第二百三十九話 太古の真実
俊也と修羅、二人の力とそれぞれの刀のポテンシャルを引き出したことを、ネフィラスは、本題である白の聖輪の説明と絡めて話してくれた。
「君たちには私を助けてもらいたいんだ。特に俊也君と修羅君にはね。私と同行してカーグを再び封じて欲しい」
「ネフィラス様が太古に封じた魔王カーグが復活しようとしているのですか? それで世界の瘴気が濃くなり、世界全体が不穏になっていると」
「そうだね。それは半分は合ってるけど、半分は違うかな」
「???」
ジェシカはネフィラス神殿で幼い頃から暮らしていた。そのため文献などで、ネフィラスとカーグに関する歴史もよく知っている。その上で間違いない見当をつけて、主神ネフィラスに尋ねたのだが、彼は半分話が違うと言う。どういうことなのかジェシカには分かりかね、彼女は小首を傾げた。慎ましい彼女の可愛らしい癖である。
「人はカーグを魔王と言い伝えているが神竜の一柱で、私のただ一人の兄だ。その兄を、私は封印してしまった。私が生まれて四百年くらいの頃だっただろうか」
『ええっ!!??』
神竜ネフィラスと魔王カーグが兄弟という伝承は、タナストラスのどこにも残されていない。皆、心底驚き、ネフィラス自身から真実を聞いても信じられないという顔をまだしていた。
「今は身罷っているが、当時は私の父がいた。父の助けと、君たちが持っている真紅と白銀、それぞれの宝玉が持つ魔力を用いて私はカーグを封印した。カーグは元々、父を助けタナストラスを守護する存在だったんだよ。だが、あることを境に変わってしまった」
「知らなかったことばかりだわ……それで、一変するようなことってなんですか?」
「カーグは……いや、兄は人のために妻を失ったんだ」
自分の最愛の妻を奪われる。それは一人の女を愛した男にとって、計り知れない苦痛であろう。それを境にして、カーグの心に闇が巣食い、魔王と呼ばれる存在へと変わってしまったのだろうが、俊也たちは、その経緯をもっと詳しく聞きたかった。
「魔王魔王と呼んでたが、そんな気の毒なことがあったんだなあ。奥さんを人のために亡くしてたとは……」
「いや、正確に言えば亡くしてはいないんだ。彼女は私が身につけている『白の聖輪』に姿を変えたんだよ。つまり、私が兄、カーグの奥さんを預かっていることになる」
「ええっ!? どういうことなんですか!? 衝撃的すぎてなんだか分からなくなってきたわ」
次々に明らかになっていく太古の時代の真実を受けて、サキは少し混乱気味だ。感情がすぐ表に出るサキを見て、紅顔の神は笑っていた。そして少しの間があり、ネフィラスは沈んだ表情に顔を変え、気重そうに言葉を続けた。