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6.

6.


 コテージには既に荷物が運び込まれている。受付で鍵を受け取れば、そのまま手ぶらで向かえばいい。しかし、コテージへ向かうのにもきつい坂道が待っていた。

「ここを荷物担いで登ることを考えたらぞっとする」

「私は絶対に無理」

 小松が呟き、久美も同調する。

「施設に問い合わせた時にコテージへは車で行くことをお勧めしますと言われて、どういうこと? って思っていたけど、その意味がやっと解かった」

 ペコはそう言いつつも、この坂道を苦にすることもなく上っていく。間もなく木立の中にコテージが立ち並ぶエリアにたどり着いた。そこはまるで避暑地の別荘群を思わせる雰囲気がある。

「ここだ。やっと着いた」

 組長が鍵を開ける。そして、中に入る。玄関を境に左に8畳の和室と右に6畳の洋室。それを結ぶ廊下に面してキッチン、浴室、洗面、トイレが配置されている。女性陣は洋室のベッドルーム。男性陣は和室に宿泊する。先ずは和室の方に集まり一休み。落ち着いたところでペコが立ち上がる。

「私、露天風呂に行ってくる」

 コテージにも浴室はあるのだけれど、せっかくなら露天風呂に入りたい。夕食の後は蛍を見に行く。行くタイミングは今しかない。他のメンバーは動く気配もない。

「小松、お前も行って来い。ペコちゃんの警護を兼ねてね。熊が出るかもしれないから」

「それもそうですね。女性一人で行かせるわけにはいかないですもんね…って、熊ですか!」

 外はまだ明るいけれど、露天風呂まではこのコテージから結構な距離がある。一人ででも行くというペコを気遣って日下部が小松に帯同する様に提案した。熊が出るなんてことはあり得ないのだけれど。本当は日下部自身が一緒に行きたかったのだけれど…。残った4人はビールの缶を手にした。夕食前の一足早い乾杯だ。


 露天風呂へは登って来た坂を下り、受付を通り過ぎここへ来る途中にあった分かれ道を再び登っていく。

「こりゃ大変だ。みんな来なくて正解だったかも知れませんね」

「あら、小松さんも後悔しているの?」

「いえいえ、そんなことはありませんよ。苦労の先にご褒美が待っているんですから」

 そうしてたどり着いたそこは『白壁の湯』と書かれていた。

「じゃあ、ここで」

 入口で二人は其々男湯と女湯に分かれた。その露天風呂はその名の通り正面に白い岩肌がそびえ立つ絶景露天風呂だった。二人とも露天風呂のお湯を満喫して白壁の湯を後にした。湯上りのペコの香りをほのかに感じながらの帰り道は小松にとって坂の登り下りさえも忘れさせるほど至極のひと時だったに違いない。




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