11 模擬戦 2
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!
「それで練習って何してるんだ」
「それを話す前に…まず、零は魔法をいくつ同時に展開できる?」
「ものによるが…だいたい5個で簡単なやつなら10個が限界だな」
「じゃあまずは同時魔法展開数を最低でも倍にするわよ」
「…は?」
俺は思わず素で反応してしまった。
本来は同時魔法展開数は3個行けば優秀なレベルである。
それを俺はものによるがだいたい5個から10個展開できる。
もうその時点でかなり異次元なのだがこいつはその上を行く。
あのときも授業中にふと外を見たら魔力で空に模様ができていて思わず素で声を出しそうになった。
だから一体どんな生活をしていたらこんな事が出来るのか不思議でしょうがなかった。
調べさせたがここまで力が強くなった理由が分からない。
力を隠しているのは親の前では落ちこぼれということにしているからだろう。
兄や妹が知っているかは分からなかったが綾の反応的には話してなさそうではある。
(俺は本当に幸運だったな…)
あのときたまたまあの場所にいたから出会う事ができた。
だからこうして出会えた運命の相手を逃さないようにしなければ。
最初は出会い方があれだったから警戒心マックスだったが最近では少しだが素らしきものが出てくるようになった。
恐らく少しは気を許しているのだろう。
だからか俺はよく野良猫を一から手懐けている感覚になる。
それに綾は心の壁が明らかに他の人を比べても分厚い。
親のことを考えれば仕方がないのだろうがそれでも分厚いのだ。
しかもその壁に気づかせないようにしている。
俺の前でだってあたかも気を許しているように見せている。
何があってこうなったのか理由はわからないが、おそらく苦労していたのだろう。
***
さっきから零はずっとなにか考えているのか上の空だった。
零には前回の模擬戦のときに私のだいたいの同時魔法展開数をかなり適当に言ったからもしかしたらそこに気づかれたのかもしれない。
「そ、それじゃあ私が結界を張るからその結界を壊して。ちなみに結界は上級以上の魔法を最低でも10個同時に当てないと割れないようにするから」
「いったい俺に何をさせたいんだ…」
「強くなりたいんでしょ?そのために私に模擬戦の契約を持ちかけたんじゃないの?」
「…ああ、そうだな」
「まずはどの魔法でもいいから零が出せる最大威力の魔法を撃ってみて」
「最大でいいんだな」
「ええ、結界は張っておくから加減しないくていいわ」
「なら遠慮なく行くぞ」
「全てを焼き尽くす青き炎よ、あらゆるものを焼き尽くす災いとなりて敵を焼き払え、インフェルノ!」
青火属性の超級魔法。
攻撃魔法にしては詠唱が長いがその分火力は絶大だ。
だが、それでも結界にはヒビすら入らない。
(その年でインフェルノを使えるなんて…前世でも見たことがないわね)
「というか青火も持ってたのね」
「ああ、一応使える基本属性の覚醒属性は全部使えるぞ」
「ということは緑も持ってる?」
「もちろん、というか本家の人間で自分の家の属性の覚醒属性を持ってないのはほとんどいないと思うぞ」
「そうなのね…それじゃあ今のは火力重視だから今度は何でもいいから攻撃魔法を可能な限り多く展開して」
「なら…エアバレット」
零がそう詠唱するとエアバレットが8個発動した。
そしてその全てが結界にあたって消滅する。
「魔力制御は問題なし…ならあとは練習あるのみよ」
「そうは言うがどうするんだ」
「え、後は戦いの中で得るのみよ」
「は?」
「というわけで戦うわよ」
「は?」
「私の魔法を相殺しなさい!」
私はそう言って魔法を発動する。
「エアカッター×10!」
「おい!話を聞け!」
零はそういいつつも、同じようにエアカッターを展開する。
しかし急に始まって焦ってしまったのだろう、発動した数は6つ。
攻撃を相殺しきることは出来ない。
「っ…ウィンドウォール!」
「ほらほら、まだいけるでしょ」
「簡単に言うなよ…エアカッター!」
