第二百十七話 援軍と魔剣士
最強の師弟トリオが合流できている。しかし、モンスターを湧き上がらせている襲撃者の場所へは、相当な量の怪物を斬っていかなければいけない。一匹の強さ自体はどうということはない。だが、束で連続的にかかってこられると、いくら俊也たちが強いとはいえ、進みようがなさそうだ。
「埒が明かないが斬っていくしかないな。俊也君、修羅君、行くぞ」
「「はい!」」
斬りまくればほとんど一歩ずつだが、無理やり進める。そう状況を見て取ったイットウサイは、俊也と修羅に指示を出し、湧き出続けているモンスターの大群に向かっていこうとした。丁度その時!
「おい!! どいてろ!!!」
三人の右手遠方から呼びかけ止める大声が聞こえてきたかと思うと、雷速の大矢が一本、モンスターの大群に飛んでいき直撃する! 莫大なエネルギーを持つ射撃を受けたその大群は、それだけで半分の数が失われ、襲撃者の所まで行ける道ができた。
「よう! 久しぶりだったな」
「バルトさん! ありがとうございます! でも、どうやってここが分かったんですか?」
「あん? それはだな、たまたまトラネスの港近くに船を停めてたんだが、するってえと、町からどんどん傭兵や自治兵がカラムの方へ行ってるじゃねえか。おかしいと思って、船を回してみたわけよ」
「そうだったんですか、助かりました。千人力です。よし、これで何とかできる気がしてきたぞ」
心強い千人力の援軍、白鷹団の頭領、雷弓のバルトが思いがけず駆けつけてくれた。これにより、親玉のところまで道が開けたことになる。
「俊也君、修羅君、あとの露払いは私達に任せて、先を行きなさい」
「はい!」
「分かりました!」
イットウサイとバルト、それにバルトを追ってきた白鷹団の船員は、まだ残っているモンスターたちに斬りかかり、俊也と修羅が通る道をなるべく作っていった。彼らはその道を全速力で走る。
無限に湧き上がるかと思われるモンスターを防壁のように扱い、黒尽くめの男……いや、魔剣士はその群れの中心に禍々しいオーラを発し、立っていた。自分たち二人でこれらを全て斬らないといけない、俊也たちはそう考えていた。しかし、
「あれは! ディーネさん!?」
俊也たちの左前方の向こう側に、どういう方法でここに来たのか分からないが、魔術師ディーネが魔物の群れと対峙している。ディーネも俊也と修羅の姿を確認できたらしい、彼らを見て少し安堵の笑みを浮かべると、妖艶な女魔術師は魔法の詠唱を始めた。
「ファイアストーム!」
業炎の竜巻が魔剣士の防壁となっている魔物たちを焼き払う! そしてほとんどは焼き尽くされ、黒のプロテクターを身に着けた魔剣士だけが、そこに佇んでいた。