第十八話 性格も魅力も違う美人姉妹
翌日の早朝、日本にいたときと変わらず早起きをし、教会の庭で刀を素振りしている俊也の姿が見える。朝霞が残る中での涼しい稽古だ。サキの家であるこの教会にも花菖蒲のような花が庭に咲いているが、よく見ると少しだけ花や葉の形が違う。
「ふわわわ~~、おはようございます俊也さん。こっちでも早起きですね」
日が昇ってきたばかりの早朝に何をしているのかと様子を見に来たのだろう。ワンピースのパジャマ姿で寝ぼけまなこをこすっているサキが、まだまだ眠そうな目で俊也を見ている。昨日、俊也の家で迎えた早朝の光景とそれは重なり、何か懐かしいものを見たような感覚を俊也は覚えていた。昨日の今日なのにだ。
「おはよう。ごめんなサキ、うるさかったかい? 朝の素振りが昔からの日課になっててね」
「いえ、そんなことはないですよ。素振りをしている俊也さんはかっこよくて見てるとワクワクします。私も目が覚めてきました」
今日も素直で明るいサキの笑顔に、俊也は救われているような心持ちである。またしばらく素振りを続けながら、
(異世界の2日目だけど、一人でいるわけじゃないし頑張れそうだな)
そんなことを考え、自分の心をしっかりと強く作っていた。
朝稽古を終えた後、マリアやセイラも起き始め、用意してくれた朝食を皆と一緒に俊也は食べた。食後、まだモンスター退治に集まって向かう時刻には時間が残っている。その間に、セイラは何かを思い出したようで、住居内の物置として使っている部屋から何かを探し出し、俊也の所へ持ってきてくれた。それは、鋼鉄を薄く伸ばして作られた鎧……というよりはプロテクターで、胸や腰、肩など急所を守る物だ。鉢金もセットになっている。
「うちでは使うことがなくてしまっていた物なんですが、もしよければ俊也さんに差し上げます。何も身に着けないよりはかなり安全になるはずです」
セイラは家にこのプロテクターがある経緯を簡単に俊也へ伝え、「よければお着けしましょうか?」と何気ないように訊いてきた。彼女の目を見て少し妙な予感がしたが断るのも失礼だろうと思い、俊也は好意を素直に受けてプロテクターを着けてもらっている。
「可愛らしいお顔ですけど、筋肉質でしまったお体なんですね……」
ところどころ必要以上に彼の体を触っていたが、セイラは一応丁寧にプロテクターを装備させた。今、二人以外近くに誰も居ず、サキも他の用事をしている。邪魔者がいないそういう所を見計らったのだろう。なかなか計算高い姉である。タナストラスに来てから美しい女性にアプローチを受けっぱなしの俊也は、どうしたものかと顔をやや赤らめ困惑するばかりだ。
「十分お気をつけて無事おかえり下さい。ここでご飯を用意してお待ちしています」
セイラは俊也の手をしっかり両手で握り、清楚だが艶っぽい心配そうな目で彼の目を見つめている。