4.
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先ずは1ホール。日下部が先陣を切った。慎重に構えてそっとパターを振る。
「あれっ!」
慎重すぎてボールが転がったのは僅かに1メートルほどだった。それを見た他のメンバーは思わず吹き出す。その後、次々と順番にスタートする。最初にこのホールを抜け出したのはペコだった。ペコは順調に先のホールへと進んでいく。あとに続いたのが組長だった。しかし、その後はペコの独走状態となった。そんなペコの姿を見ながら日下部は組長に耳打ちした。
「ペコちゃん、どう見てもキャディのおばさんにしか見えないね」
「俺もそう思ったけど、さすがにそれは言えないからさ」
二人がそう思ったのにはペコの服装が一因でもあった。いつもはロングスカートのワンピースなのだが、今回の旅行はズボンをはいて来ていた。動き回るのに都合のいいスタイルだと言えるのだけれど、それがこのゴルフコース上ではキャディのおばさんにしか見えないという結果を招いたのだ。
「まあ、お姉さんということにしておこうか」
ホールアウトした後に日下部がそのことをペコに切り出すと、ペコは自分でもそう思っていたらしく、組長が気を遣ったことなどは全くの杞憂だった。かくして、ペコが圧倒的な強さを見せつけてパターゴルフを制したのだった。
パターゴルフの後は隣の広場にあった輪投げに挑戦する。たかが輪投げと侮るなかれ。これが意外と難しい。久美と組長が一つずつ輪を入れることに成功したが、墓は全滅だった。その後は園内を散策しながら歩いた。池の畔に差し掛かるとスワンボートが見えてきた。
「いいね、スワンボート」
古谷が呟く。
「えー! 乗るの?」
日下部は古谷の提案に難色を示した。乗ること自体は悪くないのだけれど、問題は誰と乗るかなのだ。そう思いながら、取り敢えずボート乗り場の方へ歩いて行くと、その途中に卓球場があるのに気が付いた。
「ここって…卓球じゃない?」
ペコが目の色を変えた。「もし、当日雨だったら卓球大会でもやりますか」ペコは旅行前にそう提案していたのだ。
「よし! やろう、やろう」
「いいね」
組長と日下部、小松も乗って来た。
「俺たちはボートに乗るよ」
「私もボートの方がいいから、皆さんで楽しんで」
体力に自信のない二人はスワンボートを選択した。そして、4人の仁義なき戦いの幕が切って落とされる。