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18、距離感

街へ出てきた4人は馬車を降りて歩きながら散策をした。

マリアは王宮に閉じ込められているようなものだから、こうして友人と街を歩くのは初めてだった。贅沢を言えば その初めてをアレクシス王子殿下と過ごしたかった。


「あの…先程の話ですが、アレクシス王子殿下とアシェリ様は本当にと婚約されていないのですか?」

「ああ、本当だ。アシェリ嬢はお茶会なども王家主催のものにしかお出にならないので、殿下自身もお会いしたことは数えるほどだ」

「極度の恥ずかしがり屋みたいだよ」


「…、おかしいわね、今頃は婚約している筈なのに…」

「えっ? 何だって?」

「いいえ、なんでもありません」


「あの、アレクシス王子殿下はアシェリ様とご婚約するのですか?」

マリアはフルフル震えてそう問いかける。

だが、側近は王子殿下のプライベートを口にするわけにはいかない。

「さあ、殿下の結婚についてはご本人の意思は関係ないからね。王家がどう考えるかだ」

「そ! いきなり明日 ◯◯と結婚しろ!と言われたらそうするのが貴族ってものだ、殿下であれば当然 水面下でお偉いさんたちが決めてる。殿下は発表されるまでご自分が誰と結婚するか知らないかもな」

「そんな! 可哀想だわ!! 結婚は愛する人とするべきだわ!」

「はっ? 何を言っているのか分からない。結婚は家と家との繋がりだ。自分で結婚する者を選ぶなどあり得ない。剣だって自分で鞘は選べない。最初から決まっているものと収まるところに収まるものだ」

「ああ、そうか マリアは元平民だから感覚が違うんじゃない? 俺も聞いたことあるよ、平民は街とかで好きな者同士で結婚したりするって」

「それは本当か!! はーーー、変わっているのだなぁ〜」

「まあ、平民では許されるだろうが、殿下においてそれはないな。まあ、殿下もお立場上、理解している事だから気にするな!」

「酷いわ!! ハワードもヒューゴも殿下のお友達なのに冷たいわ!!」

「? 友達? 我々は友達ではない、臣下だ」

「ああ、そうだ 臣下だ」


「ああああああ、アレクシス王子殿下が可哀想! 誰も友達がいないなんて! こんなに身近にいる人たちすら友達ではないだなんて!!

やっぱり私だけがアレクシス王子殿下を理解して差し上げられるのだわ!」

「そうよ、私が言った通りでしょう? 頑張ってマリア!」


「? あははは 面白いね2人とも」

「マリアは殿下を思いやって優しい子だな、剣の鍔みたいだな」

「冗談がすごい面白い!」

「ああ、やはり冗談か…、引っかかってしまったな。剣でもよくフェイントに引っかかる。まだまだ鍛錬が必要だな」


「そう言えば セルティスってどうしていつも無表情なの?」

「さあ、別に男なんて普通あんなものだろう? なあ?」

「ああ、普通だな。男同士笑顔でなんて気持ち悪いしなぁ。一緒に何かする時もあんな感じだし、私たちは友達として一緒にいる訳じゃない、殿下の側近としてやるべき事をする それだけだからな?」

「ああ、それ以上でも以下でもない。剣を振り上げたら下ろす、至極当然のことだ」


「寂しいね」

「寂しい? 何故? よく分からないな、職務とはそう言うものだが?」

「マリア まだ皆暗闇に囚われているの、マリアが救ってあげて」

「ええ、カミラ私頑張るわ」

マリアたちは皆でクレープを食べお店を回り、カミラが言うままに進むと可愛い雑貨屋さんを見つけた。早速お店に入ると女性が喜びそうな可愛いもので溢れていた。

その中でミサンガみたいな糸で編まれた腕輪を見つけた。それを皆でお揃いで身につけたい!とマリアが強請るとヒューゴが買ってくれた。


アレクシスは青・黄緑・白の組紐

マリアは花模様でピンク・赤・オレンジの組紐

セルティスはターコイズ・白の組紐

ドナルドは紫・紺・赤の組紐

ハワードは水色・黒の組紐

ヒューゴは黄・橙・赤の組紐

カミラは緑・黄・白の組紐


それを購入し満足して帰った。

実は この組紐はアイテムだ、これを身につける事で結束が強くなりよりマリアを愛するようになるのだ。店の前でカミラとは別れ、3人は寮に送って帰って行った。



ドナルド・オースティンはアシェリ嬢について調べていた。

お茶会で見かける彼女は地味で目立たずいつも兄ステファンの腕に隠れている。

通常の公爵令嬢となれば高慢な令嬢が多い、まあ令息も同じだがマウントをとってどちらが1番かを知らしめる。だけどアシェリ嬢はいつも黙っている…、ひと段落するとそっとその場を離れ1人でいられる場所に移動する、すると何処からともなく侍女が出てきて膝掛けと本を渡す。侍女と護衛が密かにアシェリ嬢を隠し、ひっそりとそこで読書をしている、そして頃合いになると何事もなかったかのように兄の横に立っている。

