第五十二話 辛勝
大口を開けたアイスドラゴンの噛み砕きを、俊也はとっさに身を引いてかわす! しかし、完全には避けきれず肩にあてがっている鋼鉄のプロテクターに鋭い牙を受けてしまった。プロテクターは攻撃により弾き飛ばされてしまい、俊也は肩を負傷した。防具の頑丈さが利いたおかげで刀はまだ振れそうだが傷は浅くもない。
噛み砕きで態勢を崩しているドラゴンに、テッサイが間髪入れず剣を振り下ろす! その剣は俊也が攻撃した首に食い込み、アイスドラゴンが受けた傷はさらに深くなった。ほぼ致命傷とも言えるが、ドラゴンはかろうじてまだ動ける。だが動きは鈍く、様子を見る限り意識もはっきりとはしていない。
アイスドラゴンは死が近いながら鈍い動きで鉤爪を使い、俊也を必死に攻撃している。俊也も負傷はしているものの、それをかわせないものではない。鋭い大爪をかわし万全の態勢を取った後、ファイアブレイドに力を込め、アイスドラゴンの首をとうとう斬り落としとどめを刺した!
「やったな! 俊也!」
「はあはあ…………。危ないところでした……。俺もまだまだ鍛錬が足らないな……」
肩に受けた傷の痛みと緊張感が解けたことから、俊也はその場に片膝をついた。顔色も良くなく脂汗が出ている。まずいと思ったテッサイは、すぐに魔法のリュックからポーションと傷薬を取り出し、俊也の手当を急いだ。応急処置で体力と傷はある程度回復し顔色も良くなったが、傷はこの処置では治りきらない。洞窟を出てジャールの町で治療する必要があるが、とりあえず普通に動くのに支障がないほどにはなることができた。
「ありがとうございます。こいつを見て思う所はありますが……。この竜の首はリュックに入れて町のギルドへ持っていきましょうか?」
「そうだな。こいつを持っていったらギルドの親父はたまげるぞ! 報奨金も相当な額をくれるはずだ」
「そうですね。その取り分は俺が3割、テッサイさんが7割でいいです」
「3割!? 少なすぎやしねえか!? お前それでいいのか?」
「テッサイさんがこの話を持ちかけてくれなかったら、この洞窟のことも知りませんでしたから。危ないところも助けてもらいましたしね」
「助けてもらったのはこっちの方なんだがな……。まあそれでいいならそうするか。何か思いついたら俺から埋め合わせはしよう」
「はははっ。それは大丈夫ですよ。それはそうと主は倒したけど、まだ御宝を見つけてませんね。もう少し探索してみましょう」
恐らくアイスドラゴンがいたこの近くに件の御宝があるはずだ。俊也とテッサイはアイスドラゴンの首を魔法のリュックに保管した後、大詰めの探索を続けた。