ヒロイン不在でも世界は回る
悪役令嬢が乙女ゲームのヒロインを排除したって、別に国は滅ばないし世界は回る。世の中ってそんなもんだよね、ってお話。
モリス公爵令嬢アンジェラ・モリスは悪役令嬢である。
ということを、アンジェラは知っていた。日本という国で生きていた記憶を持つ転生者だったからである。
アンジェラは日本の乙女ゲームの中ではそれは酷い女性であった。王太子メルヴィン・フローレスの婚約者であるというのを笠に着て周囲を見下し、わがまま放題の少女だった。
乙女ゲームの舞台となるのはとある王国の王立学園。王立学園に入学する前から王太子はわがままばかり繰り返すアンジェラに辟易としており、学園で出会った一人の男爵令嬢と恋に落ちるのである。
サンチェス男爵令嬢のレイラ・サンチェス。サンチェス男爵の庶子であり、学園に入学する直前に男爵家に引き取られたばかりの少女だった。
王太子メルヴィンはすでに婚約が決まっており、しかも相手は公爵令嬢である。対して、レイラは一介の男爵令嬢。メルヴィンとレイラの恋は、非常に苦しいものになるはずであった。
しかし、王国に古くより眠る魔物が復活したことにより事態は一変する。メルヴィンとレイラは愛の力で強大な魔物を打ち倒し、その課程でレイラは途絶えたとされる旧王家の特別な力を引き継いでいると周知されて、晴れて王太子メルヴィンと婚約するのである。
旧王家の血筋であり、特別な力を持つレイラを必要以上に苛めていた悪役令嬢アンジェラは破滅。王太子メルヴィンから婚約破棄と断罪を受けて、一生を修道院で過ごすことになるのである。
「――って、冗談じゃないわよね」
ごくごく小さな声で、アンジェラは呟いた。
はっとして周囲を見回してみたけれど、侍女も護衛も気づいた様子はない。むしろ、アンジェラのその動きこそ気になったようだった。
「どういたしました、お嬢様」
「いいえ、何でもないの。気にしないで」
穏やかに声をかけてくる侍女に、にこやかに返す。侍女は一つ頷いて頭を下げた。
「それはよろしゅうございました。そろそろ紅茶を取り替えますか」
「ええ、お願い」
勉強の傍ら飲んでいた紅茶が八割ほど減っている。新しい紅茶を用意するために動き始めた侍女を尻目に、アンジェラは思案した。
子どもの頃に前世の乙女ゲームの記憶を思い出してから、早十年。王太子メルヴィンとの婚約が決まったのは三年前。婚約が決まる前も決まってからも、アンジェラは努力を怠ることはなかった。
また乙女ゲームでは男爵令嬢であるヒロインとの恋が深まるきっかけであるメルヴィンの葛藤も、前世の記憶を元にアンジェラが解決に導いている。そのお陰かメルヴィンとの仲は良好で、周囲も二人の関係を心穏やかに見守っているようだ。
乙女ゲームの時間軸が始まるまであと三日。前世の記憶を思い返しながら、アンジェラは内心で呟いた。
婚約者のいる男に粉をかけるような女に負けるものですか、と。
***
かくして王立学園の入学式が執り行われたのだった。アンジェラは入学式ではメルヴィンと行動をともにして、ヒロインとの出会いイベントは起こらないように調整した。
ヒロインである男爵令嬢レイラに前世の記憶があるのかは判らない。けれどレイラがメルヴィンに不自然に近づいてくるようなことはなかったので、アンジェラは満足していた。
なのに。
なのに、と思う。なぜこんなことになったのかしら、と。
いつの間にか、メルヴィンとレイラは出会い、交流していたようだった。
もちろん、不適切な距離感にはならない。けれどメルヴィンは、いつからかレイラに柔らかい表情を向けていた。婚約者であるはずのアンジェラも見たことがない表情だ。
乙女ゲームのように、アンジェラがレイラに危害を加えたことなどない。けれどこのままでは、それこそ乙女ゲームのようにアンジェラは断罪されてしまうかも知れない。
よってアンジェラは、メルヴィンに釘を刺すことにした。
「殿下、近頃はサンチェス男爵令嬢とご懇意にされておりますのね。不用意に女性とお近づきになるのはお止めくださいませ。先方にも悪い噂が立ってしまいかねません」
指摘されて、メルヴィンは驚いたようだった。瞬いて、眉尻を下げる。
「申し訳ない、彼女は貴族社会にまだ慣れていないようでね。何かと困りごとが多いようだから気にかけてあげていたのだが、いつの間にか近づきすぎていたようだ」
「困りごとなんて本人がどうにかすればいいだけの話です。殿下がお気になさることではありません」
