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シャチのショーはこの鴨川シーワールドでも一番人気のショーだ。一同が会場についた時には座席は既に満席状態で施設を囲む最上段の通路でさえ、立ち見客で溢れていた。そこで何とかショーが見られるだけの隙間をそれぞれで見つけて陣取った。
ショーは圧巻だった。最前列に陣取った客たちは大量の水しぶきを浴びてびしょ濡れになりながらも歓喜に沸いた。飼育員たちとのコンビネーションも最高だった。シャチが鼻先で飼育員を持ち上げてジャンプするシーンでは鳥肌が立った。そんなシャチのショーが終わり合流した一同はこの後どうするか相談した。
「この後はアシカのショーが見られるけど…」
「ボクは買い物したいので、売店をハシゴしてみる」
日下部がそう言うと、ペコはアシカのショーを見に行きたいと言った。そこでそれぞれ別行動をすることにした。この後、カモガワバウムの店に立ち寄ることになっているのだけれど、それがここでも販売されていれば、その分ここに長く留まることが出来る。日下部はそれを確かめたかった。それを確かめてここでの集合時間を日下部がLINEすることにした。
目当てのカモガワバウムはここでは販売されていなかった。その旨を日下部はグループLINEで伝え予定通りの時間に集合することにした。
集合時間前には待ち合わせ場所のロッカー前に全員が土産物袋をぶら下げて集まってきた。シーワールドを出ると日下部は目の前にある公衆電話に向かいタクシーを2台手配した。
「これ、タクシー専用の無料電話なんだ」
実は待っている間、日下部はここらカモガワバウムの店までのルートや交通手段を調べていた。鴨川の駅からここへのバスルートだととても歩ける距離ではないと考えたからだ。
「そんなの良く知ってたね」
「みんなを待っている間に聞いておいたの」
すぐにタクシーがやって来た。タクシーにはカモガワバウムで買い物をしてから駅へ向かう旨を既に伝えていた。二手に分かれて急ぎタクシーに乗車し、カモガワバウムに到着すると目的のバウムクーヘンを買い、すぐにまたタクシーに乗車。一路安房鴨川駅へ向かった。
こうして旅行の二日目は慌ただしく過ぎて行った。けれど、みんな満足して無事に帰りの電車に乗車した。
「自分、海浜幕張で降ります」
そう言って小松が途中下車することになった。
「あとで馬券の結果を教えてくださいね」
小松が下車した後レースの結果が確定した。
「誰か当たってるぞ!」
組長の言葉にみんなが注目する。日下部はみんなの買い目を控えた用紙を広げる。そして、日下部自身もインターネットで結果を確認する。
「小松だな。当たったのは」
配当金は2,340円。小松はそれを2口買っていたので合わせて4,680円の臨時収入だ。まだ電車に乗っていれば、即金で貰えたのに、しばらくお預けだ。組長は日下部に配当金を渡した。
「ソフトで会うでしょう。渡しておいて」
それを受け取ると日下部は早速、小松にLINEで報告した。
『びっくり!』
すぐに小松から返信があった。
こうして最後のイベントも終了して電車は無事に東京駅に到着した。本来なら、その後は上野に向かっていつもの店で反省会という流れになるのだけれど、今回は東京駅で解散することにした。そして、みんなそれぞれ帰路についた。
・・・・・・・・・・・・・・次話最終話《番外編》へ続く。