12 体育祭 1
いよいよ、今日は体育祭。
練習のときのこともあり少し不安だが、何とかするしかない。
一応の対策として学校の敷地内を白玖に上空から監視してもらい、魔物が入り込んでないか確認してもらっている。
さすがにずっとは無理らしいがこまめに確認してくれるとのこと。
不安は残るが私にできることは少ない。
その中で私ができることをするだけだ。
(とりあえず魔物が出ませんように…そして平和に終わりますように…)
そうして開会式が終わり、種目が始まった。
最初は玉入れ、早速私が出る種目だ。
ぶっちゃけこんなことをするくらいなら校内の警戒をしていたいが、一度は種目にでないといけない。
実に面倒くさいが、面倒くさくてもやるべきことはやらなくては。
ピッーー
ホイッスルの音と同時に競技が始まる。
「ウォーターボール」
(ウィンドコントロール!)
練習の時と同じように、空中に水鏡を作り、風を操作して玉を次々に入れていく。
今回は手加減する気はなかった。
決してあいつに言われたからではない。
そうやって玉を入れていくうちに制限時間になり、競技が終了した。
そして入った玉の数を数えていく。
これを3回やって、その合計が多かった色の勝利になる。
そうして3回戦が終わり結果発表の時間になった。
「結果発表ー!」
(……え?)
なんかすごいテンションの人がいるんだけど。
「第1位は…!ダダダダダダダ、ダン!…青組です!」
(無理ついていけないこのテンション…)
私と同じ気持ちになった人は他にもいるだろう…いるよね?
と高すぎるテンションについていけなさそうになったがどうやら1位だったらしい。
玉入れが終わったから次の種目である綱引きが終わるまで約30分ある。
だからその時間は校内の警戒に当たるつもりだ。
勘だが相手は確実に今日何かを仕掛けてくる。
それが何かはわからないけど警戒を怠ったら取り返しのつかない何かが起こる、そんな予感が。
(常にサーチを使うの地味に疲れる…)
だが、これが一番確実な方法だと思うから諦める。
あくまで予想だが、この前のジャイアントラットは戦争で言うところの斥候兵、いわば様子見だ。
ジャイアントラットが全滅したことは相手にも伝わっているはず。
それにこの流れでいくと次も魔物が来ると思うが何が来るかは予想がつかない。
下手したら私にとっての因縁の相手とも言えるマンティコアレベルが出てくるかもしれない。
まずこの世界の魔物のレベルを知らないからなんとも言えないが。
(…白玖、いるわよね)
姿を消した白玖が肩に乗った感覚がした。
「マスター、今のところは問題ないよ」
てっきり念話で来ると思っていたら普通に声が聞こえた。
仕方なくこっちから念話を使う。
『なんで念話じゃないのよ』
『んー?気分』
『風を使って私の耳にだけ声を届けるほうが難しいと思うけど……って風の上位精霊にとってはこの程度造作もないか』
『そーゆーこと』
精霊とは本来、圧倒的上位存在で下位精霊でさえ人間を瞬殺できるほどの強さがある。
上位精霊である白玖は本来、簡単に一国を滅ぼせる程の圧倒的な存在。
そんな存在と私は複数契約してるのだ。
前世では散々奇異や好奇、畏怖の目で見られたから次は平穏に、必要以上に力を見せずに目立たずに生きたい。
これが私が力を隠している理由。
と、そうこうしているうちに綱引きが終わったようだった。
結果は2位。
やったこと無いから正しいとは限らないが、綱引きで綱を引く力は誰か一人が強いよりも全員が少しずつ強いほうがいいだろう。
強化度合いとバランスが重要な競技だから1位になれないのは当然だろう。
2位を取れただけでもいい方だろう。
そして次の種目は大玉転がし。
S・Aクラスの模擬戦出場者以外は全員出場の種目だ。
種目名的に大玉を地面に転がしていくものかと思ったが、ここは風属性に特化した人が多い魔法師の養成学校。
空中で大玉を動かしつつ、設置された障害物を避けるというものだった。
空中にあるバーなどの障害物に大玉を当てないように風を操り、ゴールまで運ぶ。
