5 初授業
零に力がバレてから1週間がたった。
今日はオリエンテーションが終わり、今日から授業が始まる。
こっちの魔法技術の発展具合をよく知らないからようやく知るチャンスがやってきた。
今から楽しみで仕方ない。
今日は白玖も興味があるからと姿を消して魔法関係の授業だけ見に来るらしい。
精霊なのに今更魔法の知識を学ぶ必要があるのか聞いたら「そっちこそ意味ある?」って返された。
まあ、前の学校を次席で卒業してるから確かに意味はない。ちなみに首席は王太子殿下だ。
それでも世界が違えば魔法技術も違うだろう。
だからこそ授業は受けたいのだ。もしかしたら新しい知識を得るかもしれない。
前世で大賢者やってるぐらいには魔法・魔術バカである。
そう思っていたが…
「これをこうすることで魔法がはじめて成り立つので…」
(なんか思ってたのと違う…)
向こうでは学校入学前に行う基礎中の基礎だった内容。
魔術師が「知らない」は許されない。
そんな内容だから暇なのだ。
白玖も早々にどうでもよくなったようで気付いたらどっか行っていた。
圧倒的に向こうのほうが魔術師が多かった。
それに加えてこっちでは魔法を使えるのはほんの一握り。
使える人も研究する人も少ないのだ。
仕方ないのは分かっているが期待していただけに落胆が大きい。
授業が終わって悶々としていると美桜が話しかけてきた。
「綾ちゃん?次外だよー」
「あ、本当?分かった」
彼女は白石美桜。
同じ白ノ瀬の分家でウサギの使役獣を持つクラスメイトで友人だ。
すごい周りに花が舞っているようなほわほわとした雰囲気を持つ子である。
(次の魔法実技はどうだろう…)
そう思いながら着替えに向かった。
「今日は初回なので魔力操作の練習をしましょう」
(知ってた……)
予想はしてたけどやっぱりこうなるのか…。
でも座学はともかく、実技は周りに合わせないと悪目立ちしてしまう。
周りの様子を見つつ、魔力操作をしていく。
「白川さん、筋がいいですね」
(当たり前だろ……)
元大賢者なめんなって言ってやりたいところだけど我慢する。
それにこの先生は体内を巡っている魔力を視る事が出来るようだから、注意しないと本来の力がバレれてしまう。
学校も気を抜いたら他の人に力のことがバレてしまう。
ただでさえ零にバレたばかりだから気をつけないといけない。
とはいってもこの学校に私の力を感知できる人は零以外いないと思う。
魔力感知をしても零の次に力が強いのは姉の柚葉だ。
柚葉は家で接触してもバレなかったから問題無いはず。
「それでは今日の授業はここまでです。次回は実際に魔法を使うので各自魔力操作の練習を怠らずに。それでは号令して解散しましょう。」
「綾ちゃん次回の授業楽しみだね〜。」
「そうね」
「このあとは部活体験あるからはやく行こ!」
「分かった、はやく着替えよ」
HRも終わり、各自部活体験に向かう。
私は部活に入る気は無いので帰り支度をして門に向かう。
そしたら見たくない姿がいた。
「げっ」
そう、黒羽である。
脅されている以上逃げたくても逃げることはできない。
諦めてついていくと案の定零がいた。
「何の用?」
「もちろん模擬戦だが?」
「やだ、帰る」
「じゃあこちらにも考えが…」
「やればいいんでしょ、やれば!」
「最初からそうすればいいのに…」
腹は括っているがそれでも嫌なものは嫌だ。
「それじゃあさっさとやりましょう?」
「ああ、それじゃあやるか」
秘密の模擬戦、第一回目スタートである。