基本的に同時魔法展開は集中力や精神力が必要になる。
数をこなしてできるようにするのが一般的のようだが、戦闘中にそれを発動できなければ意味がないと私は思う。
だから私は模擬戦で同時魔法展開を訓練するようにしている。
実際の戦闘よりは緊張感がないが、ただ数こなすことは大違いだと思う。
今回の発動数は9個、目標数には届いてないが極限状態になれば達成できるだろう。
(今日一日でどこまで行けるかしらね)
内心そう思いつつ、同じように9個エアカッターを発動し、相殺する。
***
そうやってしばらく互いにエアカッターで打ち合っていた。
結果的には同時魔法展開数は12個にまで増えた。
零も魔力量が多いから魔力切れすることはなかったけど、さすがにひたすら同じ魔法で打ち合ってなおかつ精密な制御が必要だから疲れたのだろう。
そこまで行った時にはさすがに膝から崩れ落ちた。
「大丈夫?」
「…大丈夫だ」
「ならいいんだけど、さすがに続きは無理よね」
「少し休憩させてくれ、そしたら続きをやる」
「あら、そう?わかったわ」
(でも休憩するにも座る場所ないわね)
「アースクリエイト」
地面の土を操り椅子のかたちにする。さらに、
「コーティング」
服が汚れないように、氷で土の椅子をコーティングする。
なんか視線が突き刺さる気がするけどまあ、気のせいだろう。
そうして作った椅子に座る。
「零も座りなよ」
「…ああ」
(なんかすごい視線を感じるけど気にしたら負けね)
よく鈴葉や白玖たち精霊に魔法の無駄遣いだって言われるけど、魔力が有り余っているんだからいいと思う。
精霊契約のおかげで魔力は有り余っていて使わなきゃもったいないと思うから使っているのになぜかよく呆れた目で見られるのだ。
ついでに収納に食料が入っているか確認しようとしたがこっちの世界でも空間魔法なんてもの存在しないだろうし、特殊スキル持ちであることは話してない。
ユニヴェイル王国ではなかったが隣国では空間収納に目をつけられて家族を人質に軍属を義務付けられている人もいた。
まあ、ある意味私の背後に精霊たちがいたからそういうことができなかった可能性もあるが。
そのくらい空間収納は便利なものだ。
それを今零に知られても大丈夫なのだろうか。
こうやって関わる程度には信用しているが、こうやって秘密を盾に脅されている今、新たな情報を与えるのは嫌だった。
そう思い、食料を出すのはやめる。
そう考えていると零が立ち上がった。
「休憩は終わり?」
「ああ、続きを頼む」
「それじゃあ少し難易度を上げるわよ、いろんな攻撃をするからそれにあった対応をして」
私はそう言っていくつか魔法を発動させる。
「ファイアアロー、ウォーターカッター」
炎の矢と水の刃、その2つをギリギリ接触しない距離で発動させる。
同じ魔法で対応する場合、魔法の精密操作技術が必要になる。
外側にずれると相殺しきれない。
かと言って内側すぎると魔法同士が接触して互いに干渉してしまう。
果たしてそれをどう対応するのか。
「張:魔法結界」
そして結界術と並行して魔法を展開する。
「ファイアアロー、ウォーターカッター」
並行して同じ魔法を展開する。
結界はおそらく保険だろう。
というかお互い当然のように短縮詠唱をしている気がする。
まあ、今更ではあるが。
そうやって互いに魔法を使って相殺していると気づいたら日が傾いていた。
「さすがにそろそろ終わりにしない?」
「…だな」
零も日の傾き具合を見て何か思ったのか少しだけ眉間にシワが寄った。
「それじゃあ私は帰るわね」
「わかった、それじゃあ体育祭頑張れよ」
「…ええ」
ぶっちゃけ嫌だが脅されているからしょうがない。
そしてやるなら徹底的にバレないようにやってやる。
けれど、不安もある。
この前にいたジャイアントラットこと魔鼠が大量発生していたあの場所。
確実に何かが起こっている。
もしかしたら学校どころが国を巻き込みかねないほどの何かが。
もしかしたら私が転生したのも意味があるのかもしれない。
そう体育祭を不安に思いながら帰路につくのだった。




