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ヘルモードの異世界をもう一度  作者: チャラン
終章 異世界救済生活・ラグナロク
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第二百六十五話 煌天の冥界

 回廊の下層部も上層部同様、長く深いのは変わりないが、俊也と修羅、それにネフィラスが進んでいく足取りに重さはない。ジェシカと加羅藤姉妹が『送遠の玉』を通して話しかけてくれるからだ。


 冥府へ向かった二人と一柱の戦士を送り出した後、彼女たちはセイクリッドランドのネフィラス神殿へ、馬車を用いて急いで移動したようだ。タナストラスで最も神聖な魔力が集まるそこから、俊也たちのサポートを行うのである。冥王カーグとの最終決戦に向けて、サキ、セイラ、ジェシカの周りには、神殿に仕える多くの修道女が詰めている。いざその時になれば皆で力を合わせ、全身全霊で救世主である俊也と修羅、世界の主神ネフィラスを支える準備が整っていた。


 そうした元気で優しく慎ましい、それぞれの個性を持つ苦楽を共にした彼女たちの声に助けられながら、二泊、回廊内で途中の休息を取り、深く潜るように俊也たちは歩いていく。そうして確実に深部へ進み続ける彼らの前に開けてきた光景は、意外を通り越したものであった。




「ここは? 外?」

「なぜ太陽が空にあるんだ?」


 回廊を(ようやく)く歩き抜いた救世主たちの目の前には、緑色の草と低木が続く平原が広がっている。それだけでもこの場所の暖かさを感じるのだが、天には太陽が昇り、恵みの光をそれらと共に、俊也と修羅にも注いでいた。およそ彼らが想像していた冥界とはかけ離れた場所だ。


「ネフィラス様、ここは?」

「間違いなく冥界だよ。二人とも信じられないという顔をしているね。なあに、不思議なことはないよ。君たちの世界には天国という死者の世界があるだろう?」

「あっ、そうか! そう考えると……えっ!? つまりネフィラス様は、冥王カーグを……」

「天国に封印したということさ。そりゃそうさ。ただ一人の兄を、地獄のような処へ閉じ込めたくはない。ただ、逆に兄カーグには、地獄を感じさせてしまったのかもしれないが」


 俊也と修羅、二人からの問いかけに、迷いと苦悩を思い起こしそうになり、ネフィラスはそこで深く考えるのを止めた。


「とにかく進もう。ここまで来たらもう少しさ。この先に町がある」

「冥界の町ですか?」

「うん。ヨミという良い町だよ」


 怪訝な顔の二人である。優しすぎる死者の世界の空気に、ややもすると戦気を削がれそうにもなる。平原に広がる草の香りに、何か少年時代の懐かしみのようなものを、紅顔のあどけなさが残る救世主たちは感じつつ、ネフィラスの案内に続き、歩んでいった。

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