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ヘルモードの異世界をもう一度  作者: チャラン
第六章 異世界救済生活・探究(後編2)
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第百九十八話 そうでないとな

「気づいたか。サクラによく礼を言っておくんじゃぞ」


 洞穴の入り口から来た小さな人影が、やや高い声を俊也にかけてきた。ノブツナであり、左手には大きな肉の塊を持っている。今日の糧とするつもりらしい。


「はい、サクラさんには感謝しても感謝しきれません。それはそうと、あなたはもしやノブツナ先生では?」

「そうじゃよ。わしはノブツナじゃ。で、この洞穴はわしの家というわけじゃ」


 高い声で「かっかっかっ!」と笑う、只者ではない小さな初老の男を見て、俊也は全てのことに合点がいった。探し続けたノブツナにようやく会えたのだ。回復がまだまだで満身創痍に近い状態だが、俊也の感慨は一入(ひとしお)である。


「やはりあなたが……お会いできてよかった。俺は矢崎俊也という者で……あれ、力が……」

「ああ、今は体に無理が利くまい。わしに何か用があって来たのは分かるが、まず2日養生せよ。その後、話を聞こう」

「ありがとうございます。助けて頂けていなければ、命を落としていました」

「わしに礼はいらん。サクラに感謝するんじゃな。まあまず、この肉を焼くとするか。食わせてやる。うまいぞ」


 持っている大きな肉の塊を見せ悪戯っぽく笑うノブツナに、俊也は訝しんだが、聞くとその肉は、俊也が倒したマウントオックスのものであり、怪しくはなかった。つまり牛肉で、うまくないはずはない。サクラから登山途中に斬り倒したのを聞き、部位の一部を取ってきたのだろう。


 洞穴の外にある調理場で、ノブツナは牛肉のステーキを焼いてきてくれた。サクラもそこでごはんの支度を手伝っており、彼女特製の野菜サラダもついている。朝ごはんを食べただけで剣神山を登り続け、激しい戦闘もこなしていた俊也の腹は空ききっており、あまりにもうまそうなステーキを前に唾をごくりと飲み込んだ。


「持ってきてやったぞ。食えるか? うますぎるほどうまいぞ」

「はい。凄いご馳走だ……いただきます」


 サクラにアースヒールの魔法で治療してもらったとはいえ、さっきまで満身創痍だった体だ。しかしながら、肉汁がたっぷりのビーフステーキを前にして、俊也の体は食欲に突き動かされ、ステーキに、気づくとかぶりついていた。その勢いよい元気さを見たサクラは、ホッと胸を撫で下ろしている。


「かっかっかっ! いい食いっぷりじゃ。若いのはそうでなくてはいかん」


 気持ちが良い程の俊也の食いっぷりに、ノブツナは声を上げて笑う。そしてこの小柄な強者は、彼の食いっぷりとマウントオックスのステーキを肴にして、サクラが俊也の魔法のリュックに入れ持ってきてくれた、久方ぶりの酒をゆっくり楽しんでいた。

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