第二百四十九話 残るか散るか
ネフィラスに解放された俊也の力と光子の刀の威力は、それらを用い、戦いを開始した彼自身をも驚愕させるものだった。俊也が敵として対しているのは間違いなく高位の魔物たちだ。それぞれが持つ闇の力は甚大である。しかしそれすら、俊也の引き出されたポテンシャルは大きく上回っており、レッサーデーモンやアークデーモン、飛兵のガーゴイルでさえも、彼の力に呼応する光の刃は撫で斬りにしていく!
俊也が先方としてリーダーとして道を開いた後に、親友でありライバルでもあるもう一人の救世主、修羅が即座に続いた。そして何より心強く、絶大な力を持つネフィラスも、神竜の剣を抜き、ラグナロクの戦場を突き進む。人智を超えた実力を持つ彼らが通った後に、生き残った魔物は一匹たりともいない。
「やるなあ俊也君たちは! 師匠! 我々も参りましょう!」
「うむ。手加減無しで剣を振るうのは久しぶりじゃな。やるとするかのう」
光の軍の西翼では、俊也と修羅、最強の救世主コンビの剣を育てた、最強の剣師コンビが敵陣へ斬り込もうとしていた。迫る魔物達に遠慮呵責は必要ない。ノブツナとイットウサイは『胆力の集』を十二分に使い、尋常でない速さで禍々しき魔物の軍に向かうと、対峙するそれらを次々に斬っていく! 後に続くセイクリッドランドの正規軍と傭兵は彼らの奮闘に意気を得て、高揚した士気と共に敵軍へぶつかった!
一方、東翼では、魔導師ミハエルが強大な魔力を溜め、露払いをしようとしている。
「シャイニングレイ!!」
魔法の詠唱と集中を終え、頭上へ高く掲げた赤水晶のワンドからは、莫大なエネルギーを持つ光線が前方の敵軍に向けて放射状に放たれる! そしてそれは、光の炎として魔を焼き尽くし、有り余る光線のエネルギーが高く立ち上る壁となった! その壁は消えるまで、触れる魔を焼失させてしまうだろう。闇の軍は怯み、光の軍はさらに士気を得る。東に展開する光の軍は虚を突き、敵陣へ全力で進軍した!
西、東、そして俊也たちが斬り込んでいった軍のど真ん中、それぞれで核となる戦力が展開され、有利に戦いを運べている。しかし、それを持ってしてもカバーしきれない箇所はあり、光の軍にも犠牲は出ていた。敵も持てる力を最大限に結集している。仕方がないことだ。
「皆、頼むぞ……」
天に向けた剣から祝福の力を送り続けているレオン法王は、光の軍を統制する総大将として、皆との強い絆を信じ、祈っていた。
春の喧騒ではない。人の世が残るか散るかの瀬戸際である。