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チュートリアルが終わらない!

作者: 神薙神楽

 ぷるぷるボク悪いスライムじゃないよ。

 ただの、チュートリアルで殺されては生き返る(リポップ)するスライムだよ。

 ボクはぶいあーるげーむのふぁんたじーらいふ何とかっていう世界に来るぷれいやーさんの最初の敵なんだって。

 案内役の女神ナビを名乗る女の子がそう説明していた。

 ぷれいやーさんはたいていすぐにボクを殺すけど、中にはボクを殺すのをためらったり、ボクの相手をするのに文句をナビに言ったりする人がいた。

 ボクが最弱のスライムだからスキップしたいんだって。


 そんな人の相手は疲れるのか、ナビはため息をつくから、足元にすり寄って慰めに行く事もあった。

 でも、見向きもされないからナビは気付いてないと思う。


 そんな中で、一人のすごい変わった子が来た。

 ミクっていう名前のぷれいやーさんはボクを倒すって時に、まず最初にボクに思いっきり挨拶をした。

 でっかい声で「初めまして、スライムさん!」って言われた時はナビもボクもそれはもう驚いた。


 ……でもね、ボクも仕事だから、その隙を突いて体当たりした。

 何万回もお仕事をして、初めての体当たりだった。

 さすがに死にはしないよなって思ってたんだけど、あっさり光になった。

 ナビも「スライムの攻撃力(ATK)はゼロの筈なのに?!」って悲鳴を上げてた。どういう意味だろ?

 戻って来たミクさんはごめんなさいって謝ってた。

 何でもミクちゃん(そう呼んでほしいって言ってた)はずっと入院生活を送っていて、体を動かすのが苦手らしい。

 ボクらは思った。


 いや、絶対そんな領域じゃない、と。


 そんな中でボクらの奮闘は始まった。主にナビの。

 まず、ナビは全ての武器の初心者用を、じーえむ権限ってので送ってもらって、ミクちゃんに素振りをさせた。弓や、魔法や、銃も撃たせてみた。

 そして、ボクに向けさせてみた。

 ボクもなるべく罪悪感を減らすように置物っぽくなってみた。


 でも、何か特別な力が働いているかのように、全部がボクを避けていった。

 ⋯⋯ボク動いてないのに。


 ナビがその昔数多の武器を使いこなしたってことで名を馳せた英霊さんを召喚して、ミクちゃんの指導をお願いしても、変わらなかった。

 このままでは、ボクらの存在意義が無いって考えたナビは、ボクに対してテイムをすることを提案した。


 しかし、「うちと一緒に来てください!」ってお願いされてもなぜかテイムが出来なかった。

 ボクがイジワルしたわけじゃない。

 ナビは最初は疑ったみたいだけど、力の差が大き過ぎるせいだろうって納得した。

 システムに一部のモンスター以外は余りに力の差があるとテイム自体しにくくなる効果があるらしい。

 ⋯⋯ボクより弱いって認められてるよ。


 ナビは「テイムに必要な好感度と強さは試行回数で補える」って言ってるから、とにかく回数をこなすことが重要らしい。

 ナビは知らないけど好感度の方はボクなら満たしてる。

 ⋯⋯これを好感度って呼べるのかは分からないけど。どっちかというと哀れみとかそういう感情だと思う。

 五十五回目のテイムにようやくボクにテイムを受け入れるかの選択肢が来た。

 ボクはすごい嬉しかった。

 勿論Yesを選択しようとした。

 ⋯⋯そこで手が滑っちゃってNoを押してしまった。

 ミクちゃんとナビには悪いことをしちゃったけど、二人とも失敗は慣れたもので、すぐに次のテイムをした。

 ⋯⋯イヤな慣れだね。


 次のテイム成功はすぐだったから罪悪感はほんのちょっとで済んだ。

 ミクちゃんとナビはすごい喜んでいたよ。


 でも、ミクちゃんが、ボクの名前はすらみだって言ったから全力で反抗した。

 抵抗虚しくボクの名前がすらみになりそうなところで間一髪。

 ナビが助け船を出してくれた。

 そのおかげでボクの名前はエメになった。

 エメラルドからだって。


 でも、チュートリアルは終わらない。

 ボクの次には角兎ボーンラビットというウサギさんを倒す課題があるのだ。

 ボクは初めて知った。

 最初の関門だからね。

 勿論ミクちゃん一人の力じゃ倒せない。

 だから、ボクはミクちゃんの攻撃を邪魔しないように華麗に攻撃を加えた。


 でも、中々倒せない。

 ミクちゃんが攻撃を受けることが減ったし、ボクは避けタンクの才能があるらしいから、角兎くらいなら華麗に避けられる。問題は攻撃力だ。ってナビは言うけどそんな簡単に解決出来る問題ではない。


 そんなナビから提案があった。

 そう、あの角兎もテイムしようという提案だ。

 ナビは「一匹も二匹も同じなのですよ⋯⋯」ってぼやいてたけど、盛り上がったボクらには関係ない。

 早速ボクらはテイム作戦を実行した。


 簡単には行かなかったけど、ちゃんと力を合わせて角兎をテイムすることに成功した。

 そしてなんと!

 テイムされた角兎であるシロ(ナビ命名)になら、なんとなく言いたいことが伝わるのだ。

 ナビはボクに気付かないからすごい嬉しかった。

 その上ボクに懐いてくれる。

 ナビはシロに骨抜きだけど、あんまりシロは懐いてないから、ざまあってやつだ。

 チュートリアルの最後の難関はウルフだ。


 ナビ曰く、ここは負けても大丈夫らしい。でも、ミクちゃんはテイムする気満々だ。

 ナビは放っといておくらしい。

「これ以上はストレスの元」だそうだ。


 最初からミクちゃんのチュートリアルに付き合った同志としてはちょっと悲しい。

 それでもミクちゃんは「エイエイオー!」って気合いいれちゃってるからボクも気合いをいれる。


 ウルフとの戦いは壮絶だった。

 ボクが攻撃を引き受けながら避け続ける。

 シロは隙をみてウルフに攻撃をする。

 ミクちゃんはウルフに向かってテイムを唱える係。


 みんなで頑張ったけど、チュートリアル最後の関門は容易には突破出来ない。そんな時にミクちゃんがシロ! エメ! 力を貸して! と叫んだ。


 すると、シロからホワホワーって光が溢れ出し、シロは今までより鋭い攻撃をウルフに加えた。


 なにあれ


 でも、ウルフはそれを気にも留めず、前足を振り払い、シロは避けられずに死んでしまった。

 ウルフは次にミクちゃんに狙いを付けた事にボクは気付いた。これが最後なんだから、ミクちゃんを死なせるわけには行かない。ボクはウルフとミクちゃんの間に体を滑り込ませる。

 ミクちゃんは驚いた顔をして、涙を堪えてウルフにテイムと叫んだ。


 それによって、ウルフがテイムの光に包まれていくのを、死に際のボクは見た。


 次に見たのは青空の下にある街並みと大きな狼と真っ白な兎と泣き笑いの女の子、そして、チュートリアルの文字だった。

ボクらのチュートリアルはこれからだ!

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