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ヘルモードの異世界をもう一度  作者: チャラン
第六章 異世界救済生活・探究(後編2)
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第百九十七話 剣神山の剣神様

 傷ついていない左拳を振りかぶり、サイクロプスが俊也を潰そうとした丁度その時!


「見てられんのう」


 飄々とした間延びがある声が聞こえたかと思うと、一陣の疾風が入り込み、俊也の体はその風のような助太刀に軽々と抱えられ窮地を脱した。命が繋がった彼はそこで体力が尽きてしまい、意識を失ってしまっている。


「ノブツナ先生!?」

「おう、サクラか。いつぞやは世話になったのう。まあちょっと待っておれ。あやつを追っ払わんといかん」


 種族は人間ではないだろう。サクラより背が低いこの初老の男が、探し続けていたノブツナであるようだ。白髪で髭も真っ白、愛嬌があるどんぐり眼で、ノブツナは優しくサクラに接していた。


「チッ!!」


 ノブツナの背は俊也の腰ほどしかない。ノブツナは自分の背丈と同等の長さの剣を抜きざま、サイクロプスの左腕を斬り払った! そうはいうもののこの小柄な初老の男は充分な手加減をしており、巨大な鬼は左腕の薄皮を斬られただけである。サイクロプスの知能は高くはない。しかし、簡単過ぎるほど簡単にあしらってきたノブツナの、異常な強さはその青色の肌で感じ取られる。一つ目の大鬼は即座に恐慌を覚え、その場から一目散に逃げ出した。


「やれやれ、手がかかることよのう。サクラ、こやつの面倒を見てやらねばならぬ。ついてきなさい」

「はい。またノブツナ先生に助けて頂いてしまいました。何とお礼を言えばいいか……」

「よいよい。そうじゃ、お前が作ってくれた飯はうまかったぞ。こやつを看るかたわらに、しばらく飯を作ってくれぬか? それで礼を返してくれればよい」

「そんなことでよければ幾らでも作ります。ですが、俊也さんは大丈夫でしょうか……?」

「大丈夫じゃろうよ」


 ノブツナは自分の倍ほどもある俊也の身体を抱えながら、顔色一つ変えずそう請け負った。サクラを気遣いながら歩くその様は、まるで俊也の重さが無いように見て取れる。




 打ち身の痛みにうなされて起きた俊也が目覚めた場所は、涼しく静かな大きい岩の洞穴であった。傍らでサクラが懸命にアースヒールの回復魔法をかけてくれており、彼が気がつくと薄く涙を浮かべ、


「俊也さん……よかった……」


 と、あまりの安堵の喜びに、俊也へ抱きついてきた。それほどサクラは彼が心配だったのであり、山を登る最中に持ち始めた好意も大きくなっている。


「ごめんなさいサクラさん、心配をかけました。ところでここは?」


 洞穴であり、自分が寝ている硬めの寝台から辺りを見回しても、安全であることは分かる。ただ、命を拾えた自身の無事と、この静寂の空間になぜ居られているのかが、俊也にはとても不思議に思えた。

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