第二百二十二話 復興中のカラム
魔剣士ネロの襲撃を、カラムの人々は何とか防ぐことができた。しかし、多数の傭兵、自治兵の負傷など、町の被害は甚大である。カラム内の病院は負傷兵でほぼ満員となり、町で随一の癒やし手であるセイラとサキは臨時の看護師として、忙しく何日も負傷兵の治療に当たっていた。
町の復興に向けたそうした忙しい中であったが、ネロから漆黒の光弾を受けたディーネと、生身で魔力を消費しすぎたジェシカの体力と体調が回復し、普通に動けるようになっている。これはもちろん朗報と言えた。ジェシカは体が元に戻るとすぐ、病院へ傷ついた兵のための治療を行いにいき、彼女を心配していた修羅を、その時さらに心配させたものだ。
ネロの事があり、ディーネは回復した後も、いつもの元気がなかった。そうではあったが、彼女お気に入りの俊也と修羅が、毎日見舞いに自分の店まで来てくれていたので、徐々に本来の調子を取り戻し、妖艶な笑顔も戻ってきている。
そうした復興に忙しいカラムでのある日、俊也と修羅はディーネにあることを頼んでいた。
「俊也くん、これ凄いのになっちゃたわね。ネロはこれをよく防げたわね」
「俺もあの時の事はよく覚えてないんですが、気づいたら刀がこうなってました」
「僕も驚いたよ。あそこまでキレた俊也は、長い付き合いだが見たことがなかったからな」
ディーネが改めてじっくりと見ているのは、俊也と修羅の刀である。俊也の刀は、魔剣士ネロとの戦いの最中変化し、斬馬刀のような幅広く厚い刃を持つものになっている。どちらの刀もよく見ると、切り抜けた戦いにより細かい傷が無数についていた。そして、ヤギュウの村でザイールから貰ったタマハガネもディーネに渡してある。彼らはどうやら、刀の修復を彼女に頼みたいようだ。
「あまりやったことがない仕事だけど、できないことはないわ。やってあげる」
「本当ですか!? ありがとうございます! ところでお代はいくらくらいでしょうか?」
「30000ソルよ」
「三万!? いや、そういう金額になりますよね……困ったな。俊也? 持ち合わせがあるか?」
「うーん、いや、足りない。どうしよう……」
バカ正直に真面目に、30000ソルを払おうとしている二人の青年の様子をディーネはいたずらっぽい笑顔で見ていたが、
「嘘よ。あなたたちからお金を取るわけないじゃない。タダでやってあげるわ」
苦笑しながら「仕方のない子達ね」と、俊也と修羅の頭を優しく撫でた。
「ありがとうございます! でも、やっぱり何かお返ししないと……」
「そうね、それじゃあ明日も私の店にお見舞いに来てちょうだい。それだけでいいわ」
ディーネは「仕方のない子達」に救われているのだ。