言ってから、しまったと思った。少し言葉が強すぎたかも知れない。
気づかれない程度に素早くメルヴィンを見れば、相手は一つ、瞬いただけだった。何を考えているのかは計り知れない。
ただ、メルヴィンは穏やかに微笑み、頷いた。
「今後は気をつけよう。至らなくて済まなかった」
なんと返せば良いのか判らず、アンジェラは頷いたのだった。
それから、メルヴィンとレイラは本当に話すことはなくなった。メルヴィンとレイラが廊下ですれ違うときも、レイラは静かに頭を下げているだけだ。
けれどその、すれ違う一瞬。あるいは窓越しに、レイラをほんの数秒だけ眺めるメルヴィンの視線。
あぁ、と思った。
あぁ、メルヴィンは恋をしているのだ。
相変わらずアンジェラとの仲は良好で、アンジェラを大切にしてくれる。けれどメルヴィンは、レイラに恋をしているのだ。
学園に入学してから、アンジェラはときどき夢に見る。乙女ゲームの悪役令嬢アンジェラが、メルヴィンに断罪されるラスト・シーンを。
夢に見て、ぐっしょりを汗をかいて飛び起きるのだ。
ならば、とアンジェラは行動に起こすことにした。
何のことはない、レイラを排除してしまえば良いのだ。幸いにして今世のアンジェラには、それだけの権力がある。
子どもじみた嫌がらせをする必要も、わざわざ後ろ暗い組織を雇う必要もない。ただ、お茶の席で友人にこう言えば良いだけだ。
サンチェス男爵家の寄親である伯爵家のご令嬢に向かって。ただ、殿下と不適切な距離にあるという噂を聞いたが本当なのか、と問えば良い。
それだけで、ことは何もかもうまく運んだ。レイラは学園で孤立し、やがて学園をそっと退学していった。
メルヴィンが反応していた様子はなかった。そもそもレイラの退学を知っていたのかも判らない。
その後もつつがなく学園生活を過ごしていたアンジェラだったが、大きな問題が起きたのは学園を卒業する半年ほど前のことだった。
旧王家の時代から封印されていた魔物が復活したのだ。
それは毒をまき散らす凶暴な邪竜だった。王都から五日ほどの場所にある霊山に現れた邪竜は、領地の冒険者は騎士団では歯が立たない。
対策を決めかねた国の上層部に対して、手を挙げたのは王太子そのひとだった。
「なぜそんな危険なことをするのですか! あなたは換えの利かない御身なのですよ」
「換えなら利くとも。この国の誰よりも価値が軽く、換えが利くのがわたしという人間だからね」
いつもならば決して見せない感情を見せてメルヴィンを止めようとするアンジェラに、メルヴィンはあっさりと返した。
「弟が二人いる。妹もいるから、いざとなれば女王でも良いだろう。それに王弟にも令息と令嬢が二人ずつ。どの子も優秀だ、国を乱すようなことはないだろうね」
「あなたはどうなるというのですか!」
言いつのったアンジェラに、メルヴィンは不思議そうな視線を向けた。
「あなたはいつも言っていただろう。王族や貴族に生まれた以上は責務を果たすべきである、と。全く同意見だ。わたしが邪竜討伐に乗り出すべきだ」
「ですが……」
「いまの王家は代々高魔力保持者を取り込み続けているから、わたし自身が国で指折りの魔法戦闘上位者なんだよ。邪竜を討伐できればそれで良し、できずにわたしが討ち死にしても国への大きな影響はない。むしろ邪竜に対する初動対応で失敗していて国に対する不満が高まっているから、わたしの戦死は市民たちにとって良い娯楽になるのだろうね」
メルヴィンは言い切った。何の揺らぎもない、自分の考えを疑わない声だった。
言葉の出てこないアンジェラに、メルヴィンはしばらく不思議そうな視線を向けていた。ややあって得心がいったのか、一つ頷く。
「もちろん、わたしが死んだところであなたが悪いようになることはないよ。弟たちにももう婚約者がいるが、未来の王妃として最も教育が進んでいるあなたが望むのならば婚約は切り替えられるだろうし、逆にあなたが望まないのであれば無理な婚約を押しつけられることもないだろう。もしもわたしが死んだときには、あなたのことは良いようにするように陛下と妃殿下にはお願いしている。王家からあなた個人に対する見舞金も渡されるだろうから、お金に困ることもないはずだ」
メルヴィンは微笑んだ。一つの曇りもない、憂いのない笑みだった。
「死ぬ気はないけれど、死ぬかも知れないから先に言っておこう。婚約が決まってから六年弱だったかな、あなたは本当に頑張ってくれた。あなたがわたしの婚約者に決まって本当に良かったと思っている。どうか健やかに、幸せに過ごしてくれ」
