第六十六話 ハイオーク
一晩よく眠った討伐隊はマズロカから少し南、広葉樹が広がる山麓の森へ向かう。やや深いこの森に、オークの根城があることが分かっている。天気は昨日より悪くなり、曇天が朝から広がっていた。
「さてと……。ここまで来たわけだが……」
「あれがオークですか……。とすると、あの建屋にはハイオークが?」
俊也が言っているのは、元々はマズロカの村人が木の伐採を行うために使っていた数軒の建屋のことなのだが、オーク達に奪われ、連中の拠点となっている。その周りに数匹のオークが辺りを窺うようにウロウロしていた。
「建屋の中にいるだろうが、いるのは一番奥のだろう。ここにいるオークを叩き斬った後、出てきやがるはずだ。連戦になるぞ」
「分かりました。行きますか?」
「よし! みんな! 行くぞ!!!」
テッサイの号令に討伐隊は皆呼応し、一斉にオークの根城へ斬りかかって行く。俊也はセイラから貰った守護符がしっかり貼り付いているか胸を一つ撫で、その後すぐ刀を抜いて皆の後に続いた。
見回りのオークがいるとはいえ、完全にこちらの奇襲である。虚を突かれた見回りオークは慌てて建屋に詰めている他のオークたちを呼びつつ、大木槌で討伐隊に応戦している。知恵と力があり、団体行動がとれるため、今までの相手とはやはり違う。見回りオークの2匹が善戦している内に、建屋詰めのオークがこぞって出てきて、そこからは乱戦になった。それでもこちらは精鋭10人である。今のところ戦況は優勢ではあるが、思いの外、手こずっている。
「これは埒が明かねえ! 俊也! 皆にここは任せて俺たちはハイオークをやるぞ!」
「はい! 道を開いて奥へ行きましょう!」
そうは行くかとオークの一匹が俊也とテッサイの前に立ちふさがったが、二人は素晴らしいコンビネーションを見せ、ずんぐりとしたモンスターの体を二太刀で斬り伏せている。
奥の建屋の前まで進むと、騒ぎに気づいた首領のハイオークが、取り巻きの二匹のオークを連れ臨戦態勢で既に外へ出ていた。非常な巨体で、豚に似たふてぶてしい顔をしている。鋼鉄製のウォーハンマーを得物としており、まともにその打撃をくらったらひとたまりもないだろう。
「なんだお前ら!? 俺に喧嘩を売りやがって、死ぬ覚悟はできてるんだろうな!!」
「うるせえ! 悪さばっかりしやがって! お前を退治に来たんだ!」
「ほぉ~~、俺をか? 笑わせやがる。いいだろう、こいつですぐ叩き潰してやる!」
ハイオークは全くこちらを侮っているが、それを隙と見た俊也は先をとり、持ち前の瞬発力で距離を一気に詰め、巨体の胴目掛けて刀を逆上袈裟に高速で振った!