9 体育祭練習 2
ほとんど説明で終わりました…
戻ったらほとんどの種目が終わっていて後はS・Aクラスの模擬戦だけだった。
模擬戦は使役獣部門と魔法部門の2つがある。
練習ではどちらも実際に戦うわけではないため、戦いは本番のお楽しみになる。
けど、本番で実際に戦う相手を決めるのでそこはしっかり確認しておきたい。
この世界で一般的に優秀と言われる実力がどの程度のものなのか知っておいて損はないと思う。
この模擬戦に出る人で知っている人は零と柚葉の2人だけ。
他の人は誰ひとり知らない。
でも私の教材を隠していた人も柚葉ほどではないけどまあまあ強い方ではあったからもしかしたらこの模擬戦に出ているのかもしれない。
少し見ただけだから顔は覚えていないが魔法を使っているところを見れば魔力の質でわかる。
まあ、わかったからといって何かをする訳では無いが知っておいて損することはない。
それは置いといて模擬戦はトーナメント戦らしい。
S・Aクラス一般種目に出ている数人以外は全員が出る。
各学年で10人程の人数だがその半分の10人くらいが出場する。
ちなみに零も柚葉も魔法部門に出場するようだ。
ぜひ2人が戦うところを見たい。
そうワクワクしながら観察していたがいまいち距離があるため見えにくい。
人が多いから気づかれることもないだろうと思いこっそり詠唱する。
「…ホークアイ」
この魔法は千里眼の下位互換で部分身体強化の1つ。
千里眼は壁なんかの障害物も透過できるが、ホークアイは障害物を透過してみることはできない。
あくまで視力の強化だけだ。
でも千里眼は特殊スキルだからほとんど知る者はいない。
私が知っている理由は前世で師団長をやってた時に禁書庫の本を読んだからだ。
前世でも特殊スキル持ちはほとんどおらず一国に1人か2人いればいい方で国内に特殊スキル持ちがいないことも珍しくなかった。
私の空間収納は魔力量によって容量が変わるくらいで身体的な負荷は無いため問題ないが千里眼や鑑定は目や脳の負担が大きくそれゆえに滅多に使うこともない。
使いすぎると失明や脳に重い障害が残ることもあるからだ。
だからそのリスクを分かっている人は使うこともない。
たまに特殊スキルの負荷に耐えられる身体を持つ人もいるらしいがまず特殊スキル持ちがとても珍しいため、負荷耐性を持つ人がどのくらいの確率で存在するのか定かでない。
話が逸れたがちょうどトーナメントのくじ引きを始めたところだった。
一部では歓声が上がり、一部では落胆の声が上がる。
落胆の声を上げた人は大方零にでも当たったのだろう。
その人の実力は知らないが流石に零程ではなさそうだ。
まあ、だからこそ落胆の声を上げたのだろう。
少し可哀想だが運も実力のうちというし、諦めるしか無さそうだ。
一方で柚葉は2年生の先輩と当たったようだ。
もろもろの力の強さでは柚葉のほうが上だが、相手の戦い方や魔法属性の相性もあるからどちらが勝つのか当日が楽しみだ。
ちなみに零と柚葉がぶつかるとしたら準決勝のようだ。
零は余裕でそこまで進むだろうけど柚葉は運が良ければだろう。
柚葉は魔法は普通に使えるがあまりにも実戦経験がなさすぎる。
まあ入学してまだ1ヶ月程だから仕方ないのだが。
それにそこまで勝てたとしても零と柚葉では実力が違いすぎる。
零はこの学校内でも次元が違いすぎるのだ。
普通にこの学校にいる人のほとんどが速攻で倒されるだろう。
トーナメント戦のくじ引きも終わった様なので先程の人気のない場所もとい、校舎裏に向かう。
先程の魔物について調べる為だ。
ほとんどの人が気づくことはないがこの学校には魔物避けの結界が張ってある。
結界の魔法式を読み取った感じ外部からの魔物の侵入を防ぐものだった。
それに加えて学校への攻撃を防ぐ結界もあった。
そう考えると結界内である校舎裏に魔物がいることがおかしいのだ。
結界の魔法式に傷ができて誤作動を起こしたならまだいいが、誰かが結界内に魔物を呼んでいる可能性がある。
召喚か結界のすり抜けかどちらにしてもかなり不味い。
魔物を呼び寄せる魔道具は存在するが結界がないと魔物避けの結界を無視して通過することはできない。
確実に人間が関わっているだろう。
例外は精霊だが精霊がいるなら白玖が気づく。
好きにしてていいけどあまり学校から離れないよう言ってあるから流石に気づけないことはないだろう。
だから結界内に魔物を連れ込んだのは人間だ。
手がかりがあるか確認するなら早いほうがいい。
先程戦闘した校舎裏は一見すると何も無いがよく見ると若干だが、空気中の魔力濃度が濃い。
私たちが魔法を使ったのもあるけど魔導具を使ったからはっきり違いが出てるのだろう。
「白玖ーいる?」
思ったより近くにいたのか呼ぶとすぐに姿を現した。
「んー、どした?」
「ここの魔力って闇とか魔ってないよね?」
人間には魔力があるかどうかはわかるけどそこで使われた属性まではわからない。
反応した魔力の属性を調べる魔道具もあるにはあるがまず全然正確じゃない。
しょっちゅう間違える。
だからここは白玖に頼んだほうが確実なのだ。
「それはないよー、けど…」
「けど?」
「確証は持てないけどこのあたりで使われた魔道具を作った人、マスターと同じぐらいの実力者だよ。魔力量はさすがに普通だけど」
「そうなの?魔力量はまあいいとして私と同じくらいの実力者か…零とだったらどっちが強い?」
「マスターが鍛えれば変わるけど今の段階ではほぼ互角かな、さすがに残留魔力だけではこれが限界」
「…とりあえずその魔道具の製作者が敵でないことを願うわ…」
「無理じゃない?」
「い、いやその魔道具が盗まれたものかもしれないじゃない…いやそうよ、うん多分」
「可能性は低いと思うよ…」
「でもここに魔道具はないわね…」
「回収されたんじゃない?…もしくはマスターの魔法で壊れて魔力感知で気づけなくなったか」
「うぐっ…絶対ないって言えない…」
「ホントマスターってた・ま・に、脳筋になるよね〜」
「ぐっ…痛いところを…でもしょうがないじゃない。あれが一番楽だったんだもの」
「まあ過ぎたことを言ってもしょうがないし諦めよ」
「…そうね、まあ調べたいことはわかったから戻るわ」
「じゃあまた適当にうろついてるから何かあったら呼んでねー」
「ええ、わかったわ」
「それじゃあねぇ〜」
白玖はそういうと転移したのか姿を消した。
「体育祭…何事もなく無事に終わればいいけど…」
私はそう不安を抱えながら校庭に戻り、やがて帰路につくのだった。




