ささやくラジオ
最近、ラジオに嵌まっている。聴きはじめると楽しすぎて他のことが全然手につかなくなってしまうくらい面白い。
一日の終わり。今日も眠るまでの束の間、蒲団のなかでラジオをたっぷり楽しむぞ~♪
数日前、家電量販店でたまたま見かけた手のひらサイズの小型ラジオ『プチラジ』を衝動買いした。
ラジオを使ったことなど今まで一度もなかったのに、見た目の可愛さに釣られてつい買ってしまった。
せっかく買ったのだから使わなければ勿体ない、ということでさっそくラジオデビューをしたのだが、まさかラジオがこんなに楽しいものだったなんて、まったく知らなかった。
プチラジはイヤホン着用でも楽しめるが、お薦めは手で本体を握って耳に当て、スピーカーから直接聴くスタイルだ。
携帯電話を使うときと似たような感じかな。
こうやって聴くと、ラジオが脳に直接囁きかけてくる感じがして、没入感が段違いなのだ。
トーク番組でも歌番組でもニュースでも、聴くのは別になんでも良い。とにかくプチラジから出る音を聴ければそれで良い。
しばらく聴いていると、頭がぼんやりしてきた。
来た来た、ここからが面白いのだ。
手を見る。指が5本生えている。指先がムズムズしはじめる。じっと見ていると、指先から小さい指が5本ずつ、ニョキニョキと生えてきた。
更にその生えてきた指の先からも指が生えてくる。
わはは。なんだコレなんだコレ。
右手の指が125本になってしまった。しかもその1本1本が、ちゃんと僕の思い通りに動く。すげ~。
あ、でもこの場合、指は155本と数えるべきかしら。難しい問題だ。
「ちょっと鋭人、またラジオ聴いてんの?」
この声は、市子。僕の愛する恋人の市子!
市子の顔を見る。じっと見る。市子の口が開き、中から舌が何本も伸びてくる。
わははははは。市子ヤバイ、市子ヤバイ。
「ボエ~。レロレロボエ~」
なんか言っているみたいだが、分からないよ市子~。
ホント、ラジオは面白い。こんなに面白いってこと、今まで誰も教えてくれないんだもんなぁ~。
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数日後、『スピーカーから意図せず特殊な超音波が出ることがあり、脳に想定外の影響を与える可能性がある』という理由でメーカーによるプチラジ回収がはじまった。
もちろん、回収要請に応じる気は全くない。