第四十六話 ダンジョンは危険だけど……
「ユリアさん。ジャールにはすごいお宝が眠っているダンジョンがあるらしいですね」
「ああ、あの洞窟のことね。山の麓の木材切り出し場の近くにあるわ。あなたトレジャーハンターなの? そうは見えないけど……」
「いえ、俺は商団の護衛として雇われている者です。横にいるテッサイさんもそうですよ」
「ふーん。横のおじさんは見て納得できるけど、あなたは可愛いしかなり若いからそう見えないわね」
「だからおじさんじゃねえって!」
おっさんおっさんと言われるのを、そこそこ必死に否定するテッサイを見て一同に笑いが起こる。この調子ならダンジョンについて、詳しい話が聞けそうだと考えた俊也は会話を続けた。
「お宝も気になりますが、なかなか手ごわいモンスターも出るらしいですね。腕試しに入ってみたいんですが、詳しい行き方を教えてくれませんか」
「……この町の周りにいるモンスターより強いわよ。心配ね……。知りたいなら一応行き方を教えてあげる。町の北側の外れに木材切り出し場があるの。そこから少し西へ山林を入った所の山の麓に洞窟の入り口があるわ」
「おー、そうやって行けばいいんだな。サンキュー! ユリアちゃん!」
俊也が礼を言う前に、テッサイが明るい調子でワインを飲みながらユリアに感謝の返事をしている。木造の酒場の雰囲気は、相変わらず和気あいあいと良いものだ。
「行って宝物を探しても、モンスター退治をしてもいいけど、命を落としたら絶対ダメよ。けっこうな冒険者が洞窟の中に入ってて、亡くなっている人も多いんだから……。それに最深部には、洞窟の主になってるすごく強いモンスターがいると言われているわ。気をつけるのよ」
「なるほど……。ありがとうございます。これは気を引き締めないと……」
「俊也さん……。本当にそんな危ない所に入るんですか?」
(今持ってる俺の力を試したいんだ。それに、このダンジョンのモンスターが倒せないようじゃ、どの道タナストラスは救えないし)
サキが心配そうに見つめてくるのを納得させようと、俊也は小声でそうささやいた。それで納得はできたサキだったが、心配で不安そうな顔は戻っていない。ともかくダンジョンについて有益な情報は貰えた。俊也たち三人は、その後もうしばらく酒場でくつろぎ、ユリアとも他愛のない話を交え、店を後にしている。
三人はかなりあれこれ飲んだり食べたりしたはずだが、酒場での代金は三人合わせて50ソルだった。店を出る時にテッサイが「俺が誘ったんだしな、これくらい奢るさ」と、気前よく勘定を払っている。