第三十八話 魔法の修行・総仕上げ2
俊也が親玉スライムの軟体を炎をまとった刀で激しく跳ね上げると、大きい薄青色で透明な塊が切り取られた。痛覚がなさそうな親玉スライムだが、もがくように体を動かし苦しんでいる。ただ、普通サイズのリバースライムのように一撃で仕留められはしなかった。
「!! ……酸が来るか!?」
体の一部を失った苦しみと怒りに奮い、親玉スライムは俊也目掛けて大量の酸液を吐きかけて来た! それを何とかかわしているが、広範囲に液を吐き出しているため完全には避けられない。俊也は左脚に酸液を受けてしまった。コーティングの中和があるため大事には至っていないが、コーティングの効果がなくなった同じ部分にまた酸を受けると、大怪我は避けられそうにない。
(危ない……!! 一気に方を付けないとやられる!!)
敵の強さを知り危地を悟った俊也は動きのスピードを上げ、立て続けに斬撃を2度放った。親玉の体はさらに切り取られ、青い塊が左右に鈍く重い音を立て落ちる。致命傷に近いダメージを負った親玉スライムは、動きが鈍っていた。そうでありながらも、やられまいと敵も必死である。残っている力を振り絞り、酸液による攻撃を仕掛けてくる!
「もう見切ったぞ!!」
今度も広範囲に渡り酸の飛沫が撒き散らされたが、俊也は天性の剣才で一度見たその攻撃を見切り、相手のタイミングを取って八艘飛びのように横に避けた。体に酸液はかかっていない。
「とどめだ! オオオォォォッッ!!!」
肚から響き渡る気合声を発し、俊也は渾身のファイアブレイドによる突きを親玉スライムに繰り出す! 深々と刺さった炎の刀は親玉の体を溶かし、敵は命を落としたのか動かなくなった。
「やったか!?」
俊也はファイアブレイドを親玉スライムの体から引き抜いた後、油断なく様子を見ている。そこまでの戦いを見守っていたディーネがいつにない強い声で、
「俊也くん!! そこから逃げて!!」
動かない親玉から何かの危険を察知し、俊也へ呼びかけた。その声を聞くと同時に彼は素早いバックステップと共に身を翻し、瞬発力の利いたダッシュでその場から離れた。
親玉スライムの体はその後すぐプクーっと膨らみ、凄まじい破裂音と共に自爆した。四方八方に大量の酸液を撒き散らしている。ディーネの声がなければ俊也はその酸を避けきれず、タダでは済まなかっただろう。
「グレイト! これでファイアブレイドは使いこなせるようになったわね。修行は終わり。合格よ~」
いつもの調子に戻ったディーネは俊也にウィンクを飛ばしている。大物を退治した俊也は心身共、流石にヘトヘトだ……。