第五十一話 アイスドラゴン(小型)
ブラインドスネークを粗方斬り、瘴気の不気味な濃さを感じながら俊也とテッサイが進んでいると、空間が縦にも横にも急にひらけた場所に出た。光る苔の明かりも十分で周囲が見渡しやすい。だが、見渡した前方の先には、鋭くこちらを青い目で睨みつける洞窟の主が存在していた。
「とうとう出くわしましたね……。こちらに敵意剥き出しです」
「ああ、あからさまにな。こいつと戦うのが目的なわけだが……。やるか? 俊也?」
「はい。見るとあいつは小さいけど氷竜のようです。俺のファイアブレイドがここでも有効になるはずです」
「……クロギツネをそれで斬った時は驚いたぜ。お前そんな技も持ってるんだな」
「ディーネさんに教えてもらいました。とにかく俺が先方に立って盾になります。テッサイさんは後方からあいつの隙を見て戦って下さい」
打ち合わせを手早く終わらせ、俊也とテッサイは先後を入れ替わり、こちらへ敵意しか持っていないアイスドラゴンに近づき始めている。小型とはいえ二人の身長よりは胴一つ分ほど高く大きい竜だ。牙も鉤爪も鋭く、これらで攻撃されると装備している防具が役に立つかどうか分からない。
慎重に間合いを詰めながら二人は近づき、俊也はファイアブレイドを作り出した。苦手な炎を見てアイスドラゴンは一瞬怯んだがそれも少しのことで、体を奮わせアイスブレスを俊也へ向かって吐き出した!
(これは!? 受け切るしかない!)
刀にまとわせた炎を盾にし、俊也はアイスブレスを必死で受け切る! 炎を消されないように魔力を集中して使い、なんとか攻撃を受け切ることができた。ブレスを吐き終わったことでドラゴンにも大きな隙が見える。それを逃さず後方にいたテッサイは一気に駆け寄り、アイスドラゴンへ渾身の一撃を放った!
「グガアアアァァァァ!!!」
「効いてるが硬えなあ! おい!」
手応えは十分だったが、硬い皮膚で守られたドラゴンの体は致命傷を受けていない。小手先の生半可な攻撃ではダメージを与えられないとテッサイは即座に判断し、バックステップで距離を取り剣を構え直した。アイスドラゴンは傷を負わされたテッサイに向き直し、前足の鋭い鉤爪を振りかぶり引き裂いてくる! 剣を弾かれそうになりつつも、よろめきながらテッサイはその膂力をなんとか受けた。
注意がそれているのを見て、俊也はファイアブレイドでアイスドラゴンの側面から首を狙って斬った! 確かな手応えで炎の刀は硬い竜の首にしっかり食い込んでいる。致命傷に近いがアイスドラゴンはまだ動ける。死に物狂いの竜は俊也の頭を猛然と噛み砕いてきた!