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そこは以前、宴会場だった施設のようだ。池の畔にせり出したその場所で昔は大いに盛り上がったのだろう。今は当時の様子を僅かに残しつつビリヤード台や折りたたまれたままの卓球台がぽつんと置かれている。最近は卓球などやる客も居ないのだろう。
係りの若者が苦戦しながら卓球台を組み立てている間、窓から池の様子を窺がう。池には立派な鯉が優雅に泳いでいる。窓から顔を出すと鯉たちは餌を貰えるのではないかとこちらへ寄ってくる。残念ながらお前たちにやる餌は持ち合わせていない。そこに一艘のスワンボートがやって来た。古谷と久美だ。まるで仲良しの熟年夫婦の様な二人だった。お似合いだ。
「準備出来ましたよ」
そう言って係員はその場を後にした。
「よし! やるか」
最初の対戦は日下部とペコ。どちらも卓球なんて何十年ぶりにやる。組長と小松にしてもきっとそうだろう。卓球というよりはピンポンと言った方がいいのかも知れない。日下部のサーブでゲームが始まる。最初はまともにボールを返すことも出来ずに得点だけが増えていく。けれど、次第に慣れて来ると卓球らしいゲームになって来た。互いに取っては取られての接戦となったが、最後に笑ったのはペコだった。その時のペコの喜びようときたら、まるで純粋無垢な子供のようだった。
続いて組長と小松の対戦。こちらも似たような展開で組長が勝利した。
「じゃあ、優勝決定戦ね」
初戦を勝ち上がった二人による優勝決定戦は大いに盛り上がったが後半引き離したペコが組長の追撃をしのいで逃げ切った。まるで子供のように喜ぶペコを尻目にこちらも子供の様に悔しがる組長。
「じゃあ、今度は不本意だけど最下位決定戦だね」
こちらは初戦敗退した二人の対戦。日下部がかろうじて勝利し、小松の最下位が決定した。
「ペコちゃん、もう一回やろう」
負けた組長がペコにリベンジを申し出た。
「いいですよ。何度でもいらっしゃい」
そんなペコの言葉通り、リベンジどころかあえなく敗戦。それから三度二人で対戦したもののペコの連戦連勝となった。二人が熱戦を繰り広げている途中で仲良し熟年夫婦もどきの二人もスワンボートから戻って来た。
「そろそろ時間じゃないか?」
「じゃあ、最後にもう一回だけやろう」
諦めの悪い組長にノリノリのペコ。しかし、最後は組長がようやくペコに勝つことが出来て、まるで自分が優勝したようにドヤ顔で締めくくった。




