第二百三十三話 マジか!?
レッドドラゴンと対峙する陣形は、前衛に俊也、修羅、後衛にバルト、サキ、セイラ、ジェシカとなっている。前衛と後衛はかなり離れており、俊也と修羅が巨大な赤龍の攻撃を引きつけながら、後衛が支援する形だ。バルトには蒼い大弓の一撃があるが、どのタイミングでそれを放ち、どのくらいのダメージを与えられるかが未知数である。
ゆっくりと確実に石床に足音を響かせ、レッドドラゴンの巨躯は近づいてくる。凄まじい脅威だが、その動きはどう見ても緩慢である。
「速さではこちらが遥かに上だ。修羅、勝機はあるぞ」
「ああ、左右に素早く分かれて斬りかかるか?」
「それでいこう」
示し合わせた後、俊也と修羅は『胆力の集』を用い、人を超えた凄まじい脚力でレッドドラゴンとの距離を一瞬で詰め、竜の首目掛けて左右から上方に高く跳躍し、斬撃を放った!
「グオオオオオォォォン!!!」
二人の攻撃は完全にレッドドラゴンの不意を突いた! 太い首の左右に大きな手応えで斬撃が入り込む! だが、二人の救世主の剣を持ってしても、それはまだまだ赤龍にとって致命傷となっていない。敵の動きは緩慢だが、予想以上に分厚い大竜の皮膚であった。
「斬るには斬ったが通らないな!?」
「何度でも斬るしかないさ!」
切り替え早く、修羅は次の攻撃にかかっている。彼は右手に少しの間、魔力を集中させると、
「ショックウェーブ!」
レッドドラゴンの体目掛けて、空気を高速で揺るがす衝撃波を放った! 赤龍の巨躯は、その高速の波をまともに受けた! その頑丈な体に受けたダメージは軽微だが、体勢をひるませるには十分な効果がある。
「今だ! 俊也!」
「よし!」
息の合ったコンビネーションを使い、俊也と修羅は再び左右から跳躍し、レッドドラゴンの首を狙って斬撃を放つ! 二人の再攻撃に強い手応えがあった。巨躯の首から多量の血を流し、赤龍は深手を負い苦しんでいる。俊也と修羅はもう一度跳び、とどめを刺すつもりで体勢を取った。
「グオオオオオオオオ!!!」
「なに!?」
三度斬りかかろうとしたその時! 死に物狂いのレッドドラゴンは二人の予想を越えた攻撃を繰り出した! 全てを打ち砕くかと思われる、尻尾による薙ぎ払いだ! 変則的にしならせ、ムチのように飛んできた打撃は二人の油断を突き、俊也と修羅の身体を打ち払った!
「マジか……!?」
「しまった……読んでなかった……」
かろうじて身をひねりクリティカルヒットは避けられたものの、彼ら二人が受けた打撃は深く、動きの速さが数段落ちている。
怒れる神竜の試練は完殺の念を込めた双眼で、容赦なく俊也と修羅を睨めつけ、石床への地響きと共に近付いて来た!