いつだったか本を読むのにその髪は邪魔ではない? そう声をかけたくなった。だけどアシェリ嬢の姿は侍女によって隠された。アシェリ嬢が髪を耳のかけたかどうか分からなくなってしまった。

この国の最高権力者の娘でありながら穏やかな性格のアシェリ嬢は、令嬢に囲まれて罵られても決して反論したりしない。そんな時 髪の内側ではどんな表情を見せているのか気になる。彼女を守ってあげたいな、そう思った。顔も知らないけど、きっと優しい人だと思うから…。だからマリアの発言は心の中では許せなかった。アシェリ嬢は私のものではないから私が言うのもおかしいが、いつも何かあるとアシェリ嬢のせいにするマリアに不信感を持った。 なんの証拠があって言っているのだ!! そう言えたらどんなに楽か。

先日のお茶会ではセルティスととても親密そうに見えた…どんな関係なのだろう? 

私もセルティスのように彼女を直接守る事ができればいいのに。


元は打算でガーランド公爵家の令嬢に近づきたかったのだが、ドナルドもすっかりアシェリに夢中になってしまっていた。




そのアシェリはと言えば、漫画喫茶で人気投票を行っていた。

ドースン商会の方でも購入者にアンケートという形で協力を求めた。

最初は皆面倒がったが、人気があるキャラクターだけグッズやアイテムを作ってみようか検討中というと、挙って協力してくれた。

そのランキングを漫画喫茶とドースン商会に張り出した。

作品◯◯の キャラクター◇◇ △△票

◯月×日現在 ランキング形式で貼り出すとファン心理か、金銭的余裕があるものは更に購入して推しメンに投票をした。

ムフフ いつの世もファン心理とは同じもの


そして結果発表

まずは自分の推しキャラがいるかいないかのチェック、その次に自分の好きな作品がランクインしているかのチェック、知らない作品のチェック。

知らない作品は『私が推す作品が1番だ!』と思いながらもどんな作品が上位に入ったかのチェックし、購入ないし漫画喫茶で読んでくれた。そして仲間内で推し談義。良き良きこれぞコミュニティの利。漫画・小説愛 深めていこーぜ! すちゃっ!


そしてアシェリは人気のある作品の傾向と対策。

今人気のコミック、小説などポップ形式で貼り、『要望箱』を設置すると、様々な意見が集まるようになった。

これが人気あるならあれもいけるんじゃね? と夜な夜なネクストブレイク作品を描きあげていく。それと同時に人気キャラのアイテム&グッズ作り!


『聖剣の誓い』の主役の剣は男女ともに人気だった。そこでデザイン画を渡してそっくりに作って貰った。限定100本結構なお値段がしたが まあ売れ残ったら収納空間に入れておけばいいやって感覚で気軽に作った。流石ガーランド公爵家の悪役令嬢 ふふ。


意外なところで『ラブリーハート マジックワンダー』は女の子が正義の使徒となって、悪と戦う話なんだけど悪ふざけで人気キャラの変身した時のミニスカートのけしからんコスプレセットを作ってみた。まあこの世界じゃ叱られちゃうな、と思いながら 更に悪ノリ この世界の下着といえばコルセットだが、ブラジャー&パンティも作ってやったったい!

こちらも限定100セット! ふー、これもフルセットでかなりのお値段…誰も買わなかったら大赤字! でもいっか! 私お金持ちだし!


これだとお金持ちしか買えないグッズになってしまったため、作品の中で誕生日プレゼントに買ってくれたピアス、寒い日に彼の大きな皮の手袋をはめた…皮の手袋、靴擦れの彼女を背負って手に持ったハイヒールのハイヒール、2人の誓いを込めたネックレスなどなど。


まあそんな感じで上位5作品でアシェリの独断と偏見で勝手にアイテムやグッズを作った。

それをドースン商会で販売する宣伝を人気1位のキャラクターでポスターを作った。

ああ、この世界…著作権とかなくて良かった。あ、その前に丸パクリしてたんだ。テヘペロ

作者の方たちすみませんでした!! でも異世界だから許してちょ。


ポスターを貼った日から問い合わせがひっきりなしに来ると言う。

具体的にはハイヒールは自分のサイズに直してもらえるか、など。まあ全部限定品でキャラクターの使用しているものと言う設定なので、個別の変更は出来ないと伝えた。それでも毎日価格のチェックに来るらしい。履くことはできないけど欲しいと言ったところだ。

いーーーね! 限定グッズ…魅惑の響き。

さあ、オタクの世界へいらっしゃ〜〜〜い!



