4 入学
ようやくヒーロー登場です
あれから一月以上たち、今日はこれから入学式だ。体育館で校長の話を聞く。学校での集会に校長の長い話はセットのようだ。
向こうでも魔術師の養成学校でも集会のたびに長々と校長が話していたのを思い出した。ここの校長は何分話してるかなと考えていると白玖が念話をしてきた。
『どうした?』
『今日は僕がいなくても平気だよね?』
『特に問題はないはずよ』
『じゃあ少し他のとこ見てくるねー。何かあったら呼んでー』
『わかったわ』
そう返事をしたら白玖の気配が遠ざかっていった。そうこうしているうちに校長の話が終わった。所要時間約15分である。
(どの世界でも校長の話は長いのね…)
そう思い教室に向かう。クラスはS、A、B、Cの4クラスがある中で私はCクラスの真ん中ぐらいだ。担任の教師の話も終わり校舎を出る。校門を出て少しすると人気が無くなったからか鈴葉が話しかけてきた。
「主様を馬鹿にしてるやつ料理していい?」
「ああいうのはほっとけばいいのよ。ムキになるだけ無駄よ」
そう話してると目の前を鴉が通過し、近くの壁の上に止まった。
(ッッ…!)
普通の鴉かと思いきやかなりの量の魔力を内包していた。明らかにただ者じゃない。かかわらないほうがいいと思い、素通りしようとする。
「ついてきて」
「……は?」
おそらくこの鴉は誰かの使役獣なのだろう。よく見ると使役獣特有の紋が額にあった。それでも使役獣の中でも言葉を話せるのはほんの一握り。相当な実力者の使役獣であることは確実だ。面倒事に巻き込まれる気しかしない。
『よし、逃げよう』
『めんどい雰囲気しか無いけど念の為行っといたほうがいいよー』
『……』
『あ、主様?』
何も言わずに逃げようとするとキンッと結界を張った音がした。
「…え?」
「黒羽が念話寄越してくるから何かと思ったら…そういうことか」
(この人がこの使役獣の主…?私に匹敵する魔力量…油断しては駄目ね)
「さて…そこのお前、名前は?」
「名前を聞くなら自身から名乗るのが筋でしょうに…まあいいや、私は白川綾よ。あなたは?」
「俺は白ノ瀬零、お前の家の本家の人間って言えばわかるか?」
「へぇ…」
(まさかの本家…どおりで強い魔力を持っているわけだ…)
「それで本家の人間が一体私に何の用ですか?」
「風の精霊」
「ッッ…!」
私は思わず反射で表情を変えてしまった。
「やはりその反応は正解か」
「なんで知って…」
誰かに話したわけでもないし、鈴葉や白玖が話すはずもない。彼は絶対に知っているはずのない情報を持っているのだ。そう私が思考してるとこう言ってきた。
「黒羽、俺の使役獣に見覚えは無いか?」
「無いはずですが…」
そしたらここにいないはずの白玖の声が聞こえてきた。
「僕見たことあるよー」
「は、白玖!?」
「ほら主さんが僕を久しぶりに呼んだときにいたよーぎりぎり魔力感知で反応しない距離にね。害は無いからほっといたんだけど」
「それは報告してほしかった…」
「だって聞かれてないし」
(そうだった、白玖はこういう子だ…)
向こうでも重要なことを私が聞かない限り全く報告しないのだ。まあ、使役獣のフリをしてるけど本当は精霊だからしょうがないことだけど。それでもサラッと重要なことを言うのはやめて欲しい。
「でもなんでそのとき私の近くにあなたの使役獣がいたのですか」
「その日はたまたまお前が外に出てきたとこを見ててな。こっそり出てきた感じがしたから観察してたら高難易度の魔法を連続で使うところをみたのだ。それで黒羽に調べさせた」
「え?で、でもあのとき魔力感知に反応はなかったはず…」
「一人でいるときには魔力で立場を勘付かれないように魔力感知に反応しないようにする魔道具を使っていたからな」
「そんなものがあるのですか…それで私に何のようですか」
「お前の魔力は悔しいが俺より強いだろう。相手の魔力量をみるのは得意とは言えないが俺より上なのはわかる。だから俺の魔法訓練のために模擬戦をしてほしい。」
「なぜ私に頼むのですか。それは私じゃなくてもできるかと思いますが…」
「これは契約だ。入学試験で力を抑えていたあたりこの力は隠してるのだろう。俺がお前の力のことを隠す変わりに模擬戦をしてほしい。」
「それ私に拒否権ないやつ…」
「契約成立でいいか?」
「ええ、不本意だけど…まあ、これからよろしく」
「ああ、よろしくな。綾」
(名前で呼ぶ必要ある…?)
「お前も零って呼べ」
「はあ…わかった、零」
****
零から解放されたあと…
(はあ…最悪…よりによってバレたらまずいタイプにバレた…)
私はそう思いながらバレてしまったものはしょうがないと思い諦めて開き直ることにした。
「よし、今度こそ帰ろう、鈴葉!」
まだ学校は始まったばっかだし、きっとなんとかなるとそう思いながら。
しばらくは毎週日曜12時投稿を目標に頑張ります