11.
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バッグの中を穿り回したかと思えばレストランへ入って行く。戻ってきたらまたバッグの中を覗き込む。そして、今度はトイレの方へ向かう。
「ペコちゃん、どうかしたの?」
組長が尋ねると困った表情を浮かべるペコ。
「携帯電話が無いんですよ」
「えーっ!」
一同驚いてペコの方を見る。みんなで手分けして食事の後にペコが立ち寄ったところを探して歩く。ペコはフロントで落とし物が届いていないか聞いてみる。小松はレストランの係員に事情を話して携帯電話を拾った人が居ないか聞いてみる。レストランにもフロントにも届けられてはいないとのこと。焦るペコ。何度も鞄の中を探してみるが見当たらない。久美がペコの携帯電話に掛けてみる。
「あっ! ありました」
どうやら、着衣の中に入れていたことを忘れてしまっていたようだ。普段はそういうところに入れないものだから。一同ホッと胸を撫でおろす。
「まだ時間ありますよね。ちょっと周りを散歩してきます」
何事もなかったかのようにペコはホテルを出て行った。
鴨川方面へのバスには定められたバス停がなく、降りたバス停の反対側で手をあげればバスは止まってくれるとのこと。一同は路肩が広くなっているところでバスを待つ。間もなくバスがやって来ると、手をあげてバスを停めた。木更津からやって来たバスには他の乗客の姿はなく、貸し切り状態だった。一同は鴨川駅前を通り過ぎ、鴨川シーワールドで降車した。
チケットを買い、園内に入ると眼前に外房の海が広がり、まばゆいばかりの太陽の陽射しが肌を刺す。荷物をロッカーに預けると陽射しを避けるように一番手前の施設に逃げ込んだ。そこでプログラムを見ながらショーの開園時間を確認した。
「先ずはベルーガだな」
「その後はイルカ。それからシャチだね」
「お昼はどうする? 昼食べるなら、イルカかシャチのどちらかを諦めなければならないけど…」
「じゃあ、イルカは諦めよう。シャチは絶対に見た方がいいから」
こうしてスケジュールが決まって、一同はベルーガのショーが行われる施設へ向かった。
ベルーガのショーでは口から気泡のリングを吐き出す場面を生で見ることが出来て感激した。
「よし、じゃあ、パパパっと飯食っちゃおう。さて、何を食べるか…」
本来、ここでの入園券とセットのランチバイキングの予定だったのだけれど、朝食で腹が満たされた上程だったのでそのセットはやめることにしていた。すると、ちょうど、ベルーガの施設を出たところにラーメンの店と売店があった。
「ここでいいか!」
一同はそのラーメンの店で昼食を取ることにした。ペコが地域限定クーポンの残りのポイントを使って売店で生ビールを買う。それからそれぞれ好きなメニューを選んで注文した。
「あっ! イルカだ」
ちょうど目の前にあったイルカショーの施設でジャンプしたイルカの姿が見えた。
「ちょっとだけど、イルカも見られてよかったですね」
食事を終えるとシャチのショーが行われる施設へ向かった。