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プロローグ
わが心
誰もしらずや
ひび割れて
枯れし花にも
なお劣りけり
(私のことを誰も見てくれない悲しみを表す和歌)
凛とした声が、夕暮れの教室に静かに響いた。一人たたづむ少女の一筋の涙が頬をなぞった。
「私のことなんて、知ろうともしないくせに。」
手に持っていた、紙に目を落とす。
『第△回和歌コンクール 優勝』
そう書かれている賞状を裏返すと、そこには殴り書きでこう書かれていた。
「審査員に媚びうるな。」
「顔がよくてよかったな。」
心無い言葉が少女の視界をぼやけさせる。
少女のすがっていた心の支えは、音もなく崩れ落ちた。
小さな唇をかみしめて価値のなくなったそれをぐしゃぐしゃに丸める。
制服のスカートのポケットに押し込むと、無造作に鞄をつかみ、逃げるように教室に背を向けた。