第二百五十二話 魔剣士ネロ・最終戦その2
間一髪、光子の刀で凄まじい斬撃を防いだ修羅であったが、その受け流しは完全ではない。非常な膂力の刃の威力を天性の剣才で、修羅は滑らすように相殺した。しかし、漆黒の刃は彼の右肩のプロテクターの真上に落ち、それを弾き飛ばすと右上腕を深々と斬っている!
「グウッ!?」
激しい痛みによる苦悶の表情だ。だが、紫銀のプロテクターとジェシカが戦いの前に渡してくれた守護符、それに修羅の剣才と努力による受け流しにより、これでも最低限のダメージで済んだと言えよう。そうではあるが、もう修羅には左腕一本で強大過ぎる宿敵、魔剣士ネロとの戦いを乗り切るしか道がない。
「うおおおぉぉぉ!!!」
渾身の一撃を修羅に加えたため、ネロに大きな隙ができた。それを逃す俊也ではない。千載一遇の機会に『胆力の集』で漆黒の魔剣士の背後へ一気に近づき、超高速の光子の刃を迷いのない最短の軌道で振り落とす!
「チィッッッ!!」
俊也は間違いなく斬れたと思った。だが、どういう修練を積めばこんな反応ができるのか。背中に目が付いているかのようにネロは身を翻し、俊也が振った渾身の威力を剣でかろうじて受けた。しかし、流石に防御は完全でなく、左背中から脇腹にかけて、光子の刀はネロを深く斬っている。
致命傷ではまだないものの、深いダメージを受けたネロは、俊也と修羅に対し距離を取り直し、少し肩で息をしながら体勢を立て直した。想像もつかないような修練を積み、彼は魔剣を自在に操る比類ない実力を手に入れたのだろうが、俊也と修羅、二人の剣の天才と斬り合うまで、自身の力を完全に使い切った経験はなかったであろう。浅くはない傷を負いながら、ネロは笑みさえ浮かべている。
「修羅、大丈夫じゃないな?」
「まだいける……と言いたいが、左しか使えない。あまり当てにはしないでくれ」
「だろうな」
そういう状況ではある。しかし、魔剣士ネロの強さが常軌を逸しているといっても、今の彼はかなりの傷を負っており、体力も充分ではない。
(俺は五体満足だ。一対一でも勝てるかもしれない)
俊也は冷静に敵と自分の戦力を比較できている。勝機の存在を見出した俊也は即断即決し、脚に虎の如き力を溜めると、転瞬、全速力でネロとの距離を詰め、急所目掛けて渾身の突きを放った! 心臓を狙い、命を取るための突きを、ネロはまたしても素晴らしい反応で身を捻り、かわす! 光子の刀による鋼をも貫く突きは急所を外した。だが、ネロの右胸部から肩にかけ、光の刃が深く突き刺さる!
「グッ!? オオオオォォォ!!!」
肉を斬らせて骨を断つ。それを地で行く攻撃を、ネロは残った左腕で放った! バランスを崩している俊也は、漆黒の凶刃を受け止めることができない! 半身を幾らか引き、急所の回避を試みたが、右半身から脚にかけて大きな斬撃を喰らった!