魔法陣
はじめましてとあるひです。
暇なのでなにか、と思い書いてみた所存です。
お手柔らかによろしくお願いしますです。
間位孝登は大変困っていた。
その原因は両手に収まるくらいの小さな本だ。
それがどうにも気になって仕方がないのに全く文字が読めないのだ。
本の中には米粒よりも小さな字。
スマートフォンの写真機能で拡大して見てみるが――
「なんだこりゃ、なんも読めない」
どうやらこの国の文字ではないみたいだ。
しかしスマートフォンの文字認識では翻訳が出てこない。
「図書館か」
孝登の住んでるこの町は都会に比べれば小さな町だが図書館は大きい。
そこなら何か収穫があるはずだ。
図書館の不愛想な受付の人に軽く会釈をして語学のブースへと向かう。
それにしてもどこの国の言葉なのか予想すらつかない。
スマートフォンでもわからないのに自分にわかるわけがないが。
とりあえず目についた外国語辞典みたいなものを手に取り席についた。
そこから写真と辞典やいろいろな語学本とを交互に見比べていたが写真に書いてある文字らしきものは見つからなかった。
もう外は暗くなり始めている。
母に怒られる前に早く帰らなければならない。
壁の中央にある大きな時計を見ると門限まであと30分しかなかった。
「収穫なしか、、」
早歩きしながらやはり自分には何も力がないのか、と少し空虚感に襲われる。
何をしてもうまくいかない。できる兄とは違って自分では何も成し遂げられない。
兄は町一番の進学校に行きサッカー部では主将をしていている。
全国大会にも行ったことあるんだ、とこの間自慢気に言っていた。
それなのに自分は何だ。なぜこんなにも出来損ないなのだ。
昨日返ってきた国語の小テストでは30点。体育の授業でやったソフトボールでは一球も打てない、取れないで石につまずき盛大に転んだ。
クラス中に笑われたことを思い出し目頭がじんわりと熱くなっていくのを感じた。
休みの日はいい。強制的に同じ部屋に人が集められることなどない。
一人で静かに過ごせる。暑いのは嫌だが椅子を思いきり蹴られたり、髪の毛を引っ張られたり、お弁当をトイレの中に投げ込まれたりされなくて済む。
この本を見つけた時、拾わなくてはいけない、読まなくてはいけないと直感でそう思い本を握りしめていた。
このうんざりした日常に少しだけ面白そうなことが増えた。
自分だけの秘密の本。
そう思ったのも束の間、何も進捗はない。5時間も図書館にこもったのに。
家に着きただいまも言わずそそくさと自分の部屋に入った。
ポケットから例の本を出しページをぺらぺらと捲る。
やはり知らない文字が羅列しているだけでなにも情報がない。
「んん?」
最後のページにあるものを見つけた。
「魔法陣だ」
最後のページの魔法陣だけひときわ大きく描かれている。
『魔法学校生の寄り道』にもたくさんの魔法陣が描かれていたはず。
マイナーな漫画だが大好きな漫画だ。
もしかしたらそこに出てくる魔法陣と同じかもしれない。
本棚からこの間買ったばかりの新刊を手に取り小さな本と同じような魔法陣が描いてあるページを探した。
「これだっ」
両方の魔法陣を見比べる。
一番外枠の円以外は全く同じだ。
漫画の中では魔法学校からの帰り道に異世界に寄り道するときに魔法陣が使われている。
もしもこの小さな本に描かれている魔法陣が本物だとしたら、もうこの世界にいる必要はなくなる。
両親からは兄と比べられ、学校ではいじめられ、自信を無くしてしまった自分でも新しい世界にいけば関係なくなるのではないか。
この漫画では異世界に行くと姿が変わり、使える魔法も変わる。
もしこれが本当なら。
異世界なんてあるわけないってわかってる。
でもなぜかこの魔法陣を見ていると異世界に行けそうな気がしてきた。
未来は明るい、そんな言葉をかけられているような温かい気持ちになった。
ひとりごとが多いですね。




