第二十話 真剣での初実戦
強く頼もしい男たちの集団はテッサイを先頭に北西へ向かっている。彼に俊也が訊いてみると、テッサイを除く4人は傭兵長である彼の部下のようなもので、このモンスター討伐の仕事を受けるためにテッサイが選抜したらしい。とすると、皆、カラムの町ではかなりの手練だろうと予想される。
「ラダはお前さん木剣を使って一撃で仕留めるくらいだから問題ないだろうが、アカオオジシはやったことがないらしいな? あいつはなかなか一撃でというわけにはいかねえぞ。二人がかりで倒した方がいい」
街道から外れた低い草の緑が映える平原を進みながら、テッサイはモンスター退治の手順やコツなどを俊也に話してやっている。どちらも初対面だが、二人ともお互いに親近感を持ち気に入ったらしい。強さの高みを目指す共通点を先程の握手で互いに見出せたからかもしれない。
「退治の最中は、誰かと組んで動いた方がいいですか?」
こういう仕事に慣れているテッサイの言うことを俊也は素直に聞き、受け入れている。異世界に来る前、真剣を持って振ったことは何回かある彼だったが、実際に刀を使って獲物を斬って狩るという経験はあるはずがない。できるだけ惑わないよう彼から情報をもらい、打ち合わせを入念にしておきたいようだ。
「そうだな、ラダはお前さんなら一人でもいけるだろう。だが、アカオオジシをやる時は俺の近くにいろ。俺と組んでやっつけよう」
俊也は了解のうなずきを入れながら聞いている。このリーダーなら間違いはないだろうと、初めての真剣を使ったモンスターとの戦いに臨む俊也の気は随分楽になった。
その後は言葉少なに黙々と歩を進めていると、目的地であるモンスターの群生地にたどり着いた。まだモンスターたちがこちらに気づかない距離を保っているが、そこからは他とは異なる瘴気の濃さが感じられる。
「着いたな。おお~、なかなか数が多いな。4、50ってとこか」
倒しているうちに怯えて逃げ出すモンスターもいそうだが、モンスター数をこちらの人数で割ると一人で8、9匹は退治しなければならない計算になる。4、50匹の内、ラダの方がアカオオジシより幾分多そうだ。
「よし! 俺は俊也と組みになって動く! お前らも二人一組になってやれ! ぬかるなよ!」
歴戦の屈強な傭兵たちは「おう!」と気合の入った大声を出すとそれぞれの得物を抜き、統率の取れた手慣れた動きで組になり、モンスターたちに斬りかかって行く。
「俺達も行くぞ! まずはついて来い!」
「はい!」
テッサイと俊也も得物を抜き放ち、モンスターの大群がいる瘴気漂う森中の群生地に勢い良く駆け行った。