第26話 巡回(ピクニック)へ 中編
というわけで、私達三人は仲良く?ピクニックしに箒で飛んでおります。これは仕事…。これは仕事…と、私は呪文を唱えるように頭の中で繰り返す。
「なんか珍しく気難しい顔してるな」
「何?能天気って言いたいわけ?」
私はリヒトに睨みを利かせる。コイツが言いたいことは大体予想がつく。…だって単純だもんコイツ。ふふ…単純バカ。
私は不敵な笑みを浮かべて対抗してやる。こういう対抗がコイツには一番効くのだ。
「あそこで少し休憩しませんか?」
私達のいがみ合いをよそに、アリシアさんがそう告げて前方を指差した。その先には森林の中にたたずむ池があった。池といえば…この前の魔獣調査の紫色の池が思い浮かぶけど、見た感じここの池はとても綺麗だ。
私達は池のほとりに降り立って、アリシアさんの私物である花柄のピクニックシートを敷いて座り込む。
ふあ〜〜、足を伸ばすと気持ちいいなぁ〜…。……あれ?仕事だと頭に言い聞かせていたはずでは…?
「はい、サンドウィッチ」
「ありがとうございます」
アリシアさんが私とリヒトそれぞれにサンドウィッチを渡してくれる。私は早速パクリと頬張る。…うん!美味しい!
「ありがとうございます。…私もお菓子持って来たのでどうぞ」
リヒトがそう言って、リュックから包みを取り出す。包みを開けると茶色い焼菓子が入っていた。
「わあ!レープクーヘンじゃない!私大好きなの!」
アリシアさんが嬉しそうな顔を浮かべている。……むむむ!?リヒトがレープクーヘンを!?
私は意外そうにリヒトを見る。―――と、リヒトがフッと勝ち誇ったような笑みを浮かべやがったのだ。
こ、このやろ〜〜!お菓子でアリシアさんを釣りやがってぇ〜!なんと生意気な〜!
「シエルもほら」
「…!」
リヒトがレープクーヘンの入った包みを私に差し出す。うぐ…!ここで素直に貰ったら…!負けを…認めてしまうことに…!
私が受け取るのを躊躇っていると、リヒトが明らかにわざとらしく不思議そうな顔を浮かべやがった。
「どうした?いらないのか?」
こんのキザ野郎〜〜!ちっとも変わってないじゃん!はぁ……まったく…。
私は小さくため息をつきつつ、仕方なく大人の振る舞いを見せながら、レープクーヘンを手に取って口に入れる。……おいしい。
サクサクの食感が気持ちよくて、ハチミツとレモンの風味が口いっぱいに広がる。そして、すぐに私はリヒトに手を差し出す。
「おかわり」
「はいよ」
わかっているかのようにリヒトも包みを差し出す。私はもう餌付けされた猫のようにパクリパクリとレープクーヘンを食べる。うん、病みつきだわ〜。




