第二百五話 高山瓜の修行・その2
掌に魔法力を集中させ発する感覚は元々分かっていたので、それを応用し、黒石を素手で砕くコツも短時間で掴めた。だが今回は脚である。俊也は脚に魔法力を集中させたことがまだなく、まずそこで戸惑っていた。
「掌に集中する意識を脚で同じようにやるということだろうけど、イマイチ掴めないなあ」
「難しいのですね……あっ! そうだ! 俊也さん、こうしてみてはどうでしょう?」
修行のコツが分からずどうしたものかと困っている俊也を、サクラは心配そうに見ていたが、何かを閃いたようで、俊也の所に彼女は小走りで寄って来た。そして、サクラは大胆にも俊也の両方の太ももに自分の掌を当てている。
「わわわ!? サクラさんどうしたんですか!?」
「私が当てている掌に、少し地の魔法力を込めてみます。それを手がかりにして、俊也さんは脚に火の魔法力を集中してみて下さい。うまくいくかもしれませんよ」
そういうことかと俊也はよく納得できた。だが、俊也は年頃の青少年で、サクラも年頃の美少女である。そんな彼女に太ももへ掌を当てられて、動揺しないはずはない。
(タナストラスの女性は、本当に男に抵抗がないんだな……)
ドキドキしながらも呆れ気味に俊也は考えていた。そして、なるべくサクラに意識を向けず、当てられた掌の地の魔法力を頼りにし、自身の火の魔法力により脚へ集中を行う。すると、
「あっ! うまい具合に力が来たぞ! サクラさん、ちょっと離れてみて下さい」
「わかりました」
サクラが手がかりを作ってくれた脚の部分に、力がしっかり溜まったのを俊也は感じ取った。サクラに安全な所へ下がってもらった後、彼は跳躍の体勢に入り、地面を蹴って力を解放すると上方へ高く飛ぶことができている。高山瓜がなっている高さまでは届かなかったが、それでも俊也の身長の2倍以上は飛んでいた。
「俊也さん、凄いですね! もうちょっとでしたよ!」
「はい。何か感覚というかコツというか分かってきました。サクラさん、もう何度か手伝ってもらえますか?」
「はい、もちろんです!」
その後二回、サクラの掌で魔法力の手がかりを作ってもらい、俊也は高い跳躍を行っている。その中で彼は、魔法力の変換による飛び上がりを習得でき、かなりの高所にある高山瓜をとうとう手にもぎ取れた。
「やりましたね! バッチリです!」
「サクラさんのおかげですよ。俺一人だったらコツを掴めてた気がしない」
今まで行ったことがない脚への魔法力の集中により、俊也は珍しく肩で息をしている。だが、この修業も目処が立ち、表情はとても明るい。