第四十八話 ジャールの洞窟・1F
ランプ付き帽子の明かりを頼りに暗い洞窟を進んでいく二人……。広がりはかなりあるが、程なく入り口から差し込む外明かりも見えなくなった。俊也は冒険心に胸躍ると共に、若干の不安もやはりある。
「気を抜くなよ。この階層にもモンスターがいるはずだ。どういうのが出てくるか分からねえがな」
「二手に広がって戦えるくらいの空間はありますが、群れでモンスターが出てくると手こずりそうですね……」
「そういう可能性はあるな」
注意深く辺りを観察しながら俊也とテッサイは進んでいる。テッサイは傭兵ながら冒険の心得もあるらしく、こういったダンジョンに入った経験がある。テッサイが先頭に立ち歩を進めており、俊也は時折、テッサイに指示をもらいながら注意深く周りを見ていた。
「テッサイさん!? あそこで何か動いていますよ!?」
「だな……。得物を抜いて近づいてみよう」
洞窟内には所々、俊也の膝より少し高いくらいの岩が転がっている。明かりを頼りに俊也はそういう箇所をよく見てみると、素早く動く小さな影が確認できた。その影はこちらを窺っているようにも見える。二人は得物を構え、態勢を作って影が潜んでいる岩に近づいていくと……
「ギャギャギャ!!」
奇っ怪な鳴き声を発し、その影は俊也に飛びかかってきた! 俊也は即座に反応し、手首を小さく鮮やかに返して刀で影を斬った。絶命した小さな影は地に落ち、横たわっている。周りに油断なく気を配りながら死骸を確認すると、黒い毛を持った狐のようでその歯は鋭く口が大きい。
「クロギツネというやつだ。ラダなんかよりかなり素早いぞ。まだいるはずだ」
「はい。死角を作らないように進みましょうか」
一匹いたということはクロギツネが群れでいる可能性が高い。俊也とテッサイは息を合わせてどの方向にも対応できるように、態勢を取りながら少しずつ進んだ。はたして、クロギツネの眼光が進行方向に数多く光り、そこからは乱戦になった!
「ウオオオッッッ!」
俊也はファイアブレイドをすぐに作り出し、炎に怯んだクロギツネを3匹瞬く間に斬った! テッサイもその隙を見逃さず、2匹を剣で斬っている。残りは5匹、炎に怯み先手を取られたクロギツネの群れだったが、残りは死に物狂いで二人に向かってくる!
(速い! 狙いがつけにくい!)
小柄な体躯で素早く飛びかかってくるクロギツネに二人は一旦防戦気味になっていた。いつの間にか多少のかすり傷も負っている。それでもしばらく見るうちに動きを見極めることができ、狙いをよくつけ一匹一匹斬り伏せて退治し事なきを得た。
「危なかったな」
「ええ……。地上のモンスターとは一味違いますね」
これでこの階層での一応の安全が確保できたようだ。俊也は魔法のリュックからポーションを取り出しテッサイにもそれを渡すと、かすり傷を回復させてからさらに奥へ進んだ。下の階層に続く階段を発見し、二人は次のフロアに向かう……。