第四十二話 ジャールの町へ商団の出発
ジャールの町までソウジの護衛をすることになった俊也だが、まだ一週間も時間がある。護衛の話を受けた翌日もゆっくり休養し、魔法の修行の疲れを完全に取った。その翌日はカラムの商店街に出て回復系の道具を買い込み、魔法のリュックにきっちりそれらを詰め込み遠出の準備をあらかた終えている。残りの日数は町の鍛錬場に出向いて、疲れが残らないように俊也は剣技を磨いた。
「サキもついてくるんだな」
「なんですか? 私が邪魔みたいに聞こえますよ?」
「いや……全然そういうわけじゃないよ。ただ、ちょっと心配だったんだ」
「ふふっ。ありがとうございます。でも、案外わたしが俊也さんを助けることになるかもしれませんよ?」
「そうかい? ああ……ラダをやっつけた時の回復魔法のことか。そうかもしれないな……」
ジャールの町へソウジの商団が出発する日になり、俊也は馬上の人になっている。馬に乗ったことなどない彼だったが、持ち前の運動神経と勘で用意された馬をすぐ乗りこなすことができるようになった。乗り方を教えていたテッサイも「さすがだな」と、非常に驚いたほどだ。もう一人の護衛であるテッサイも馬に乗り、商団の馬車の進度に合わせて歩を進めている。
上述の会話からになるが、なぜかサキも商団についてきている。俊也が護衛をするということで、彼女は父のソウジにねだったのだろう。強引に馬車へ乗ったようだ。商団を送り出す時、セイラも一緒に行きたそうだったが、教会の行事もあり、母のマリアをひとり残すことにもなるので長女らしく我慢をしていた。
「サキちゃんの言うとおりかもしれないな」
「どういうことです? テッサイさん?」
「俊也と一緒に護衛をする話を受けてから、お前に話をして誘おうと思っていたんだよ」
「へえ? なんでしょう?」
「ジャールの町にはちょっとしたダンジョンがあって、その最深部にはすごいお宝があるという話だ。だが、そこまでたどり着くのは難しい。結構な強さのモンスターがダンジョン内のあちこちにいるからだ」
「なるほど。大体話が見えてきました」
「そうか。じゃあ単刀直入に誘おう。腕試しにダンジョンへ入ってみないか? どのみち一週間はジャールの町で待つようになるからな」
俊也はしばらく馬上で体を揺らせながら考えていたが意を決し、
「分かりました。お宝にもいくらか興味はありますが、モンスター相手に腕試しをしてみたい気持ちが強いです。町に着いたら入ってみましょう」
と、剣の道を追い求める彼らしい承諾の返事をした。
「よーし、話が分かるぜ。それでいこう。だが、怪我をしてサキちゃんの世話になるかもしれないぞ」
「男の人って……。あまり心配かけないでくださいよ……」
話がまとまり、馬上で確認の腕合わせをしている二人を見て、サキは多少呆れ気味である。