第二百三十七話 光子の刀(フォトンブレイド)
「悪いんだが、食事をとってもらう前にやっておきたいことがあるんだ。なーに、ちょっとだけさ。時間は、かからないよ」
ネフィラスは俊也と修羅を軽く手招きして自分の前に呼ぶと、俊也の頭には右の掌、修羅の頭には左の掌をそれぞれかざした。すると二人の救世主は、掌から発せられた力強い光に包み込まれていく。
「えっ? ……この力は……?」
「これは? ……僕の力?」
俊也と修羅は、今までの自分とは比較にならないくらいの湧き上がる力を感じ、その感覚を持て余すように戸惑っている。純粋な彼らの反応を見たネフィラスは、気持ちよく笑った。
「それが君たちの力さ。人を大きく越えた力だよ」
「俺たちの……」
「正直なところ、なんだかよくわからないです」
「はははっ! すぐ分かってくるさ。それと、君たちの武器を私に貸してくれないか?」
神であるネフィラスの頼み通り、素直にオリジナルウェポンを二人は差し出した。軽くうなずきながら気さくな神は武器を受け取り、大理石調のテーブルに俊也と修羅の刀を置くと、両手をかざし、それらの武器に清らかな力を送る。俊也と修羅の刀には力の光により、それぞれ同様な変化が起こった。
「あら? 柄だけになりましたね?」
「ええっ?! ネフィラス様! どういうことなんです?!」
まさか神が失敗したとは誰も思わない。しかし、変化としては意外過ぎた。セイラとサキは柄だけになった刀に驚き、サキなどはネフィラスに問い詰めている。それでもネフィラスは機嫌良さそうに笑い、詰め寄るサキをいなしていた。
「ずっと見ていたけど、サキさんは元気な娘だよね。心配ないよ。俊也君、修羅君、この柄を握ってごらん」
すっきりしすぎた形になってしまった自分たちの武器を、俊也と修羅は妙な顔で見ていたが、ネフィラスに促され、とにかく手に取り握ってみる。すると、それぞれの柄から三尺ほどの光の刃が現れ、彼らの力に呼応するかのように、その刃は少し揺らぎながら存在していた。
「光の刀?」
「そうだね。光子の剣……というより、君たちの世界の刀という言葉を使ったほうがいいだろう。その刀を含めたのが、君たちの今の力だよ。俊也君、修羅君」
「なぜ僕たちにここまでの力を授けて下さったのですか?」
「いやいや。私が授けたわけじゃないよ。きっかけを作って、君たちが持っている力を解放しただけさ。俊也君と修羅君が努力してきた結果だよ」
そこまで話すと先程の老執事が、ネフィラスに何か耳打ちをしてきた。
「爺を少し待たせすぎちゃったみたいだ。後は食事をしながらゆっくり話そう」
老執事の落ち着いた案内で、俊也たちは孤城内の食堂に向かう。