。

 命からがら逃げてきた妖精はギリギリ捕まらずに私たちの元へ逃げ切れた。


「タッパー!見つかって良かったんじゃー!」

「ふぇーーん!怖かったぁぁー!」


 トッピルさんと逃げてきた妖精――タッパーさんは涙を流して抱き合う。しかし、その背後には魔獣が迫っていた。

 アリシアさんと私はすぐにトッピルさんたちを庇うように前に出る。魔獣とやらは口から牙剥き出しで威嚇している。おっかねぇ…。


「魔獣の仲間が近くにいるかもしれません。トッピルさんたちは離れないでください」


 アリシアさんがトッピルさんたちに指示すると、魔獣に目を向けて杖を構える。…よし、私もやったるぞ…!魔法で戦うとか魔法学校の実技試験以来だ。とりあえず、常套手段だけど動物は火を怖がるから…。

 私は杖を魔獣に向けて、杖の先から炎を放った。熊も炎は怖いよね…?

 ――しかし、魔獣は避けるどころか、炎を正面から浴びたまま突進してきたのだ。


「えぇぇ!?」

「危ない!」


 炎の中を猛進してくる魔獣にたじろいでいる中、アリシアさんが氷魔法を放った。次の瞬間、魔獣の全身が氷漬けになり、ゴンッと地面に転がった。ふぅ〜…危なかった…。


「魔獣は普通の動物と異なり、魔法の耐性を持っています。なので、威力の弱い魔法だと効かない場合があるんです」

「そうだったんですね…。いい経験になりました。ありがとうございます」


 私はペコリと頭を下げる。それにしても、今日だけで妖精に魔獣と、初めて見るものが2つも…。っていうか、魔獣なんておっかない生き物がいるとか…、迂闊に町の外出れないじゃん。こわ。


「魔獣は非常に危険ですが、個体数も非常に少なく、人前に現れることは滅多にありません。なので、普段はそこまで問題視していないのですが…、最近はその数が増えているようで、我々魔法省も対策を考えているところです」


 なんだか心穏やかじゃない言葉が…。まさか、魔女総出で魔獣の討伐するとか…?いや…そんな現実的じゃないことしないか。

 そうだ…、氷漬けになったからちょっと観察してみるか。大丈夫だよね…?突然ひび割れたりしないよね…?

 私は恐る恐る氷の塊に近付き、マジマジと観察する。毒毒しい紫色の体毛に頭部には2本のツノ。そして、人も簡単に引きちぎれそうな鋭い牙が…。こえ〜…。こんなのが妖精追っかけるとかおかしいでしょ。


「ところで、これってこの後どうする感じですか?このまま放置したら氷が溶けて復活しますよね」


 私は氷の塊を指差してアリシアさんに尋ねる。今は氷漬けにされてるだけで死んでないだろうし、復活したらまた妖精を狙うかもしれない。


「もちろん始末します」


 アリシアさんはそう告げて、杖を氷の塊に向ける。し、始末…!魔獣とはいえ、死ぬところは直視できないな…。

 すると、アリシアさんの杖の先から眩い光が放たれ、氷の塊ごと魔獣を包み込んだ。眩しすぎて目を開けてられないので、どうなっているのかわからないけど、少しして光が弱まると、氷の塊は蒸発し、魔獣の姿も無くなっていた。


「おぉ!光魔法!使うこと自体難しくて、使いこなせる人が全然いないやつじゃないですか!」


 私は目を輝かせて興奮気味に食いつく。光魔法は人を選ぶ魔法と言われていて、相性が合わないと、他がどんなに優れていても光魔法だけは使えないなんてこともザラである。私も光魔法だけは未だに苦手で、自ら進んで使おうとは思わない。

 なので光魔法は滅多に見る機会がなく、見れたらテンション上がるのだ。


「ありがとうございます。なんだか嬉しいですね」


 アリシアさんはニコリと笑みを浮かべる。うん、やっぱり美しいなこの人。

 すると、トッピルさんたちが近付いてきた。


「おぬしら助かったぞ!ありがとうなのじゃ!」

「魔女さんたちありがとー!」


 トッピルさんたちは嬉しそうだ。行方不明だったタッパーさんも無事見つかり、魔獣も倒せたし。うん、良かった良かった。


「それじゃ、行きましょうか」


 私とアリシアさんは箒に跨って空へと飛び上がろうとするが、トッピルさんが何か手に持って私のそばに近付いてきた。


「待つのじゃ。お礼にこれをあげるのじゃ」


 トッピルさんは助けたお礼に、赤みがかった光沢のある丸い石をくれた。…おぉ。何これ綺麗。


「きれいですね。これは一体…」

「それは赤真珠じゃ!わしの宝物じゃがあげるんじゃ!」


 赤真珠……真珠の一種なのかな?なんかパワーストーンみたい。


「宝物なのにいただいちゃっていいんですか?」

「いいのじゃ!命の恩人じゃからな!」

「ありがとうございます」


 私は赤真珠をバッグにしまい、トッピルさんたちに手を振って空に飛びあがった。

 いや~~…、良いことした後って気持ちいいなぁ~。

 私がそんなことを思ってぽけーっとしていると、アリシアさんがそばに寄ってきた。


「悪くなかったでしょう?魔女の役目も」

「え…!?あ、いや…!ま、まぁ…1回くらいなら…?」


 不意を突かれた問いかけに、私はわかりやすい動揺を見せてしまった…。アリシアさんは私の反応を見てクスクスと笑っている。いかんいかん…、このままだとアリシアさんの思う壺…。しぶとさを見せないと。



 飛ぶことさらに3時間。視界の先にようやくミロルの街が。…長かった。もうこの国広すぎ。なんで同じ地方の都市がこんなに遠いの…。

 考えれば考えるほど先行きに不安を感じでしまう。人助けの前に旅疲れで倒れないようにしないと…。

 にしても、ミロルの街は田舎者の私にとっては都会である。街の規模も段違いだし、建物の密集度も出歩いている人の数も全然違う。せっかく来たんだし、街の中をぶらつきたいな…。

 私達はそのまま街の中へと入っていく。都会だけあって、箒で飛んでいる人も結構な数いる。さすが都会。

 私はアリシアさんについて行く感じで魔法省支部の建物へと向かう。見えてきたのは宮殿のような立派な建物。すご…。さすが魔法省…。


「あの建物が魔法省の支部です。元々は貴族の宮殿だったのを再利用しているんです」


 ほぇ~~…。すごいな貴族…。私の家何個分だろう…?

 私は壮観な建物に圧倒されつつ、入口に降り立った。警備の人が立っているけど、アリシアさんは顔パス。…さすがです。

 建物の中に入り、私は応接室へと案内された。うわぁ…革製のソファだ。すげー。


「人を呼んできますね。少し待っていてください」


 アリシアさんがそう告げて、部屋を出ていこうとすると、そこに1人の男性が姿を見せた。


「あ、アリシアさんおかえりなさい」

「……え?」


 私はその顔を見た途端、ぽかんとした表情になってしまった。男性の方も私に気付いて、露骨に顔をしかめた。


「はっ…!?アリシアさんが連れてきたのって…シエル!?」


 男性の驚く声が部屋に響き渡る。

 ――そう。私とこの男性は知り合いなのだ。


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