第四十話 3日ぶりの家庭料理
晩御飯の時間まで俊也はぐっすり寝た。起きた時の頭はすっきりしていたようで、疲れもすっかり取れている。3日ぶりのダイニングに行ってみると、ソウジが既に座っていて俊也を待っていた。
「よく眠って疲れが取れたようだね。まあ座りなさい」
「ありがとうございます。いつの間にかこんな時間になっていました……」
ダイニングの窓から入る日差しもほとんど落ちている。明るさを補うため部屋の所々にあるランプに明かりを灯し、食事の用意を進めているようである。電気の明かりに馴染んでいる俊也には、揺らぐ火による明るさが幻想的に感じられた。
「魔法を習ってまた強くなれたんだね。親玉のリバースライムも倒したらしいし、あの川近くもこれで当分安全だよ」
「ディーネさんのおかげです。つきっきりで教えてくれましたから」
そう穏やかに談笑を続けていると、食事の用意を手伝っていたセイラとサキが、料理を盛った皿を運んで来てテーブルに置き始めた。俊也が教会に帰ってきたこともあり、ごちそうが並べられている。疲労している彼の元気をつけるため、魚や肉料理の皿が多くあった。
「3日もディーネさんと一緒にいたんですよね~。何か変なことされませんでしたか?」
「されてないよ……。それにしてもすごいごちそうだね。そういえば、ディーネさんは料理がとても上手だったよ」
「へえ~。意外ですね。そのおいしい料理を食べてたから、ディーネさんのことを嬉しそうに話すんですね」
「そういうわけじゃないって……」
サキは少し嫉妬を感じ、ふくれっ面気味だ。機嫌が悪い顔だが、それはそれで可愛らしい。セイラは何も言わず皿を運んでいるが、顔を見ると面白くないような表情が少し現れている。軽く怒っている姉妹の顔もそれぞれ乙なものだ。
「はっはっはっ! まあ許してやってくれ俊也君。うちの娘たちはどっちも君にご執心のようだ。だからあんな顔になるんだよ」
「どう返事をすればいいかわからないですね……」
「君は面白いな。堅物なのに罪な男だ」
そう言ってソウジは哄笑するので、俊也も苦笑いでもするしかない。そうこうする内に晩御飯の用意が整った。
「まあそれはさておきとするか。神竜ネフィラスに祈り、今晩の糧を頂こう」
マリアとセイラ、サキもダイニングテーブルに着いている。この世界で信仰されている神竜ネフィラスに加羅藤一家と俊也は祈りを捧げ、おいしい家庭料理に手を付け始めた。数個壁に掛けられたランプの火は静かに灯っている。