第二十一話 天性の剣才
先に進んでいた4人の傭兵たちは既にモンスターの何匹かを斬り伏せている。流石、仕事に慣れているのか、獲物との距離のとり方、ラダとアカオオジシそれぞれの癖に合わせた攻撃と防御法、どちらを見ても鮮やかな手並みである。
「俺達も働かねえと手柄を持っていかれるぞ! 俊也! お前さんは手前にいるラダの群れを斬れ!」
そう言うとテッサイは、近くにいる別のラダの群れを斬りに行った。俊也が相手をする目の前のラダは5匹いる。彼はできるだけ直線的に一匹一匹を斬り伏せられるように回り込み、正眼の構えから一気に間合いを詰め、一匹の頭へ突きを放った。回避不能な攻撃を受け断末魔を上げることもなく、そのラダは即死している。
(剣が軽い……!)
魔製器から生まれた刀は彼の想像以上に振れ、木刀とは段違いの攻撃威力だ。その斬れ味に、(これならいける!)と確信を持った俊也は、高速の二撃で立て続けにもう2匹のラダを斬り伏せた。
「キャンキャン……」
残った2匹の内、一匹は彼の圧倒的な強さに恐れをなし、森の奥へ逃げてしまった。残るは一匹だが、物の数ではない。ラダの左手に回り込み、素首に動きを予測した正確な切り落としを放つ! 後に残ったのは妖犬4匹の死骸である。
手前のモンスターの群れを全て片付けた後、俊也は別のラダの群れと戦闘途中であるテッサイの処へ救援に向かっている。
「なに! もうさっきのを片付けのか!? よし、こっからは組んで行こう! こいつらを斬った後、アカオオジシにかかるぞ!」
俊也とテッサイは一匹ずつラダを斬り、やや前方で4匹群れているアカオオジシに連携してかかった。ここまでものの5分と経っていない。突然の異変にアカオオジシも完全に虚をつかれている。
「こいつを狩るには正面に立たないことだ! 立つと突進してくるぞ! 横から斬れ!」
二人はそれぞれ左右に散り、アカオオジシの両脇を取る形で斬りかかる! 凄まじい斬撃を受けた一匹はその場に倒れた。残りは3匹だが、その内の一匹が俊也に向かって突進をかけてきた! この巨体を人間が受けたらタダでは済まないが、彼は持ち前のスピードで左に跳び、突進をかわすと共に刀を上刃にしてアカオオジシの脇腹を突き、跳ね上げた! 返り血を浴びながら一撃で仕留めている。
(こいつここまでやれるのか……とんでもないやつだな……)
天性の剣才で動く俊也を見てテッサイは少し気を削がれていたが、我に返り残りの2匹も連携を取りつつ退治した。10分も経たない内に大方の討伐は終わり、仕事は完了している。