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1 転生

「んん…ここは…」


私は目が覚めると見知らぬ部屋にいた。

自分の部屋でも救護室でもない。

先程まで戦場で魔法師団の団長として指示していたはずだった。

敵である魔物の攻撃から部下を庇ったところまでは覚えている。

左腕を持っていかれたところまでは覚えているがその後の記憶がない。

だが、腕を持っていかれたはずなのに痛くないどころがなくなったはずの腕がある。

さらに謎なのが若干手が小さい気がする。

それに視界に映る全てがよくわからない。

髪は薄茶から黒に、部屋にある家具もユニヴェイル王国よりも東にある国のものだった。

東方の国とは国交はないため輸入されたものでもない。

何がなんだかわからないが、部屋を見渡すと鏡があったからとりあえず自分の姿を確認してみる。


「…これは誰?」


鏡には黒髪黒目の見知らぬ少女が写っていた。

それと同時におそらくこの身体の記憶と思われる情報が流れ込んできた。

いや、思い出したという方が正しいだろうか。


「あれ…これ私…もしかして死んだ…?」


今思い出したことだが意識が薄れていく中マンティコアの出現を知らせる伝令が来ていたことを思い出した。

流石に魔物の中でも危険度A⁺という強い魔物を相手にするのに手負いの私を庇いながら闘うことは難しい。

ヒールが使える人もあの場には私を除いて二人しかいなかったはず。

腕一本持っていかれて傷口から血が際限なく流れていく状態で放置されて失血死したという感じだろう。

ユニヴェイル王国に過去、前世の記憶を持つ転生者が現れた記録がある。

私はどうやら転生してしまったということはわかった。

感覚的に魔力はそのままのようだった。

ならばと思い、魔法を使う。


「鈴葉、おいで」


言葉に魔力を乗せて呼び出すと相手がどこにいても聞こえるため、相手が嫌がらない限り呼び出しをはじめとした指示をすることができる。

十秒もたたないうちに鈴葉が飛んできた。


「魔力共有:鈴葉」


「マスターだー!ありがと~!それにしても随分遅かったね。待ちくたびれたよ」


「その話し方、もしかしてゼヘラ…よね?」


「正解!いやぁ覚えてなかったらどうしようかと思ったよ」


「ゼヘラ以外その話し方見たことないわよ。それに滅多に懐かない召喚獣がすっごい懐いていたんだもの、記憶にも残るわよ」


「そういえばそうだったっけ?まあいいや。これからもよろしくね、マスター」


「ええ、これからもよろしくねゼヘラ…いや、鈴葉」


「もちろん!マスターの為なら別世界でも地獄にでもついていきます!」


「それでゼヘラ、どうやって世界渡ったの?私の感覚的にこの世界、前に暮らしていた世界とは別の世界よね?」


「マスターと契約してる精霊たちに頼んだら乗り気で引き受けてくれたよー」


「あぁ白玖たちね、なら納得だわ」


「ちなみに少ししたらこっちに来ると思うよ」


「わかったわ、けど流石に肉体ごとは無理よね?」


「肉体はそっちの世界で作るから素材集めといてって言ってたよー」


「素材かぁ…足りるかな」


「足りなかったらこっちで魔物から集めればいいじゃん」


「まずその強さの魔物を探すのがめんどくさい」


「魔法一つで探せるくせに?」


「そういう問題じゃないのよ」


「マスターは相変わらずめんどくさがりだねーまあ変わらないようで安心したけど」


あとで話すが魔物は割と行くのがめんどくさい場所にいるし、強い個体は色々面倒くさいのだ。


「とりあえず記憶の整理したいからその間好きにしてな」


「はーい、じゃあ家の中見てくるねー」


「ちゃんと姿は消しなさいよ」


「もちろん、じゃあいってきまーす」


そう言って再び窓から出ていく。


「ふぅ…それじゃあ記憶の整理しますか」



***



私の前世の名前はフレシア・ユーストリア。

ユニヴェイル王国の子爵家の出で、国立魔法学校を次席で卒業後、魔法師団に入り、なんやかんやで27歳で団長になった。

その3年後、魔物のスタンピードによって命を落とした。

そして今は白川綾。

