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ヘルモードの異世界をもう一度  作者: チャラン
第三章 異世界救済生活・探求(前編2)
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第八十一話 所作とのギャップ

「素晴らしいですね。一日で体得してしまいましたか」

「いや、イットウサイ先生のヒントがなければ掴めなかったと思います。こんなに自分に粗さがあるとは考えていませんでした」


 自分のイメージ通りの動きができ、俊也は嬉しそうである。彼に話しかけたユリは、一日で大きく剣において水をあけられた気がしたが、それは別にして俊也の成長を喜んだ。


「ユリさんにも助けられました。ありがとうございます」

「私が……ですか? 何もしていませんよ?」

「いえ、試合をした時のユリさんの剣技がイメージの参考になったんです」

「そうなんですか……。あの一試合だけで……」


 俊也の剣才は既に認めているユリであるが、まだ正確な彼の素養、素質を見誤っているとその一言から感じ、己の未熟さを恥じている。俊也はまさに剣の申し子と言えるだろう。その様子を見ていたイットウサイが二人に近づき、特に表情を変えることなく俊也に言葉をかけた。


「掴んだかい。君ならこのくらいの時間でそこまで到達すると思ったよ」

「はい。ここまでは来れました。この後のご指導をお願いします」

「うむ。次は鈴を付けたままで所作も粗さをなくしていって欲しい」

「一日中この鈴を付けて……ということですね?」

「そうだ」


 竹剣を持ち鈴を付けた稽古はユリもしたことはあるが、一日中それを付けていたことはない。そのため、イットウサイと俊也のやり取りを見て、彼女は若干呆気に取られていた。


「さて。日も暮れてきたな。腹が減ったろう? 稽古はここまでにして飯にしよう」


 稽古初日の俊也をねぎらうと、イットウサイは俊也に一つ手本を見せるように、真に無駄のない所作で歩き、一段高い教台に上がると、


「今日はここまで!!」


 本館全体によく通る、それでいて大きすぎない声で稽古の終了を告げた。




 チリンチリン…………。


「素振りはいいんだけど、所作までになると難しいなあ」


 稽古を終えた後、俊也は食事の支度を手伝うため魚を炭で焼いている。それはいいのだが、日本でいう団扇のような風起こしであおぎながら火を調整していると、鈴がチリチリなって仕方がない。野菜を包丁で切りながら、それを可笑しそうに見ているユリの姿も傍にあった。


「こう言ってはいけないんでしょうけど、可愛らしいですね」

「俺がかい?」

「そうです。剣を握っている時とは別人のような……」

「そうかあ、何ともなあ……」


 その後も付けられている鈴に悪戦苦闘しながら俊也はユリと食事を作った。そんな俊也を見ながら手慣れた包丁で調理しているユリは終始幸せそうな微笑みである。

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