第三十四話 ディーネと魔法の修行その2
「これでいいわ。何かさっきと違わない? 俊也くん?」
「え、ええ……。そういえば何かの力が腕にあるような……」
ディーネからほんの少しだけ受け取った魔力を、俊也は刀を持つ両腕にほのかな熱い何かとして感じ取っている。
「そう。いいわね。じゃあその力をカタナの剣先に移動させるイメージで目をつむって集中してみて」
「わかりました……」
レクチャー通り感じる力を刀に移すイマジネーションを作り、俊也は静かに目をつむり集中した。すると、刀の剣先から刀身の中ほどにかけて、青い炎が現れ覆っている!
「!! ディーネさん!? これは!?」
「へえ~。きっかけがあるにしても一回でファイアブレイドを作れるとはね。あなた筋がいいわ。俊也くんがもともと持っている火属性の魔力をカタナに伝わせてこうなったのよ」
「俺がこの炎を……!?」
刀身は炎をしばらくまとったままだったが、やがてそれは徐々に小さくなり消えてしまった。炎が消えた後も刀はまだ熱を帯びている。しかし、俊也はおよそ熱を防ぐとは思われないほど薄い布で作られた手袋により、その熱さを感じること無く柄を握ることが出来ていた。
「熱くないでしょ~? それは遮熱の手袋と言って、火と水、両方の魔力を込めた布で作られているのよ。それはサービスで俊也くんにあげるわ」
自身が持つ新たな力を確かに今見た俊也は興奮していたが、ディーネが「あらあら。せっかちはダメよ」と、軽くいなすように一呼吸置かせて次のレクチャーを始めている。
「落ち着いた? じゃあね~、今度はきっかけなしでファイアブレイドを作ってみて。これはかなり難しいわよ~。要領はさっきと一緒で、感覚を思い出しながら集中してみて」
「はい……」
言葉少なに返事だけをして、俊也はさっきと同じように目をつむり静かに集中した。だが今度は炎を発現させるきっかけが何もない。静かな集中は川のせせらぎの周期的な繰り返しが、彼の精神と一体になるかと思われるほど続いたが、剣先に炎をまとう兆候があるとき見え始めた!
「よし! いいわ! そのままのイメージで続けて」
「……」
内に秘める力を両腕から刀身にかけて感じている。イメージを静かに続けていくと、さっきと同じように刀身が青い高温の炎をまとった!
「グッドジョブ! よくできました! こんなに早くコツをつかむとは思わなかったわ~。才能あるわよ~。あなた魔術師になって私の助手やらない?」
「いや……。それはすみませんが遠慮します」
「遠慮しなくていいのに~」
クスクスといたずらっぽくディーネは笑っている。その後、完全にファイアブレイドを作り出すコツを物にするため日暮れまで修行を繰り返し、1日目は終了した。