白ノ瀬の分家の一つである白川家に生まれた。

現在15歳でこれから高校受験だ。

高校といっても私が前世で通っていた魔法学校のような場所に入学することが決まっている。

だから受験という名の実力確認の試験だ。

白ノ瀬家とその分家は風属性の魔法が得意で他属性は持っていたり、持っていなかったりするが、風属性は必ず持っている。

家族構成は両親と少し年の離れた兄、そして双子の姉だ。

一卵性の双子のはずだが姉である柚葉よりも私は背が高い。

一卵性の双子は向こうにもいたがここまで身長に差はなかったはずだ。

今では柚葉は髪を染めていて、メイクもしているためぱっと見では双子とわからない。

兄はもう成人していて魔法師として働いているため家にはあまりいない。

それにあっても無口で何を考えているかは全くわからない。

両親は典型的な毒親だ。

よく、私達にあたっている。

手を挙げられるようなことはないが会うたびに罵詈雑言を浴びせられる。

兄が家にあまりいないのも親に会いたくないからなのかもしれない。

こんな家庭だからか、家はいつも空気が悪い。

だから私は距離取るために今は離れで暮らしている。

使用人がいたり離れがあったりする程度には財産はあるが、親はよっぽどのことがない限り会おうとはしない。

というか今では会うのはこっちから願い下げだ。

そして私が転生した世界は地球という星で暮らしているらしい。

空気中の魔力も無効と比べると低いため、魔法を使える人はおそらくあまりいない。

というか部屋にある本を見た感じ、魔法の存在そのものが国家機密レベルのものらしい。

空気中の魔力は多くの人が魔法を使えば使うほど濃くなっていくから魔力を持っていても魔法として扱える人はほんの一部みたいだ。


そうまとめていっていると、誰かが扉をノックする音が聞こえた。


「はーい、どうぞー」


「失礼いたします」


「花恵さん、どうしたの?」


彼女は家の使用人の一人で花恵さんだ。

ちなみに苗字は知らない。


「綾様、旦那様がお呼びです。母屋に来てください」


「えー、めんどくさ…わかったわ、すぐ行く」


私がそう返事すると、彼女は部屋を出ていった。


「まったく…あのクソ親父が何のようなのかしら…」


とりあえず行くと返事をしてしまった以上、行かないわけには行かない。

面倒に思いながら外に出る。

すると、廊下に柚葉がいた。


「あら、綾どうかしたの?」


「あいつに呼ばれたからよ」


「ああ…頑張って…」


「ええ」


柚葉は少し怪訝そうな表情を見せたがすぐに戻った。


「まあ、行ってくるわ」


「いってらっしゃい」


そういって柚葉を抜き、父の部屋に向かう。

柚葉の表情の変化には気づかないまま。



***



コンコン。


扉をノックする。


「入れ」


そう一言返事が返ってくる。


「失礼しまーす」


私が部屋に入るとこっちがなにか言う間もなくはなしはじめる。


「柚葉が本家のお二人の婚約者候補に選ばれた。決して邪魔はするな。話は以上だ。戻れ」


「…はい」


ふつふつと湧き上がる苛立ちを抑えつつ、離れへと戻る。

部屋に防音結界を張って鈴葉に愚痴る。




「あのクソ親父どう調理してやろうかしら…」




「マ、マスター!?」




「鈴葉も聞いてたでしょ。姿はなかったけど近くに気配を感じたからわかるわ」




「あ、やっぱりバレてた?」


「姿消していても分かる人には分かるわよ。この家には分かりそうな人は居ないけど」


姿を消している存在を認知するには相手以上の魔力量がないと不可能だ。

鈴葉は私と魔力共有をしているため、私以上の魔力量がないと気づくことは不可能だ。

そしてそんな存在はそうそういない。


「それじゃあ私は出かけるから好きにして」


「じゃあ一緒に行くー」


「わかったわ」


(ちょう):人避け」


人避けの結界を部屋に張る。

この結界を解除するまでこの部屋の存在を認識させない。

この部屋の存在の意識させない結界だ。


「それじゃあ行きましょう」


「はーい」


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