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ヘルモードの異世界をもう一度  作者: チャラン
第五章 異世界救済生活・探求(後編1)
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第百八十話 統領の資質

 俊也は修羅のことをイットウサイに託し、トラネスを後にしようしていた。そのためにここへ来たので、彼にはこれ以上とどまる理由がない。だが、そんなつれない俊也を、まだ引きとどめたい一途な美少女が一人いた。


「もう、帰ってしまわれるのですか? せめて、お昼までいらっしゃったら」

「ユリさんのご飯はおいしいから迷うなあ。まあでも、元々、修羅を先生に預けに来たんだし帰るよ。それに、先を急いでやらなければいけないこともあるし」

「そうなのですか……せっかくお会いできたのに残念です」

「また来ますよ。修羅においしいご飯を作ってあげて下さい」


 俊也はそう晴れやかに笑い、親友をさり気なく気遣っている。ユリにとってはうまく引き止めを流されてしまった形だが、想い人である彼の笑顔を見られたので、そこにおいてはなんとなしに納得できた。


「俊也さん。私もここに残らせて頂こうと思っています」


 ユリとの会話の後、そのようにはっきり申し出たのはジェシカだ。といっても、ジェシカがトラネスについてくる時、俊也は薄々、彼女がどういうつもりで同行しているのか分かっていた。


「分かりました。修羅が傷ついたら治してやって下さい。イットウサイ先生、ユリさん。ジェシカさんのことも御願いします」

「承った。それにしても俊也君、君は一段としっかりしてきたな」

「本当に。俊也さんは統領の資質があるのかもしれませんね」

「いやそんな大した者ではないです。あまり褒めないで下さい。照れてしまいます」


 イットウサイとユリの親子は心からそう思っているのだが、賛辞を受けた俊也は顔を少し赤らめ、手を振って否定している。


「あっ、そうだ。俊也さん、大事なことを忘れる所でした。ユリさん、申し訳ありませんが、紙とペンを貸して頂けませんか?」

「はい分かりました。そんなにかしこまらなくても大丈夫ですよ。すぐ持ってきます」


 ユリとジェシカの相性は、やり取りを見る限り良さそうだ。ジェシカの想い人は修羅であり、恋敵とならないところも非常に大きいのだろう。サキやセイラへの対応とは大違いである。


 頼まれた通り数枚の紙とペンを、ユリは持ってきてジェシカに手渡した。彼女は軽く会釈をして礼とし、紙に何やらしたためている。そう長い文ではないが、重要なことを書いているようで、かなり丁寧にペンを使っていた。


「できました。俊也さん、これを読んで確認して下さい。よろしければそのままお持ちになって下さい」


 俊也はなんだろうと思いつつ、柔らかい表情でその書状を受け取ったが、読み進めると文の内容の意義に驚き、思わず銀髪のジェシカに体を向き直して、自分の見開いた目を見せている。

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