第二百三十二話 レッドドラゴン(大型)
「こりゃあどういうことだ? 広すぎやしねえか?」
「そうですね……。外観より明らかに広いです」
塔の内部は煌々とした燭台が壁面のいたる所に設置されており、とても明るかった。それも不思議なことだが、それよりバルトと修羅が驚いているのは、だだっ広い石床が続いていることである。塔の構造を、入る前に外から見ているが、どう考えてもありえないくらい広い。
「塔から神聖な魔力を感じます。ネフィラス様のご意志により、次元を変えて空間を作り出しているのかもしれません」
「なるほど。こういう面でも俺たちは試されているわけか。ジェシカさん、魔物の気配は今感じるかい?」
「感じません。ですが、とてつもなく大きな力が塔の頂上に存在します。魔物なのか何か、それは分かりません」
「ネフィラス様が課す試練として、その力を倒さないといけないかもしれませんね」
塔全体が神竜の試練で、恐らくセイラが言う通り、甚大な力と対峙することになるだろう。俊也は腹を括って、遠く離れた塔の中心部の大黒柱に付く形で存在する螺旋階段まで歩き、一歩一歩登り始めた。
ネフィラスの意志によるものかどうか、それは分からないが、塔の造りは不自然にどの階層も広かった。だが、登るのを妨げる複雑な仕掛けはどこにもない。その面において俊也たちは試されることなく、塔の頂上部まで辿り着けた。しかしそこに来て初めて、なぜこの塔がありえないくらい広いのか、理解することになる。
「えっ!? なに!? あんな大きな竜がいるの?」
サキが思わず大きな声を上げ、遠くにいる異常に大きな赤い竜を指した。それを見た瞬間、俊也たち一行は、これが神竜ネフィラスかと思ったが、どうも違うようだ。
「大型のレッドドラゴンだな。たまげたぜ……俺も色んなのをぶっ倒してきたが、あんなの見たことがねえ」
ネフィラスの試練は「この場所で力を見せてみよ」ということだろう。次元を変えて造られたと思われる塔の空間は、確かに、小高い丘ほどもあるかと見える赤龍が、どれだけ暴れたとしても崩れることはなさそうだ。そうであるなら選択の余地はない。
「倒さないと道は開けない。みんな! 行くぞ!」
斬馬刀となったオリジナルウェポンを抜き、皆に号令をかけ、俊也は巨大なレッドドラゴンの下へ走っていった。その後を追いかけ陣形を組み、修羅、バルト、サキ、セイラ、ジェシカはそれぞれの武器やワンドを構え、神竜の試練と対峙し、待ち構えている。
甚大な赤龍の脅威が、ゆっくりと確実に迫ってきた!