第二百二十三話 異世界のメリークリスマス
魔製器でタマハガネを用いてそれぞれの刀を修復してもらった結果、その刃はこれまで以上の斬れ味を持つものとなった。ディーネには感謝する他ない。
それから幾日か経った。
カラムの復興はさらに進み、中心街の活況も冬の寒空の下ながら、元に戻りつつある。町が受けた傷が癒えてきたのもあり、修羅は俊也に、
「イットウサイ先生の修行をこなして、その後ディーネさんに魔法を教えてもらったのに、お前とまた差ができちゃったよ。僕もノブツナ先生に稽古をつけてもらわないといけない」
と、一歩先を行く親友に苦笑しながら、剣神ノブツナを紹介するように頼んでいた。俊也はもとよりそのつもりであるが、修羅をノブツナの処に送る前に、彼にはどうしてもやりたいことがある。
「カラムの人たちを元気づけたいんだ。少しでいい、皆でクリスマスを祝わないか?」
サキを始め、俊也とつながりが強い町の人々に集まってもらい、彼はそう提案したのだが、誰しも怪訝な顔をしている。それはそうだ。タナストラスの主神は神竜ネフィラスであり、クリスマスを祝う風習はない。だがたどたどしくも、教会のもみの木に色々な飾り付けをすることなどを話すと、皆、俊也がやりたいことを笑顔で理解し、
「それは楽しいでしょうな。では、町の皆にも知らせてみましょう」
と、町長トクベエも、積極的に動いてくれることになった。
色とりどりの華やかな飾り付けが施された教会のもみの木の前に、カラムの人々は大勢心待ちに集まっている。日は既に落ちており、みんな寒い中、白い息を吐いて待ってくれている。今日のメインイベントを見るためだ。
「ふふっ、じゃあ始めるわよ~。楽しみね」
もみの木のすぐ前にはディーネがいた。彼女は黒水晶のワンドから華やかなもみの木に魔力を送ると、それに付けられていた多数の小さなランタンが、暖色の灯火で辺りを照らし始める。ライトアップされたのだ。幻想的でロマンチックな暖かい光に、カラムの人々は魔剣士の襲撃で受けた心の傷が、優しく癒やされていた。
「きれいですね~、俊也さん……ありがとう」
「ありがとうございます、俊也さん……カラムを守ってくれてありがとう」
サキとセイラは浅黄色のワンピース姿で俊也に寄り添い、彼の二人を守ってきた心強い手を、柔らかいそれぞれの手で握っている。彼女たちにとってランタンの暖かさは、俊也の暖かさであった。
「ふむ、ようやく分かってきたぞ。ここに手がかりがあったとはな」
不穏な空気が流れるなかタナストラスはその後、小康状態を保っていた。そうしたある日、レオン法王は大聖堂の書庫で非常に重要な古い書物を見つけ出し、その内容に驚くと共に興奮も覚えている。