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塩と蜂蜜と珈琲  作者: 働き蜂4号・リリー
7/13

遡って、現代

令和の時代は、きっとあとから見たら、過渡期だったのでしょう。

多様で多彩な文化を享受しているようですが、迫り来る危機への警戒を恐怖と感じている人は少なからずいたのかもしれません。

さて、すこし時間を遡ります。


綾子の祖父の時代は、地球温暖化が回避できるかどうかのギリギリの時でした。


その頃の大都市の水族館は、ビルの屋上などに作られたりしていますが、1mもある高透過の樹脂で作られた水槽もありました。


その水槽の製造メーカーの持つ技術は、海底での建造物の汎用性のある素材を提供できると注目されていました。


また、脱炭素のエネルギー供給に、海流のエネルギーを電力に変える技術が大きく貢献します。


海水や汚水から清潔な純水を作る技術も確立していました。


土壌に依存しない農作物も実用の段階でした。


過ぎてみれば、そんな過渡期にあった時代ですが、人々は毎日の生活に追われ、多様化した文化を趣味として生きるのが精一杯で、長期的視野を持つ人は意識のある指導者や天啓を頼りにできる宗教的な背景を持つほんの少しのグループに限られていたようです。


綾子の祖父は、幸いに良い友人に恵まれて、幸福と不運が混在する混迷の時代であっても、多趣味を隠れ蓑にしつつ、やがて実現するはずの共生の世代への憧れを失わずに生きていました。


まあ簡単に言えば、お金儲けは下手なんですが、なんとなくみんなと楽しく暮らしていたそうです。


その友人の中には、テレビでドラマ化しようと誘われたこともあるほどの感動的な人生を歩んだお医者さんもいますし、歌うことが大好きで、いつの間にか周りにたくさんの音楽家や芸術家が集まるようになった転生の女神のような歌姫もいました。


その3人が、珈琲を飲み、貴重なニホンミツバチの蜂蜜を舐めながら、まだ沈下していないコロナウイルスの予防のために時短営業している店舗のひと部屋で、雑談をしていました。


ひとりは人類に必要な癒やしを胸の内に思い、ひとりは天地創造の万物の精緻さと美しさへの感動を心に貯めつ秘めつつ、ひとりは自分の生き様を穏やかに人々と共有することが、文化と文明を更新していく大事な手掛かりになることを潜在的に自覚しながら。


良き塩は人生の旨味を活かし、優良な蜂蜜は活力と自衛のための免疫をもたらし、鮮度の良さが保証された珈琲は、ただそのままで憩いのための息吹となるように。


三人三様の文化的生き様があると、時短営業の店のマスターがその指先で独り言ちているのを目撃した人はいないけれど。


設定が架空の人物なので、綾子さんの祖父の友人として、実在の人物を登場させるのに無理が生じていますが、まあ、いずれそのうちに。

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