言い置いて、メルヴィンは去って行った。ひどく泣いて言葉も出ないアンジェラにちょっとだけ困ったような顔をして、アンジェラの侍女にアンジェラを託して行った。
戦地から戻ってきたのは、メルヴィンの片腕一つだった。
***
そうしてアンジェラはいま、隣国の私立魔法大学を訪ねている。
メルヴィンの死後、アンジェラは王族との再婚約は行わなかった。アンジェラの父である公爵が慮ってくれて、社交界からは遠ざかっているが堅実な人柄で評価の高いとある小さな伯爵家の次期当主との縁を繋いでくれたのだ。
邪竜の復活から二年半が経過したが、いまだに邪竜討伐には至っていない。邪竜が住まう霊山の周囲は毒の影響で土地や水が死んでしまって、一帯が人間の居住に向かない避難区域に指定されている。
邪竜は霊山に住み着いているが、ときどき餌を求めて別の街まで飛んでくる。そうして女性や子どもを攫っては、肉を食んでいるのだ。
王家が対応に追われているようだが、もはや国の中枢とは関わりのなくなったアンジェラには関係のないことである。
大学の門を通り抜けて、アンジェラは構内を見回した。
なんとなく服装や所作から身分というのは判るものだが、この大学には低位貴族か裕福な市民階級のものが多いようだ。そもそも大学などという酔狂なものに入るのは、とことんまで学問を突き詰めたい変わり者が多いと聞いたことがある。
アンジェラが関わりのない大学を訪れたのは、とある女性と会うためだった。目的の女性を見かけて、アンジェラは声をかけた。
「ごきげんよう、レイラさん」
声をかけられて、レイラが振り返った。アンジェラが明らかに高位貴族の服装をしているものだから、一緒に歩いていた友人らしき女性たちが不思議そうにしている。
呼ばれたレイラが瞬いて、首を傾げた。学園時代のただ可愛らしかった印象から、しっかりとした大人の女性になっている。
「わたしですか? 何のご用でしょうか」
愛想の良さに警戒を潜ませた声で、レイラは問うた。一瞬だけ振り返って、心配そうにしている友人たちに解散を促す。
視線をアンジェラに戻して、レイラは言った。
「アンジェラさん、……アンジェラ様ですわよね」
「わたくしをご存じですのね」
「それは、かつての自国の王太子殿下のご婚約者様ですもの」
苦笑する表情に、鬱屈したものは見えなかった。レイラからアンジェラに対する視線に悪意はないが、興味もない。
興味のなさを愛想で綺麗に隠した、つまりはそれなりによく見る表情で、レイラは言った。
「わたくしに何かご用でしょうか。長くなるのであれば、学内のカフェをご案内致します。隣国の公爵家のお嬢様にご満足頂けるかは判りかねますが」
「では、お願いしようかしら」
アンジェラが頷けば、レイラは少しだけ意外そうな視線を向けた。
二人で並んで歩き出す。その後ろに続くのはアンジェラの護衛たちだ。大学でぞろぞろと護衛を連れ歩くような身分のものは少ないから、自然と視線が集まる。
ややあって辿り着いたカフェで、流行りだけれど安くて味の薄いコーヒーを前にして、アンジェラとレイラは向かい合った。
毒がないことを示すためか何も考えていないのか、レイラが真っ先にコーヒーに口をつける。ややあって、レイラは口を開いた。
「それで、何のご用でしょうか」
問われて、アンジェラは少し考えた。ややあって、言葉を紡ぐ。
「ずっとあなたに謝りたかったのよ。あなたがメルヴィン元王太子殿下とご懇意にされているだなんて根拠のない噂をわたくしがうっかりお友だちに言ってしまったばかりに、学園であなたが誤解されてしまったようだから。わたくしのお友だちを止めることができなかったのは、わたくしの力不足でしたわ」
嘘だった。噂を学友たちに吹き込んだのはアンジェラだったし、レイラに対する嫌がらせだって、認識はしていたけれど止めたことなど一度もない。
内心などおくびにも出さず、心から申し訳なさそうな声を出すアンジェラに対して、レイラは大して起こった様子もなく苦笑した。
「あぁ、学園ですか。わたくしが王太子殿下と交流があったことも、わたくしが王太子殿下に惹かれていたことも事実ですので、一概に何の根拠もないとは言えませんから。当時は、ただ……」
そこで、レイラは言葉を止めた。視線を落として、薄らと唇を笑みの形に曲げる。
