こんどこそようこそ、『ひみつのひろば』へ
二人が木から降りると、そこには子どもたちが勢ぞろいしていた。どうやら二人で隠れていた人は最後だったらしい。
そして。
その中心にいたのは、あの二人。
――『さっちゃん』と『みっちゃん』だ。
吸い込まれるように、誘われるように、都尋が二人に近づく。それを見た歩花は慌ててそのあとを追いかけた。
「かくれんぼ、たのしい?」
問いかけたのは、おかっぱの少女。
「うん。仲間に入れてくれてありがとう」
答えたのは、都尋だ。
「ねえ、いくつか、訊いてもいい?」
質問で返した歩花に、二人は揃って首を傾げる。
「……なあに?」
「どうしてここには、出口がないの?」
「でぐちなんて、ひつようある?」
「いらないからないんだよ」
不思議そうな表情を浮かべた二人が、交互に答えた。
「……じゃあ、どうして空が燃えているの?」
「かんたんだよ」
おさげ髪の少女が微笑を浮かべた。
「――おとながだれも、けしてくれなかったからにきまってるでしょう?」
笑っている、はずなのに、目は笑っていない。
「だから、だれももえない、くるしくないばしょがひつようだった」
言葉を継ぐのは、おかっぱの少女。彼女もおさげ髪の少女と同じ表情だった。
「おとなはだれもたすけてくれなかった」
「だから、いらないの。このばしょはこどもだけの『ひみつのひろば』」
「だけどあゆかは、このばしょがすきじゃないみたい」
「へんなばしょだっておもってる」
「わたしたちをここから、おいだそうとしてる」
「あゆかもここから、でていこうとしてる」
「このばしょがきらいなら」
「このばしょをこわしたいのなら」
幼子二人は、どこまでも深くよどんだ闇を目に宿して、同時に一言。
「あゆかが、きえてしまえばいい」
広場を囲っていた木々が、その身をよじって隙間をひとつだけ作り上げる。
その先で、ちろちろと炎が舌なめずりをした。
「あゆかと、あゆかをここにつれてきた、ゆきの」
「ここをこわすことは、ゆるさない」
二人の言葉と同時に、炎が蛇の舌のようにうねり、歩花とゆきちゃんのことをしっかりと摑んだ。
「――えっ?」
「ごめんなさい、さっちゃん、みっちゃん、たすけて――」
歩花の戸惑いも、ゆきちゃんの悲鳴も、幼子二人には届かない。
歩花とゆきちゃんは、炎の海に飲みこまれ、消えていった。
木々が、再び広場を隙間なく埋める。
炎は、どこにも見当たらない。
「みひろ、こわがらせてごめん」
まず口を開いたのは、おかっぱの少女。
「だいじょうぶ?」
首を傾げたのは、おさげ髪の少女。
「――うん、だいじょうぶ!」
弾む笑い声で応えたのは、明るく無邪気な幼子。そこにいたはずの大人は消え、その代わりにスモッグ姿の子どもがいた。あどけない表情には、都尋の影が見える。
いつの間にか、都尋が幼稚園児になっていた。
「みひろ、こんどこそようこそ、『ひみつのひろば』へ」
「ここでみんなと、ずーっとかくれんぼしようね?」
「もっちろん!」
都尋の答えに、満面の笑みを浮かべるさっちゃんとみっちゃんの目が、ようやく、笑った。
幼子二人は、姿をふっと消して。
「みひろちゃん、よろしくね!」
「あたらしいなかまだーっ!」
都尋の周囲に、十二人の子どもたちがわらわらと集まってくる。
その中には、どこかで会ったことのあるような気がする子たちもいた。
「なおはね、よこせきなおっていうんだ!」
「わたし、ほんだはるか! はーちゃんってよんでね!」
「ああ、あたしにもしゃべらせてよーっ。わたしは、いけがみあすか!」
口々に自己紹介してくる仲間たちに、都尋は頭がこんがらがりそうな気がした、けれど。
――これから、ゆっくりおぼえれば、いいよね。
そう思って、大きな声を張り上げた。
「――みんな、かくれんぼのつづき、やろうよ!」




