第三十九話 カラムの町は3日ぶり
激しい実戦を交えた荒行を終え、俊也はカラムの町へ3日ぶりに戻ってきた。門番に挨拶をし町に入ると、賑やかな往来がいつも通り見える。3日町を空けていただけだが、俊也は何とない懐かしさのようなものを感じていた。
「帰れたな~。さてと……教会に戻るかな。サキやセイラさんの顔もしばらく見てないような感じがするし……」
ディーネは「よく頑張ったわね。またいつでもいらっしゃい~」と、俊也と別れるのがやや名残惜しそうに、いつもの色気を振りまきながら自分の店へ既に帰っている。修行のためではあるが、3日間生活を共にした彼女と別れるのは俊也もいくらかの寂しさを感じた。そうは言うものの、タナストラスで彼が帰るべき場所はディーネの店ではなくサキたちがいる教会である。
初夏のそよ風を歩きながら感じ、俊也は我が家でもある教会に戻った。庭に咲いている竜節花の赤紫が懐かしい。この花の季節も終わりに近づいているが、なるべく長く咲くように花壇の手入れをしているサキとセイラの姿がそこにあった。
「ただいま。今帰ったよ」
「「えっ!? 俊也さん!?」」
甲斐甲斐しく竜節花の手入れをしている美人姉妹の様子を、俊也は一枚の名画を眺めるように見ていたが、しばらくして彼女たちに近づき帰宅を伝えた。サキもセイラも同じ声で俊也の方を向くと、喜びの笑顔で駆け寄り、俊也の手をそれぞれの柔らかい両手で握り取った。
「ご無事で帰られましたね……。心配していたんですよ?」
「よかったー。どこも怪我はないですか?」
セイラとサキそれぞれの性格が現れた心配の仕方をされ、美人姉妹が同時に抱きつこうとしてきたので、俊也は慌ててそれをちょっと遮る。3日ぶりのこんなやり取りも彼にはやや懐かしいものだ。
「体はどこも痛めてないよ。ピンピンしてる。火の魔法も修得できたよ。ただ、この刀をきっかけにして、刀身に炎をまとわせる魔法しかまだ使えないけどね」
「本当に3日で魔法が使えるようになったんですね。やっぱり俊也さんは救世主様です! さすがです!」
明るく素直に感心して褒めるサキの言葉に俊也は面映ゆかったが、「ありがとう」とだけ返事をした。その後、3日空けていた教会へ入りマリアとソウジの出迎えも受け、荒行の疲れを取るため自室のベッドで深い眠りを取っている。ここに帰ってきたのは昼下がり手前くらいの時間だったが、差し込む暖かく明るい陽も、疲労している俊也の眠りを妨げるものにはならなかった。