あっ、そうだ。お父様から薬の調達の事で呼ばれてたんだ。

「お父様アシェリです、入っても宜しいですか?」

「ああ、入りなさい」


「はい」

「かけて。早速なのだがいくつか話がある。

まずサザーランド地方から始まった原因不明の病の件だが、アシェリが懸念していた通り、マリアに回復魔法をかけて貰ったがその後再び体調を崩してしまった。

そこでパードック侯爵に薬の話をした。今回の件は鉱物の毒が原因かもしれない、だから解毒薬と痛み止めを見つけてきた。だがこの薬での正直なところ効果に確約は持てない。

その上 もし原因が鉱山にあるとなれば、閉鎖し流れ出した毒の汚染を解消しなければ今後も病は治まることはないだろう、とね。

そこでパードック侯爵は10人を無差別に選んで薬を処方した、アシェリが用意した解毒剤と痛み止めだね。1週間もすると全員解放へ向かったらしい。自分たちでも別のルートの解毒薬を処方してみたがあまり効果がなかった、そこでもっとうちの薬を調達して欲しいと頼まれた。

アシェリはどうしたい?」

「念の為 薬は2000人分ほど用意はしてあります。実のところ 当初はドースン商会を通して売るつもりでした。ですが、ドースンさんが狙われ危険になる気がして…、それが怖いです」


「そうだね、間違いない この薬は危険だ。ただパードック侯爵には口止めはしたが、私から手に渡ったものだ、それをドースン商会で売れば必然的にドースン商会とガーランド公爵家の繋がりは隠せなくなる。

ふぅー、聞いたよ…お前から見せてもらった物語りとかなり似通うことが起きているようだね。側近の名はセルティス以外は全員一致したとか。信じ難いがやはりそう運命が動くと言うなら、薬はドースン商会から切り離すべきだ」

「はい、そう思います。切り離したとして私が作らなければ誰も作れませんし、隠しやすいかもしれません」

「ふっっふっふ。では薬関連は別会社を設立しそこを通して売ることとする」

「危険になると思うので警護はしてやってくださいまし」

「心配ない。それと別件だが、お前に縁談が山のようにきている」

「はあ…、『陰気な幽霊令嬢』でも気になさらない方が多いのですね?」

「あはははそうだな。それを差し引いてもガーランド公爵の娘は手に入れたいと言う事だろう。他国からも随分ある、 一度会いたい、婚約したい、結婚したいときている。

この件はどうする?」

にこやかに笑ってはいるが目の奥は見極めるように見据えている。


「そうですね。このままではお飾りの妻でもいいとガーランド公爵家の権威を求め、どなたかと婚姻を結ばなければならなくなると思います。そこでなのですが、セルティスお兄様と婚約したいと思います」

「セルティスか。名前だけ婚約者としておくつもりか?」

「違います。正直 断罪され処刑もしくは国外追放となった場合、お相手の方に迷惑をお掛けすると思うと どなたかと縁を結ぶ気になりませんでしたが、結界魔法が発現したと王家に知られた以上、王家が私を捨て置いてくれるとも思えません。私は生きる事を諦めたくない、王宮で幽閉などごめんです。ですからその為にセルティスお兄様には私の犠牲になっていただきます。処刑では無理ですが、国外追放の際は追放先にもついてきて貰おうと思います。そして生涯私の傍にいて頂くつもりです」

「ふっ! 傲慢だな、気に入った。セルティス入りなさい」

「はい」


「聞いていたかい?」

「はい、聞いておりました」

「セルティスの意見は?」

「生涯をアシェリ様に捧ぐ覚悟はとうに出来ております。謹んでお受け致します」

「そうか、スタッド伯爵 我が娘と婚約を結んで欲しい」

「はい、ガーランド公爵家の珠玉を生涯慈しみ護るとお誓い申し上げます。心より有難う存じます」

「善は急げ、書類は揃えてある。もう逃さないぞセルティス」

ウィンクする。それに笑顔で応えるセルティス。

セルティスは4歳でこのガーランド公爵家に来て以来、厳しくも優しい公爵を密かに父のように慕っていた。そのガーランド公爵家も一員になれることが心から嬉しかった。そしてアシェリが自分と生涯一緒に居たいと言ってくれたことが何より嬉しかった。


この日正式にアシェリとセルティスの婚約が整い、国に書類が提出された。

そしてその情報は瞬く間に広がった。

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