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1 転生

「ん…」


目を開けるとそこは見慣れぬ天井だった。


(ここ…どこ…?)


ついさっきまで戦争で戦っていたはずだった。

敵が放った魔法から部下をを庇ったところまでは覚えている。


(でも救護室って感じでもないし…)


起き上がると見慣れない髪色が目に入った。


(黒髪…?あれ?私って髪色薄茶だよね…)


救護室にしては広く、そして見慣れない家具があった。

でも、近くに鏡があったのでのぞいてみる。


「だ、誰…?」


そこに写っていたのは見知らぬ少女だった。

黒髪に黒い瞳。

外観で考えるなら10代半ばぐらいの年齢の姿だった。そしてその姿を見ると同時に流れてくる今までの記憶。


「私…死んだの…?」


私、フレシア・ユーストリアは前世で国に所属する魔法師を束ねる大賢者だった。

国王陛下から出征命令が出て、戦争に参加していた。そこで部下を庇って死んだようだった。

そして今は一井綾、15歳。

高校受験を控えている普通の学生だ。

しかし、一つだけ普通でない箇所がある。代々国に大結界を張る結界の魔術師の家の分家であることだ。

ただ、綾は力がほとんど無い落ちこぼれだった。


「鈴葉。おいで」


そう呼ぶとツバメの使役獣である鈴葉が飛んでくる。

落ちこぼれではあったが、記憶を取り戻すと同時に力の強さも前世と同じぐらいの強さになった。

鈴葉に力を少しずつ注いで強くしていく。すると


「やっと記憶取り戻したんですね!主様!」


「え…ゼヘラ?」


「そうです!よくわかりましたね!」


ゼヘラは前世でよく呼び出していた召喚獣だ。

なぜか滅多に懐かないと言われている召喚獣なのにやたらを懐いていたから印象に残っていた。

どうやらこの世界についてきてしまったようだった。


「よくついてこれたわね…」 


「主様の為なら世界も渡りますよ!それにしても長かったなぁ…魂を見て主様だというのはすぐ分かったんですが記憶がなさそうだったので使役獣として見守ってたんですよ」


「ついてきたならこれからも頼むわね、ゼヘラ…いや、鈴葉」


「了解です!主様」


「あ、でも人前では喋らないでね」


「なんでですか?」


「この世界使役獣は滅多に喋れる個体がいないの主である人の持つ力に左右されるから落ちこぼれって言われている私が喋れる個体を連れていることがおかしいのよ」


「てことは主様、力について何も言わないんですか?」


「ええ、墓まで持っていくつもりでいるわ。私と鈴葉だけの秘密ね」


「そういうことなら了解です!」


「じゃあとりあえず今まで通りにしてて。何かあれば呼ぶから。てか敬語やめて」


「嫌ですよなんでやめなきゃなんですか!」


「前は全然敬語使ってなかったじゃない。違和感しか無いわ。そしてこれは命令よ。」


「はーい、そう言われちゃあそうするしか無いじゃん」

「とりあえずしばらくは記憶の整理をしてるから好きにしてて」


「はーい」


***


「ふぅ…こんなもんかな…」


名前は白川綾、15歳。

双子の姉である柚葉と兄である菖、あとは両親が血縁関係にある。

しかし、両親は落ちこぼれである私を疎んでいてたびたび嫌味を言ってくる。

そして、野心が強く力が強い柚葉に重圧をかけている。

兄である菖は力が強い方なのにも関わらず、なぜか両親は私ほどではないが疎んでいる。

そのせいか菖はほとんど家にいない。

家には使用人がいる為放置されてもたいして問題はないが、使用人がしてくれるのは食事に関することだけ。

使用人にも1人親切にしてくれる人がいるが、その人はあまり来ることができない。

だから学校がない日は基本1人だ。


そして2月に魔術師の養成学校の受験という名の力量確認がある。

鈴葉に調べてもらったら特殊な水晶に力を注いでその力をもとにクラス分けをするらしい。

ほとんどの人は少しでも良い成績で入学したいから手加減する人はいないようだけど、落ちこぼれと言われている人が急に強い力を持っていることが分かっても絶対にめんどくさいことになる。


(力は隠したほうがいいわね…)


せっかく新たな生を手に入れたのだ。できることなら目立ちたくない。それに…


(今度は魔術と関係ないことがしたい!)


前世では下位貴族の令嬢として生まれた。

そして7歳との時に行う魔力検査で王族に匹敵する魔力量が確認された。

とんとん拍子で国に仕えることを強要されてやりたくもないことをやらされていたのだ。


(今世では何かに縛られずに生きたい。

好きなように生きたい。)


そう思案していた時にだった。


コンコン。


「綾様ー?いらっしゃいますかー」


「花恵さん?」


「旦那さまがお呼びです。母屋に来てください。」


「わかった、すぐ行くね」


そう返事をすると足音が遠ざかっていった。


「あのクソ親父が一体何のようがあるのかね…」


とりあえず呼ばれたからには行くことにした。

面倒に思いながら外に出る。

廊下を歩いていると自分とそっくりな顔の人がいた。柚葉だった。


「あら、綾。なぜあなたがここにいるの?」


「…呼ばれたからだけど」


「あら、そうなの。珍しいわね」


関わるのも面倒に思い横を通り過ぎる。

そうして父が待ってる部屋につく。


コンコン。


「入れ。」


許可を得て部屋に入るとあいさつするのも面倒なのか本題を話し始めた。


「文坂学園で当主候補である零様と優羽様の伴侶が選ばれる。お前が選ばれることは万が一でもないだろうが邪魔をするな。話は以上だ。下がれ。」


「…はい」


ふつふつと湧き上がる苛立ちを抑えつつ、離れへと戻る。

部屋に防音結界を張って鈴葉に愚痴る。


「あのクソ親父どう調理してやろうかしら…」


「あ、主様!?」


「あなたも聞いてたでしょ。姿はなかったけど近くに気配を感じたからわかるよ」


「あ、やっぱりバレてました?」


「前から関わってるんだし使役獣の気配を読めないクソ親父の近くで少しふざけたでしょ。少し物が動いたから」


「あはは…バレてないよね?」


「あの感じは気付いても気の所為だと思うだろうし、やりすぎなきゃいいよ」


「んでこのまま出掛ける?」


「行くつもりだけど」


「それじゃあ一応結界張っておくよ」


「じゃあお願い」


そういって私は着替えるべく隣の部屋に向かった。

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