「ただ、あの方が好きで。今となっては本当に、身のほど知らずだったなあと思いますけれど。当時は実の両親が事故で亡くなって伯父夫婦である男爵夫妻に引き取られたばかりで、まだ家族にも馴染めていなくて、貴族としての教育なんて受けていなかったから学園でも馴染めていなくて、気にかけてくださった殿下に惚れ込んでしまったのです。殿下はお優しかったからわたくしにも親切にしてくださって、本当に……殿下がお亡くなりになったと風の噂で知ったときには、どれほど嘆いたことか」
知らない情報が出てきて、アンジェラは問うた。
「あなたは男爵の庶子ではなかったのですか」
「誰が言ったのですか?」
それまでの、ただ愛想は良いが興味のない表情から、ほんの少しだけ不快感を滲ませてレイラが返した。アンジェラが反応するよりも早く、レイラが素早く頭を下げる。
「無礼な口を利きまして、大変に失礼を致しました。ただ、男爵夫妻、いまの養父母は姪に過ぎないわたくしにも大変に親切にして頂きましたから、どうか養父母はお許しください。咎はわたくしがお受け致します」
「いいえ、気にしていませんわ」
慌てて言えば、レイラはほうと肩の力を抜いた。
仕切り直すようにコーヒーを口にして、再び口を開く。
「ですから王立学園でわたくしの立場が悪くなったのは、自業自得というか、あまり気にしていません。養父母は故国の貴族社会ではもう生きづらいだろうと隣国であるこの国の魔法学園に転学させてくれましたし、色々な方の助けを借りて大学まで進めました。王立学園時代はただ漫然と過ごしていただけでしたが、いまは魔法教師になろうと思っているのです。生まれに恵まれない子どもが這い上がろうとするならば、やはり魔法を学ぶのは大きな意味を持ちますから。わたくしだって両親が亡くなったとき、伯父夫婦が引き取ってくれなければ大変に苦しい人生になっていたでしょう」
何か眩しいものを見るように大学の学舎を見上げながら、レイラは言った。
アンジェラは、少しだけ言葉を失った。けれど、意を決して口を開く。
「一つお訊きしたいのですが、故国に戻るつもりはありませんか。どのくらい状況をご存じかは知りませんが、いまフローレス王国は邪竜の影響で一部地域の市民が苦しんでいます。どうか魔法に長けたレイラさんのお力をお借りしたいのです」
言いつのれば、レイラはきょとんとした。
「たしかにわたくしは他の人びとより多少は魔法が得意ですが、特別に攻撃魔法に秀でているわけではありません。お役に立てることなど何もないでしょう。さんざんに悪評を立てられたわたくしが戻れば、男爵家にも迷惑がかかります」
「わたくしが後ろ盾になりますわ」
言えば、レイラは笑った。緩やかに首を振り、アンジェラを見つめ返す。
「それは詰まり、わたくしが戻らなければわたくしの家族を害するということでしょうか」
「そんなことは言っておりません!」
アンジェラを見つめるレイラの視線は、ひどく静かだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ温度がなかった。
「であれば、お断りさせて頂きます。家族は大切ですが、嫌な思い出のある国に、わざわざ戻ろうとは思いませんから」
とうとう、アンジェラが立ち上がった。レイラが身を固くする。
身構えたアンジェラの護衛たちを制して、アンジェラはレイラに言った。
「どうかお信じください。レイラさん、あなたには国を救う力があるのです。あなたであれば邪竜を倒せるはず。どうか国をお救いください」
アンジェラは祈るような気持ちで、レイラにそう訴えた。
対するレイラは、ひどく中途半端な表情をしていた。愛想の笑みを浮かべようとして失敗した半笑いで、アンジェラを見返す眼の奥には、混乱と恐怖が僅かに見え隠れしていた。
レイラは返した。ひどく穏やかに、慎重に。
狂った人間を前にしたときに浮かべるような、少しだけ強ばった、けれど優しい表情で。
完全に、イカれた人間を相手にするように。
「……大変にお疲れなのですね、アンジェラ様。どうかご自愛なされませ。ご健勝を遠い地よりお祈りしております」
さんざんに悪意を振りまき、人びとを苦しめた邪竜がようやく倒されたのはそれからおよそ四十年後のことだ。邪竜を倒したのは、当時のフローレス王国の第三王子と、その第三王子と恋に落ちたとある魔法大国からの留学生だった。
その留学生の祖母は非常に優秀な魔法教師であり、晩年は魔法大国でも指折りの名門魔法学園の学園長を務めたと伝えられている。
思いついちゃったのでぱーっと書き上げてぱーっと投稿します。見直しはあとでする! 特に名前らへんとか入れ替わってたらごめんなさい。