単純ながらも動く障害もあるから一筋縄ではいかないようになっている。
ちなみに障害物にあたるとかなり吹っ飛ぶ。
練習の時に必ずスタートの方にに軽く10mくらいは吹っ飛んでいるのを見た。
そのときは大玉のスピードがあまりなかったからその程度だったが、もっとスピードがあればさらに吹っ飛んだだろう。
下手したらスタートまで吹っ飛ぶくらいの威力はある。
だが、一応コース外には飛んでいかないように結界は張ってあるから問題はない。
ピッーー
と、気づいたら競技が始まった。
皆が次々に詠唱を始める。
基本的に全員参加である大玉転がしは最高学年の3年生が指示を出して1、2年生が動く。
それだと3年がS・Aクラスの青組は不利なのでは?と思うが、何人かは指示を出しながら器用に魔法を使っていた。
私も3年の指示に従いつつ、とある存在を探す。
(…見つけた)
私が探していた存在、それは妨害役だ。
動く障害物は誰か…先生が動かしているはず。
だから私はその妨害を妨害する。
基本的に魔法は発動中の魔法でも、設置された魔法でも、その魔法を発動させたり設置したりした人よりも魔力量があれば制御を奪うことができる。
そして、敵チーム以外の魔法制御の奪取は禁止されていない。
つまり、先生から制御権を奪って障害物を止めるのもありなのだ。
今までの練習でそれをする人がいなかったのはその難易度からだろう。
他者の魔法制御権を奪うにはその魔法を深く理解し、魔力の波長を合わせる必要がある。
前半はともかく、後半はできる人が少ないのだ。
魔力を見られても問題ないように念のため前世で知った古代魔法で魔力を変質させる。
誰が奪ったのか確認が入りそうだがそれは零に丸投げだ。
(風と緑は無詠唱出来るからバレるリスクは無いのいいわ〜)
白玖と契約をし直したことで風と緑は無詠唱で発動が可能になった。
精霊との契約は2つある。
『魂の契約』と『名の契約』があり、それぞれ効果が違う。
『魂の契約』は精霊は生涯に一人としかできない契約で、人間側も恩恵が大きいが、『名の契約』は精霊側も何人とでも契約できるが、人間側の恩恵は魂と比べたら少ない。
その両方の契約を結ぶことで初めて無詠唱魔法が可能になる。
精霊契約はリスクもあるが、前世ではそれを知らない内に白玖と契約してあとから怒られたのを思い出した。
本来の実力を隠してる今はとても重宝している。
魔法の制御権を取られたのがわかったのか先生たちが慌てているけどしらを切って制御に集中する。
(…よし、大丈夫そうね)
青組の全ての障害物の動きを止める。
なんか周りがざわざわしてきたが。
そうして青組は大玉転がしで無事、1位を取ることができた。
(まあ当然ね)
『なんかマスターが調子乗ってるー』
『…調子(乗ってなんかいないわよ、白玖』
『…』
…そんなに調子に乗ってるように見えたのだろうか。
退場して、リレーの準備が始まる。
午前中に出る競技は終わったしいつ来ても大丈夫なように備えようとサーチと魔力感知平行して使う。
しばらく確認できてなかったから念入りに確認していく。
(………!?)
起こらないでほしかったことが起こってしまった。
校内に3カ所、生物でないものにしては大きな魔力反応。
(最っ悪!)
この勘だけは当たってほしくなかった。
不審に思われないようにお手洗いに行くふりをしつつ、一番近い反応場所に向かう。
サーチでは大体の場所しかわからないため、その場にいかないと細かいことはわからないのだ。
先程の古代魔法で自分の魔力を変質させて魔法を発動する。
「ビジュアリゼーション」
魔力を可視化したあとに立て続けに魔法を発動する。
「インビシブル」
他者から認識できないようにして風を操作して大きく跳躍する。
体操服だから気持ち的にも問題はなかった。
魔力濃度がおかしいのは3カ所、校舎裏と中庭、そして校庭付近の倉庫だ。
とりあえず一番近い倉庫に向かう。
するとそこには零と何処かで見た覚えがある女子生徒がいた。
「…零!?」
「…は?」




