第二十四話 町長トクベエと帰ってきたサキたちの父親
俊也はその後モンスター討伐の報酬を受け取り、ギルドからの紹介でカラムの町の町長にも会うことができた。町の役所にいる町長は多忙だったが、こころよい気さくな人物で話が通りやすく、こんな内容の話をしている。
「私が町長のトクベエです。俊也さんと言われるのですね。モンスターを退治して頂きありがとうございます。あなたはかなりお強い方と聞いています。これからもよろしくお願いします」
「こういう仕事をこなしてできるだけカラムの町の安全を保てるようにしようと考えています。ところでトクベエさん。話しておきたいことがあります。俺は異世界の日本という所から、この世界の加羅藤サキという少女に呼ばれて来たんです」
町長であるトクベエには打ち明けておいた方がいいだろうと思い、俊也は思い切ってタナストラスへ来た経緯を伝えてみた。それを聞き少しだけトクベエは驚いたようだったが、すぐに納得と理解を示している。魔法技術が進んでいる世界でもあるので、俊也がしている話もあり得ることで、通りやすいようだ。
「なるほど……。あの教会の少女に呼ばれて来てくださった救世主様でしたか。この世界にお越し頂き重ねてお礼を申します。……そうですね、こうしましょうか。タナストラスの今の不穏さに関する有益な情報が何か入った時、俊也さんにすぐお知らせしましょう。それまでは今までのように異世界から来られたことはなるべく他者に伝えずに、ギルドなどの仕事をしていて頂けませんか? そうしている内にあなたの強さに伴って、勇名も広まっていくでしょう。そうした方がこれからあなたの活動がしやすいと思います」
「分かりました。これからしばらくそうしてみます。異世界の人間であることは確かにあまり言わない方が何かと動きやすいですね」
トクベエからの協力とコネクションを得ることができ、俊也の異世界救済活動方針も決まった。タナストラスに来て短期間ながら、かなりよいペースで成果をあげているといえるだろう。
また、仕事をこなしたことによるギルドからの報酬に関しては、テッサイがギルドの親父に「俊也はすごい活躍だったぞ」と株を上げてくれていたのもあり、報酬額の5000ソルに少し色をつけてくれて、5500ソルを俊也は受け取っている。ここまでで彼の所持金は6000ソルになっている。これはなかなかの大金で、この世界の平均的な4人家族の三ヶ月分の生活費に相当する額だ。当面の活動資金としては十分である。
様々な準備が整いつつある中で、拠点でもあり異世界のわが家でもあるサキの教会にも動きがあった。サキの父親が行商から帰ってきたのだ。しばらく会えていなかった父親を迎えたサキとセイラはとても嬉しそうで、父親の無事を喜び抱擁を交わす父娘3人を見ている俊也の顔にも、自然と微笑みが浮かんでいた。