よく「乙女ゲームの世界に転生した!」って前提で、悪役令嬢が断罪されないように立ち回るみたいな話があるので、悪役令嬢が無事にヒロインを排除したらどうなるのかをわたしなりに考えてみました。別に誰も悪いことしてない。
わたし自身は一度も乙女ゲームをしたことがないのですけれど(済みません)、乙女ゲームのヒロインって大体はそれなりに大きな役割を持っている気がするので、、、いや本当にプレイしたことがないのでイメージです、イメージ。で、じゃあその大きな役割を持っているヒロインを排除したら世界はどうなるのかなーって考えてみました。世界はヒロインがいようといなかろうとなるようになるだけなので、トゥルーエンドですね。ちなみに実際の乙女ゲームには悪役令嬢ってあんまり存在しないらしいですね。じゃあなろうの悪役令嬢文化ってどこから来たのかとっても不思議ですが。最近ではなろうから逆輸入されて乙女ゲームにも悪役令嬢が出てくるとかって噂を聞きますが。乙女ゲームどころかゲームすらろくに縁のない人生を歩んでいるのでわたしはいま何もかもふわっふわな知識とイメージで話しています。
あとなろう作家の皆さん、異常に「婚約者ないし恋人がいる相手への横恋慕」を憎悪していらっしゃるのかなーって思っていて。いや、良くないことであるのは事実なのですけれど。でも恋心ってそんな、割り切れるものじゃなくない??婚約者のいる素敵な男の子と出会ってしまって、うっかりその相手に恋しちゃう女の子はそんなにも悪い存在なの??それこそざまぁ小説みたいに酷い目に遭わなくちゃいけないほどなの???憎みすぎじゃない??どうして???ってずっと不思議だったので、わたしなりの「婚約者のいる相手に横恋慕する女の子」を書いてみました。
王太子メルヴィンは、大変に大変に優秀だったけれど、人間としてポンコツだったので自分のことを王家のパーツくらいにしか思っていませんでした。なんか邪竜被害が出て王家へのヘイトが溜まってるっぽいから自分が死んだら市民の娯楽になるしガス抜きしとこ、くらいにしか考えていない。乙女ゲームではヒロインちゃんと恋をすることで人間の心を知るけれど、本作ではヒロインと恋をしなかったので優秀なポンコツのままです。婚約者であるアンジェラのことは、政略の相手だし未来の王妃として優秀だし性格にも問題なかったので大切にしていました。大切にはしていたけれどポンコツだったので、自分が死んでアンジェラが悲しむかも知れないだなんて夢にも思いませんでした。
公爵令嬢アンジェラは、前世の乙女ゲーム知識を元に自分が断罪されないように頑張っただけ。レイラを排除するように誘導はしたけれど、まあ自分の婚約者と仲良くしている女がいたら目障りになるのは当たり前だよなって。レイラを実際に苛めたアンジェラの友だちも、未来の王妃であるアンジェラに阿ったほうが将来が有利になるからレイラを排除しただけ。アンジェラに関しては、断罪に意識が向きすぎて邪竜をどうするのか考えていなかったのがミスといえばミスかも知れないし、邪竜くらいヒロインなんかいなくてもどうとでもなると考えていたのかも知れません。まあ実際、邪竜が復活してから倒されるまで40年、なんだかんだ王国は続いているので間違いではありません。別にヒロインがいなくたって国は滅ばないし人びとは営むし世界は回る。そのうち婚約相手である優しい伯爵令息と婚姻してそれなりに穏やかな人生を生きるのではないでしょうか。
男爵令嬢レイラは、うっかり婚約者のいる男性に惹かれた(しかも王太子だった)のが運の尽き。でも、いけないと判ってたってどうしてもどうしても相手を好きになってしまうことってあるよね。王立学園で苛められた件は自分が悪かったんだろうなと理解しているので気にしていません。それより転学した魔法学園で学ぶほうが楽しかったので。けれど王太子が亡くなってしまったことはとてもとても、本当にとても悲しい。レイラは王太子を愛していたので。ちなみにアンジェラと対面後、レイラは「こいつぁやっべー妄想女に眼をつけられちまったぞ」となって故国にいた男爵家と一緒に逃げ出します。レイラは優秀だったので、王国の隣国のさらに隣国の魔法大国に留学してそこで新しい恋を見つけます。レイラの家族たちも王国の爵位を返上してまとめて魔法大国に引っ越しました。
【追記20250131】
活動報告を紐付けました。どうでも良いことをぐだぐだと書き綴ってしまった
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